なぜ日本は遅れているのか?国内eスポーツの未来を関係者の発言から考察する(ゲームライター)

●日本と海外のイベント規模を比較。プロプレイヤーと主催側のそれぞれの意見から、イベントの認知度の向上がeスポーツ発展の課題であることが分かる。
●海外で活躍していた経験のあるプロプレイヤーが、後進の育成によって業界が盛り上がることを期待している。一方で、単なる育成ではなくプロ意識とアスリート精神を持った後進育成によって、メディアから評価される選手を生むことが業界にとって重要であるとする意見もある。
●新たなeスポーツとして、ソーシャルゲームが注目されている。ソーシャルゲームの特徴である「課金=強さ」はプレイヤーの腕でカバーできることもあり、一概にマネーパワー至上であるとは言えない。ソーシャルゲーム大会の人気がeスポーツ業界全体の底上げになることが期待されている。

2017年4月、アジアオリンピック評議会において「eスポーツ」を正式な競技種目として、2022年のアジア競技大会で導入することを発表した。「eスポーツ」とは「エレクトロニック・スポーツ」の略で、テレビゲームを競技として呼ぶ際の名称である。世界各地で大小さまざまな規模の大会が開かれており、競技人口は数億人規模と言われている。

幼少時からゲームが趣味の私。ゲームで遊ぶという仕事に憧れを持ちつつeスポーツについて調べてみたが、日本は海外と比べるとeスポーツに関する理解が遅れているという。そこで当記事では、一般参加できるeスポーツ関連イベントに参加して聞いた業界関係者の話をもとに、国内eスポーツの現状についてまとめてみようと思う。

日本国内におけるeスポーツの現状

海外と日本の差を分かりやすく比較できるのは、イベントの規模ではないだろうか。例として、オーストラリアで行われた「Intel Extreme Masters Sydney」と日本の大会を比較してみよう。当大会の来場者は全日程で5~6万人であったのに対し、日本で行われた「リーグオブレジェンド」という大会の来場者は多くても2,500人と、かなりの差だ。

eスポーツプロチーム「DeToNator」の代表である江尻氏は「黒川塾47」にて以下のように発言し、現状を危惧している。

海外で盛り上がっているゲームなのに、日本の大会の集客規模で低評価になる事例がある。大会主催側の告知が足りず、認知度が低い状況

これに対し、日本eスポーツ協会事務局長である筧氏は、同イベントで以下のように回答。

予算の問題が大きな壁で、費用が避けないために手が回らない部分がある。協業パートナーの見つけ、課題解決を図りたい

そして国内のeスポーツ大会「RAGE」を主催する大友氏は、同イベントで以降の取り組みについてこのように説明している。

メジャースポーツのような、ショー要素を取り入れることで集客の向上を図る。また観客の視点を考え、応援しやすい空間づくりにも力を入れている

スポーツにおける大会の認知度は、そのまま競技の認知度に繋がると言える。知名度が高い大会は、メディアでの取り上げ方も違ってくるのではないだろうか。

海外で挑戦する日本のプロプレイヤーと後進の育成

日本にはプロゲーマーのライセンス制度がないため、日本人のプロプレイヤーたちは海外企業と契約し、海外の大会へ出場して稼ぎを得ている。
日本初の女性プロゲーマーとして活躍していたチョコブランカ氏は、チームメイトから日本のeスポーツの遅れを指摘された経験があるそうだ。現在彼女は、同じくプロゲーマーで夫でもあるももち氏と共に、eスポーツに関する企画制作会社「忍ism」を経営している。初心者向けのゲーム大会の主催や、若手のプレイヤー候補を厳選しての本格的なプロプレイヤー育成など、さまざまなアプローチを続けている。

チョコブランカ氏は「e-sportsの歴史と成り立ちを勉強して未来に備える会」にて、以下のように述べている。

日本では、ようやくeスポーツというシーンが芽を出して木になり始めている段階で、我々の活動は木を植えて森に育てること

新しい世代が育つことが自分が生きている業界を守ることに繋がる、としている。

一方で江尻氏は、スター選手の輩出とそのファンをつくることがeスポーツのショー価値を高めるとしながらも、単なるプロプレイヤーの急増については危険視しているようだ。「黒川塾47」にてこのように発言している。

プロチームに入る=プロではなく、プロである自覚を持つこと。なぜ、自分がプロとして稼げているのか。スポンサーや大会主催者など、さまざまな人たちとの仕事のおかげだという意識をしっかりと育てることが重要

