【熟成肉】ひと手間加えてうま味をアップ!家庭で美味しいお肉を作る方法(グルメライター)

●肉の美味しさは、日本食肉格付協会が格付けする、可食部割合の歩留まり等級と肉質等級表記で格付けされる。
●柔らかさや脂に美味しさに求めない方にとっては「うま味」が大切である。
●熟成肉の定義は未だ定まっていない。本来「熟成」とは、自身の酵素によってたんぱく質がアミノ酸に分解されることをさす。
●家庭で熟成肉を作る手順と必要な環境と道具などを紹介。
●そこまで手を掛けられない読者に牛肉を美味しく食べる方法を紹介。

【入稿中】4_17_W4187_原稿_-_Google_ドキュメント

ベジタリアンと肉食、どちらが健康に良いのか――。ある意味宗教と同じようなの命題と言っても過言ではありませんが、日本には本来の「命を食べないベジタリアン」とは少し違う世界観があります。フランシスコザビエル来日の際に「日本人は肉を食べていないが元気だ」的な報告をキリスト教会本部に報告したことがかなり曲解され、肉悪玉説がささやかれ始めたと言われています。

とある医師は「人間の体は水分と肉と骨でできている。失われるものは外部から取得するしかなく、似ているものを摂取するのが一番早い。」と語ります。人間の水分は濃度があるので、水よりスポーツドリンクが効率良く吸収されますし、血液・神経に必須な鉄分・ビタミン、筋肉・内臓形成にはたんぱく質が不可欠であり、そのうえで効率の良い食物が肉全般と言えます。植物でも摂取は可能ですが、草食動物の多くが複数の胃を持っていたり、反芻にて念入りな消化をしていたりすることもあるため、効率が良いとは言えません。

バランスの良いものを笑顔で美味しく、それが一番の長寿の秘訣です。近年では「肉食こそ長寿の秘訣」、「痩せたいなら肉を喰え」という考え方が世に出始めていることもあり、大の肉好きである私としては嬉しい限りです。当記事では、お肉に関する正しい知識と、家庭で美味しいお肉を作る方法についてご紹介します。

美味しいお肉の定義

米ガラ・生乳(ホエー)・葡萄の搾りかすなどブランドによる特殊餌で育てられた牛には、「脂に臭みがない・甘い・とろける」といった特徴があります。脂肪分に飼料成分が強く現れるため、大量生産の合成飼料よりもこちらのほうが好感を持たれます。鶏は40~180日、豚は180日前後と飼育期間が短いため、鮮度と脂身の質が重視されます。

では、美味しいと言われる牛肉は質の高い(良い)ものなのでしょうか?これは正解でもありますが、間違いと言わないまでも微妙なのです。牛肉の質は、日本食肉格付協会が格付けする、可食部割合の歩留まり等級と肉質等級表記で格付けられます。

・脂肪交雑
・肉の色沢(色と光沢)
・肉の締まりとキメ(細かさ)
・脂肪の色沢と質

牛脂は高級ブランド牛ほど融解温度が低く17度ほど、経産牛でも40度以下です。脂肪交雑が高いほど「口の中でとろけるようなお肉」となるため、「柔らかい・美味しい」と評価されるのもうなずけます。
一方で、「美味しさ」とは「五味(甘味・酸味・塩味・苦味・うま味」のバランスでもあります。よって、柔らかさや脂に美味しさに求めない方にとっての「美味しさ」は肉質等級ではなく、「うま味」に重点を置く形になるのです。

熟成肉の正しい知識

ここ数年で急速に知名度をあげた熟成肉。こちらについては、一部間違った情報が広がりつつあります。実は、現時点で正確な熟成肉の定義は存在していません。つまり、各々の勝手な解釈での熟成肉が提供されているということでもあるのです。
本来「熟成」とは、自身の酵素によってたんぱく質がアミノ酸に分解されることをさします。ネット上などで流行り始めたナンプラーや米麹は、ヨーグルトと同じ発酵食品ですので、発酵食品のうま味や分解で風味を増し、柔らかくすることにより評価されています。しかし、自酵素によるたんぱく質分解ではない以上、熟成とは定義できず、発酵化は腐敗にもつながりやすいため、かなり注意が必要となります。

一般的に提供されている熟成肉の多くは「ドライエージング」であり、雑菌・腐敗を防ぐために完全に滅菌された低温庫内で冷風を適度にあて表面を乾燥、内部の水分率も下げます。さらに風冷乾燥だけではなく、チーズのように表面に白カビをはやし、それ以外の菌が繁殖しないようにする方法や、ガーゼでくるんだ後に蒸留酒を塗り滅菌する方法もありますが、どの方法でも表面の2~4割を廃棄する必要があるため、大変もったいなく思います。

ご家庭で無駄なく熟成肉を作る方法

美味しいお肉は素晴らしいものです!しかし、そんな素敵なお肉はやはりお高いのも事実。ならばお店で食べるよりは自宅で作ってしまおう、そんな考え方から私はブームが来る数年前から自作で熟成肉を作っています。手順を簡単にご説明しますが、とにかく手間と根気、そして失敗したときに諦める勇気が必要です。

