安産した人は知っている!ベテラン助産師がまとめたお産に欠かせない5つの技術(助産師ライター)

●安産かどうかは、分娩所要時間、出血量、赤ちゃんの状態で判断される。
●息を止めず吐くことに集中する技術、体の力を抜いてリラックスする技術、どんなときでも食べることができる技術、短い時間でも睡眠を取る技術、分娩の流れを学ぼうとする姿勢を身につけよう。
●5つの技術を生活の中に上手く取り入れ、習慣化を目指そう。
●お産に100%はないことを知っておこう。

妊娠したら出産する――。出産は何もしなくても当たり前に始まり、当たり前に終わるものだと思われがちですが、実はそうではありません。人生の中で大きな幸せを感じるはずの「出産」が、生涯にわたって大変な思い出となってしまう女性もいるのです。
では、「安産」に近づける技術があるならどうでしょうか。安産は自身の努力で身につく技術であり、安産した人は必ず技術を持っています。テレビや雑誌などで得られる多くの情報の中にも隠れていますが、正しい技術を見つけだすのは簡単ではありません。
そこで今回は、助産師としての医学的根拠に基づいた意見と、15年の臨床経験を通して得た知識を「お産に欠かせない5つの技術」をご紹介します。

そもそも「安産」ってどんなお産?

安産と聞くと、「スピード出産」「苦労せずスルっと産まれた」などを想像される方も多いと思います。この安産という言葉、辞書では「難産」の対義語として紹介されています。では、助産師が考える「安産」とはどのようなお産なのでしょうか。「お産に欠かせない5つの技術」を知る前に、安産の定義を確認してみましょう。

安産かどうかは時間・出血量・赤ちゃんの状態で決まる

陣痛の時間

陣痛開始から数えて、初産婦の場合は30時間、経産婦の場合は15時間を超えても産まれないことを「遷延分娩:せんえんぶんべん」と呼び、これを難産だと考えます。
陣痛開始時間は、10分以内に1回以上の陣痛が続くようになったタイミングをスタートとしています。例えば「7分で強い痛みがきていたけど、途中で痛みが20分くらいこなくなった」となった場合は、時間を一度リセットします。リセットは何回でも可能です。

出産時の出血量

お産と出血は切っても切り離せない関係にあります。「おしるし」から始まった出血は、子宮口が開き、分娩の進行と共に増えていきます。赤ちゃん誕生の後にも、胎盤が剥がれた部分から出血が起きます。
分娩開始から終了後2時間までのトータル出血量は、通常800ml程度でおさまります。これ以上の出血は「弛緩出血:しかんしゅっけつ」と呼ばれ、この場合は難産だと考えられます。

赤ちゃんの状態

通常であれば、赤ちゃんは産まれてすぐ泣きます。泣かなければ、赤ちゃんへの酸素配給が滞り、低酸素状態に陥ってしまい、見た目もどんどん真っ黒になっていきます。この場合は、酸素を送ったり、足裏を刺激したりしながら泣き出すのを待ちます。
この泣き出すまでの時間が長いケースは、難産だと考えます。他にも、出生状態を表す客観的指標として、へその緒から採取する「臍帯血液ガス」の値があります。値が低ければ、「赤ちゃんは低酸素状態にあった」「しんどかった」と判断できるのです。

お産に欠かせない5つのテクニック

【1】息を止めず吐くことに集中する技術

人は普段から意識することなく呼吸していますが、規則的な痛みに襲われると、息をすることを忘れてしまうのです。出産時も同様であり、つまりは呼吸法が大切であると言えます。ポイントは、どんなに痛くてもひたすら「吐く」ことに意識を集中すること。息を止めると赤ちゃんへの酸素の供給が遮断され、赤ちゃんが低酸素状態になってしまいます。イメージとしては、ローソクの火を消すようにゆっくりと長く吐き続ける感じです。酸素が不足すると人間は自然に息を吸うので、練習は吐くことだけで問題ありません。

【2】体の力を抜いてリラックスする技術

続いては、陣痛が始まってからのリラックス方法。おすすめは、両足裏をくっつけ、あぐらの姿勢をとることです。鼻から息を吸い込み、背筋を伸ばし、何も考えず目を閉じましょう。吐く息に集中しながら、背筋を丸め息がなくなるまで吐き続けます。
意識的にリラックスできれば、体の緊張を緩めることも容易にできるようになるでしょう。練習する際は、「元気な赤ちゃんを見つめて幸せな気持ちになっている」「元気な赤ちゃんを抱いている」などといった想像力も活用できるとより効果的です。

【3】どんなときでも食べることができる技術

「気分が悪くても食欲がなくても食べられるもの、飲めるもの」をあらかじめ見つけておきましょう。おすすめは、ゼリーやプリン、飲むヨーグルトなどといった口に入りやすいものです。ポイントは、「辛くてもしんどくてもこれだけは食べられる、これだけは飲める」という精神的な味方を作っておくことです。

【4】短い時間でも睡眠を取る技術

強く規則的な陣痛が来ると、熟睡はできなくなります。陣痛と陣痛の隙間時間に体を休めるテクニックを身につけておきましょう。ポイントは、熟睡せずとも体と頭を休められる睡眠方法を習得することです。
少しの時間でも目を閉じ、頭を空っぽにする練習をします。熟睡できなくても、目を閉じているだけで休息効果があることは、科学的にも証明されています。

【5】分娩の流れを学ぼうとする姿勢

お産の流れとして、「どのように始まりどのように終わるのか」「破水するとどうなるのか」「どのような出血であると危険なのか」などといった最低限の知識は必ず知っておきましょう。漠然とであったとしても、ある程度理解していれば、不安感は少なくなるからです。日頃から情報を得ようとする姿勢が大切であると言えるでしょう。

5つの技術を習慣化しよう

お産に必要な技術は、知っているだけでは何も変わりません。5つの技術は、習慣化することではじめて安産につながるのです。まずは呼吸法とリラックス法の練習をしてみましょう。「吐く意識」「体を緩める意識」を持ち、生活の中に組み込みます。ポイントは特別に練習するのではなく、普段している習慣、例えば入浴中や布団に入った瞬間などの生活の中で行うことです。次は普段の食事、いつでも食べられるものを探します。疲れを感じる前に短時間の睡眠を取るようにします。このように、今できることに取り組み続けるだけでいいのです。

日々の努力は無駄にならない

お産が始まってからも、食事や睡眠を取りながらパニックにならないように、呼吸に集中して陣痛に向き合いましょう。
もちろん、それでも思ったように進まなかったり、赤ちゃんがしんどくなり帝王切開に切り替わったりすることがあるかもしれません。しかし、それは仕方ないことなのです。お産とはそういうものであり、どんな結果であってもコツコツ技術習得に励んだ毎日が否定されるわけではありません。100%の結果でなくても、100%に近づけようとする姿勢が大切であると言えるでしょう。

この記事を書いた人

安産した人は知っている!ベテラン助産師がまとめたお産に欠かせない5つの技術(助産師ライター)

Junn

ライター

助産師として、15年、病院やクリニックで勤務してきました。今までの経験を生かして、妊娠・出産・育児で悩む女性を、サポートできるような記事を書いていきたいです。
趣味は、ピアノ、観劇、筋トレ。

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