ビジネスホテルの客室清掃で10年来の「うつ」が治ったわたしの体験談

●セカンドオピニオンを求めた医師のアドバイスがきっかけで「客室清掃」を始める。
●辛い「うつ」の症状に意識を向ける間もないほどハードな仕事内容。
●客室清掃のコツをつかんで、一部屋1時間から20分へ、スピードアップに成功。
●ノルマ達成のため日々作業に集中するうちに、いつの間にかうつ病が治っていた。
●うつが治った経緯と理由を語るこの体験談が、今苦しんでいる人のお役に立てることを願う。

どんなに手ごわく、執拗にまとわりついてくる「うつ病」も、きっかけさえあれば必ず治る。

15年前、鳥肌が立つほどの不安感で眠れない日が続き、うつ病と診断された。抗うつ薬や抗不安薬など5種類が処方され、服用を続けたが、完治に至らないまま約10年が過ぎた。うつ病とは一生のつき合いなのだと戦う気力も失せたころ、「客室清掃」と出会い、あっけないほど自然に治っていった。

うつ病は体の病気に比べ、長引く人が多いと言われる。以前のわたしのように、一生このままだと思い込んでいる人もいるのではないだろうか。わたしが客室清掃の仕事でうつが治ったように、あなたも何かのきっかけでスッとうつが治る可能性は十分ある。

当記事では、客室清掃でうつが治っていった過程と、なぜ治ったのかを客観的に分析していく。辛い日々を過ごしている人たちの回復のヒントになればうれしい。

うつを抱えたままハードな客室清掃の世界へ

セカンドオピニオンとして家族のすすめで受診した医師は、極力薬を使わない方針だった。似た作用の薬を重複して飲んでいたため、余分と思われる薬から少しずつ減らしていくことに。長く飲み続けていたからか、減薬・断薬していく間に現れた諸々の症状(離脱症状)は、うつ以上に辛かった。

そんな中で医師に「あなたの体は動くのだからもっと動かした方がいい」とアドバイスされた。当時ライティングの仕事は続けていたものの、量をセーブしていたため時間はあった。たまたま地域情報誌で目にした、ビジネスホテルの客室清掃のパートに出ることにした。

人と接することもなく勤務時間が短いのが選んだ理由だったが、あんな体調でこんなにハードな世界へよく飛び込んだなと、今改めて思う。

症状に飲み込まれる間もなく清掃に集中する日々

息つく暇もないほどハードな仕事

わたしのパート先のホテルでは、ベッドメイクからお風呂・トイレ掃除、窓や机の拭き掃除、掃除機掛けまで1人で清掃を完結させる。そこにはシーツやデュベカバー(掛け布団のカバー)のはぎ、テレビのチャンネル合わせ、アメニティの補充及び整頓、加湿器の水捨てなどこまごまとした作業もある。5時間でツイン2部屋を含めた12部屋がノルマだ。

この5時間には、シーツ類をストックしているリネン庫への行き来の時間、階をまたがる場合の移動時間、さらには朝の準備や帰りの在庫確認の作業時間まで含まれる。そこから逆算すると、シングルを20分、ツインを30分以内で終わらせなければ間に合わない。

吟味せずに始めた客室清掃は、オーバーではなく、息つく暇もないくらいハードな仕事だった。一方その忙しさのおかげで、家にいると常に意識の最上層にあった不安感や絶望感、抑うつ気分、首や肩の重みなどの症状が意識の下の層へ、時には外へと移動していった。

一部屋20分で終わらせるために身につけたコツ

最初のころは、一部屋に1時間はかかっていた。新人の中でも特別遅い。そんなわたしも、作業を覚えて全体の流れが見えてくると少しずつスピードが上がり、3か月後には5時間で仕事を終えるようになっていた。
比較的短期間でスピードアップしたのは、日々作業に取り組む中で2つのコツをつかんだからだ。