アイテムの準備と除菌滅菌作業

食品用除菌アルコール、キッチンペーパー(以下、ペーパーと表記)、封付きプラスチック袋(以下、袋と表記)、使い捨て手袋(粉付きNG)国産赤身牛肉塊(血管、脂肪部除去済み)を用意。まずは全てに除菌滅菌作業をします。まな板は熱湯消毒しておきましょう。

最重要注意点として、チーズや納豆が庫内にあるのは問題ありませんが、循環部までの完全滅菌はできないため、一度でも腐敗系のカビが発生した冷蔵庫は使えません。衛生には細心の注意を払いましょう。

肉の表面を削ぎ、冷蔵庫へ

ペーパーを敷き、その上で牛肉塊の表面を削ぎ(プロはみがくと表現)、みがいた面に新しいペーパーをあてます。外側の面に接触したものが絶対に内側に触れないように洗浄除菌などをしながら、ミイラのように4、5重にペーパーを巻きます。袋に入れる際は空気をなるべく抜いて、こちらを冷蔵庫保管します。削いだ肉は食べられますので無駄になりません。

ペーパー交換と表面みがきを繰り返す

初日は天地を変えながら2~6時間ごとにペーパーの交換をします。2、3日目には12時間ごと、ブリット(赤い肉汁)が2枚目以降に届かない程度になってきたら24~36時間ごとの交換と様子見をし、袋は毎回捨てます。肉肌色がくすんできたら(大体5~10日)初日と同じように表面をみがき、ペーパー交換も同等に行い、肉肌色がくすむたび繰り返します。

写真1

交換が遅れると、肉汁の色が変色してくすみだし、腐敗につながるので注意が必要です。この場合は、やや厚めにみがき、削いだ肉の食用は状態によっては諦めましょう。「これ以上小さくしたくない!」というタイミングでお召し上がりください。

お酒が好きな方は、初回以外はペーパーで巻き終わった後に蒸留酒を霧吹きしてから密封する方法もあります。ペーパーの色を見るのが難しくなる半面、みがく頻度が少なくなるので長期の熟成チャレンジが可能です。

熟成以外でも、ひと手間かければお肉は格段に美味しくなる

牛肉に限らず、料理は「不味い要素を引いて美味しさを足す」が原則です。何日もかかる熟成肉は無理という方に向けて、即日でできるやり方をご紹介します。

【手順1】繊維を切る

ミートチョッパーやフォークを利用して繊維を切ります。細かな切れ目が入り歯切れがよく柔らかな食感になり、またうま味や脂が浸み込みやすくなります。ミートハンマーは肉の繊維をつぶすので、ハンバーグなどの食感を好む方には向いていますが、本来の肉々しさからは少し外れます。

写真2

【手順2】うま味を足す

うま味成分である三大アミノ酸を足すことにより、肉を美味しくします。昆布を細かくし、水で戻し濾したものを炭酸水と一緒に袋に入れ3~24時間放置すれば、グルタミン酸が追加されます。他にも、鰹節や干しシイタケを少量混ぜると、イノシン酸・グアニル酸が追加されます。水分を切って調理しましょう。

【手順3】低温調理

真空パック状態の肉を70度未満で加熱することで、肉の硬化を防ぐことができます。低温設定ができるオーブンやANOVAなどの加熱調理器、炊飯器の保温機能を使うと便利です。50~65度の湯に真空パック状態の牛肉を入れ継続加熱します。

写真3

(低温加熱肉を切ると、10分程度で酸化し赤くなります。生ではありません。左が切り出し直後、右が15分後。)

【手順4】仕上げの脂を加える

高級ブランドの牛脂で焼くと美味しいということは広く知られています。他にも、高級バターやココナッツオイルなど、違う脂のうま味を取り込むこともできます。好みに合った脂によって表面だけカリッと焼き色を付けることで、手順1によって生じた切り目が目立たなくなりますし、日本人が美味しく感じる65~70度への温度調整にもつながります。また、フライパンに残った脂でご飯や野菜を炒めれば、最高の付け合わせになるでしょう。

写真4

手順2,3を省くことも可能です。この場合は、フライパンの灰汁を取るためにペーパーを敷きます。その上に牛肉をのせ蓋をして最弱加熱で2〜3分、返して2分、5分放置を数回繰り返します。サイドの色を見て好みの加熱度合い一歩手前で止め、ペーパーを除き4の手順で焼きましょう。

素敵な肉ライフを

いかがでしょうか?高級なお店での提供は手間暇と安心の価格でもあります。当記事が時間や価格を天秤に掛けるきっかけになり、貴方の素敵な肉ライフの一助となれば幸いです。

写真5

この記事を書いた人

【熟成肉】ひと手間加えてうま味をアップ!家庭で美味しいお肉を作る方法(グルメライター)

以志羽 七草

ライター

東京生まれですが、転居は色々しているのに人生の83.6%埼玉県民。
喰いしん坊で再現料理をしたり、趣味の旅行はリーズナブルツアーからクルーズまで楽しんでいます。美味しいお酒は大好きなのに実は下戸、一口味わいあとは家族や友人に任せてます。取材を得意とし、ペット・家庭医療・GAME・イベント紹介など雑食ライターしています。
短期納品が出来ますのでイベント開催中にも紹介記事を間に合わせる事が出来ます。

このライターに記事の執筆を相談したい

関連記事