ゲームの腕前だけでなく、精神的にもしっかりした選手が必要だ、と訴える。

eスポーツは競技であり、プロプレイヤーもアスリートと同じである。各スポーツの一流選手のように、人間としても尊敬される存在になることが、eスポーツ発展のための重要な鍵になると言えるだろう。

日本のeスポーツコミュニティの問題

日本における代表的なeスポーツのコミュニティと言えば、格闘ゲームに関するコミュニティだろう。世界的な格闘ゲームブームを巻き起こした「ストリートファイター」シリーズなど、海外の大会でも日本の格闘ゲームが競技タイトルとして採用されている。特に格闘ゲームコミュニティは、昔からゲームセンターと協力し小規模な大会を開くなどし、結束力が固く仲間意識が強い反面、新規ユーザーが入りづらい壁が存在している。

ゲーミングPCブランド「ガレリア」を展開するサードウェーブデジノスの大浦氏は「eSports座談会 in STORIA」にて以下のように訴えている。

コミュニティにおいては、新規層への配慮をしっかりとして、少しでも多くのファンが楽しめる空気感を重視すべき

実際にコミュニティの中で自主的に大会などを行っていたゲーム実況者のアール氏は、同イベントにて以下の見解を示している。

誤解を恐れずに言えば、格闘ゲームにおける「コミュニティ」は善意であり、「eスポーツ」はビジネスとして考えている

併せて、古参の格闘ゲームコミュニティでは大会運営も善意として、無償で進行をすることにも言及していた。

もし、現状のコミュニティ主体の格闘ゲーム大会がビジネスになるとして、本来プロに頼むような大会運営を無償でやってしまうことで、お金の流れができなくなることが不安

ショービジネスとしての収益は、大会規模を示す重要な指針になる。興行としてのビジネス的な成功は、eスポーツ向上のための重要課題であると言えるだろう。

ソーシャルゲームと連動した新たなeスポーツの可能性

海外と比べて日本で盛り上がっているゲームジャンルと言えば、ソーシャルゲームだ。国産ソーシャルゲーム「モンスターストライク」は、賞金総額5000万円の全国大会が開催されるなど盛り上がりを見せており、海外でもソーシャルサッカーゲーム「FIFA」の世界大会が行われるなどしてソーシャルゲームに注目が集まっている。

しかし、ソーシャルゲームと言えば課金要素が重要で、「金額=強さ」というイメージは拭えない。「FIFA」の大会では課金についての制約は盛り込まれていないかったというが、実際はどうなのか。

「eSports座談会 in STORIA」にて、元プロゲーマーの田原氏はこのようにコメントしている。

「FIFA」に関しては、優勝候補者は50万円以上でプレイレベルも高かったが、課金数万円で同じレベルのプレイヤーが優勝している。金額の差を腕前でカバーできることもある

ソーシャルゲームの公式実況経験があるアール氏は、同イベントにてソーシャルゲームの役割について以下のように語っている。

ソーシャルゲームでも見ごたえのある勝負はあって、PCゲーマーと熱量は変わらない。結果的にeスポーツファンの増加という役割を担っている

PCゲームやコンシューマゲームの衰退の原因とも思われているソーシャルゲームだが、eスポーツ人口全体の底上げになることが期待されている。

組織連携不足の解消と広告効果によって認知度向上に繋げる

日本のeスポーツは遅れていると言われつつも、個々の組織はさまざまな取り組みを行っており、日本独自のeスポーツシーンがつくられつつある。ただ、組織同士の連携は今ひとつという印象だった。
そんな中、「東京ゲームショウ2017」において国内eスポーツ5団体の統合が発表され、ライセンス制度の確立など大きな動きがあった。この統合は、eスポーツシーンが組織的に動くためのきっかけになるだろう。
個人的に期待しているのは、タレントの田村淳氏がeスポーツに注目し、米国のゲーム関連ベンチャー企業の共同代表となったこと。広告効果のあるタレントや有名人がeスポーツに参画することで、一般メディアの注目度が上がることを期待したい。

この記事を書いた人

なぜ日本は遅れているのか?国内eスポーツの未来を関係者の発言から考察する(ゲームライター)

東響希

ライター

埼玉県出身、埼玉県在住。
2015年より、派遣社員として仕事をしながら、ライターの仕事も始める。主に書籍のリライトや、文字起こしなど編集とライターの中間のような仕事をしつつ、ウェブ媒体などで取材レポートなども執筆。本や、ウェブに記録を残すという事を通じて知見を拡散し、周囲の人が何か新しい発見をする切っ掛けになればと考えている。得意ジャンルは、アニメ、ゲーム、声優などのサブカルチャー。趣味は帽子集め。

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