【1】自分なりの作業順序を決めつつ「頭」を使って柔軟に切り替える

大まかに、お風呂・トイレ、ベッドメイク、掃除機掛けの順に決めていた。先に水回りをしておくと、一部屋完了するころに乾いているからだ。ただし、例えばお風呂にお湯がたまっている場合は、水を抜く間にベッドメイクを済ませる。当然のことのようだが、体は想像以上にパターン化した動きをしようとする。「頭」を使って瞬時に切り替えることが大切だ。

【2】一つひとつの作業は動きを覚えている「体」に任せる

慣れてくると体が勝手に動くようになる。それを「シャンプーは右だっけ」「デュベはこう入れた方が早いのでは」など余計なことを考え出すと、体が動かなくなってしまう。素直に体の動きに任せた方が良い。
全体の流れは「頭」で意識しつつも、一つひとつの作業は、動きを覚えている「体」に任せ、余計なことを極力考えず作業に集中することがポイントだ。

気づけばうつが治っていた

このように試行錯誤しながら必至にノルマを達成するうちに、気づけばうつが治っていた。

最初に改善したのは、慢性化していた首や肩の重みだ。ガムシャラに動いていると、その重みがスッと消えているのに気づくことが、客室清掃を始めた早い段階からあった。重みがないことに意識を向けると、また重みが戻る。そんなことを繰り返しているうちに「重みがない」状態が普通になっていた。

次に感情や感覚のバランスが取れてきた。もちろん、日々の生活の中で何らかの不安が生じたり憂うつな気分になったりすることはある。しかし以前は常にあった漠然とした不安感や絶望感はなくなり、長らく忘れていた「やる気」や「充実感」「幸福感」などの感覚が戻ってきたのだ。

そして「疲労感」。ハードな仕事のため、肉体的な「疲労」は以前よりも増しているのだが、うつにどっぷりはまっていたころの強い「疲労感」は不思議となくなっていた。

肉体的な病気と違って「完治」という状態をどう判断するかは難しいが、医師は「それでいい」と言い、わたし自身も「これでいいのだ」と納得できる状態になった。

なぜ客室清掃でうつが治ったのか?

なぜわたしは客室清掃でうつが治ったのだろうか。次のように考えた。

1)効率良く作業しなければ一部屋20分で完了するのは不可能。そのため、うつのときには難しかった「段取りを組む」訓練に、自然となっていた。
2)休む間もなく動かざるを得ない仕事のため、イヤな症状に過度に意識を向ける時間がなかった。
3)客室清掃は、視覚、聴覚、触覚、嗅覚といった五感を使う。うつの不快な症状や考えばかりに向いていた意識を、五感にバランス良く配分する練習になっていた。
4)うつに効果があると言われる「運動」になっていた。
5)肉体労働のため、必然的に食欲が出てきた。

そしてもう一つ。わたしにとって、たまたま「好き」「楽しい」と思える仕事内容だったこと。このことが大きかったようだ。

うつ歴10年でも20年でもきっと治る!

あくまで個人の体験であり、すべての人が「客室清掃」で治るわけではないだろう。ただ先ほど書いたように、イヤな症状ばかりに意識を向けすぎないこと、運動をすること、栄養を取ること、好きなことに打ち込むことは、うつの改善に有効だと確信している。

うつが長引くと、一生抜け出せないのではと不安になる。しかし長引いているのは、まだ治るきっかけになるものと出会えていないだけなのかもしれない。医師に相談をする必要はあるが、思い切って何かを始めるのも一つの方法ではないだろうか。

この記事を書いた人

ビジネスホテルの客室清掃で10年来の「うつ」が治ったわたしの体験談

minimama(ミニママ)

ライター

神戸生まれ神戸育ち、ちょこっとドイツ、鹿児島県在住。
保険、年金、医療(医療広告ガイドラインチェックを含む)、グルメ、スイーツ、くらしの知恵、ショートエッセイ、クイズ作成、レシピ(企画・校正のみ)、ミステリーショッパーレポート(検品含む)など実績多数。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、客室清掃員、一男一女の母。

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