吹奏楽部アニメで話題となったマイナー楽器”ユーフォニアム”の魅力に迫る(吹奏楽ライター)

●アニメ化されたとはいえまだ知名度が低い楽器、ユーフォニアム。
●ユーフォニアムは、中低音の金管楽器である。
●見た目は小さいチューバ、音色はチューバやホルンに似ている。
●ユーフォニアムのルーツは、「サクソルン」と「ゾンメロフォン」にある。
●ユーフォニアムは作曲家に好まれておらず、ジャズでもほとんど使われない。
●注目すべきユーフォニアム奏者は、外囿祥一郎氏。

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2015年に放映された、吹奏楽を題材にしたアニメ『響け!ユーフォニアム』により、ユーフォニアムという楽器の知名度は少しだけ上昇しました。このアニメでは、主人公の黄前久美子がユーフォニアムを演奏しています。とはいえ、未だにユーフォニアムという楽器を知らない方も多くいるのではないでしょうか。

そんなマイナー楽器のユーフォニアムではありますが、筆者である私は13歳のときに既にこの楽器と出会っていました。当時中学1年生であった私は、何の気なしに吹奏楽部を見学します。そのときに先輩がユーフォニアムを吹いており、その透き通った音に一目惚れしてしまったのです。すぐさま私は吹奏楽部へ入部し、名前もよくわかっていないままその楽器を選びました。

アニメ化されたとはいえ、まだまだ知名度は高くないユーフォニアム。今回は、不思議な魅力を持つユーフォニアムという楽器について詳しく紹介いたします。

マイナーな金管楽器”ユーフォニアム”

私の友人に「ユーフォニアムって知ってる?」と聞いてみたところ、半分は「え?UFO?」と答え、もう半分は「チューバのちっちゃいやつ!」と答えました。それほど知られていないこの楽器は、ユーフォニアム(euphonium、別名ユーフォニウム)という名の中低音金管楽器です。

見た目はチューバが小さくなったような形ですが、チューバより高い音が出でます。とはいえ、チューバやホルンと似たような音色であるため、その名前が知られないのも無理はありません。
ユーフォニアムが使われるシーンは、ブラスバンドと吹奏楽のみです。吹奏楽の編成では1~2人編成であるため、少しレアな楽器であると言えます。

ユーフォニアム誕生にまつわる2つの歴史

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ユーフォニアムの誕生には、2つの歴史があります。1つは、 サックスを作りだしたアドルフ・サックスによって作られた、という歴史です。1843年にアドルフ・サックスによって「サクソルン」という楽器が作られ、それが現在のユーフォニアムの特徴に影響(ベルが上向き、ピストンがついている、など)しているというものです。

もう1つは、1843年にヴァイマルのコンサートマスター(ヴァイオリンのトップ奏者)であったフェルディナント・ゾンマーが自身専用の楽器「ゾンメロフォン」を作り、それをもとにして作られた、という歴史です。
そして翌年の1844年、フランク・ボックとフェルディナント・ヘルの2人がそれぞれゾンメロフォンを改良し、それが現在のユーフォニアムに派生していると言われています。
ゾンメロフォンができる前は、バスホルンなどが金管の低音の役割を担っていました。1835年にC・モリッツによってフロントピストン式のチューバが作られ、1937年にはテノールチューバが作られます。金管の低音域はバスとテナーの2つに分かれ、そしてテナーがユーフォニアムへと発展していきました。

ちなみに、日本でユーフォニアムが広まったのは1870年とされています。イギリスより「ユーホーニオン」というユーフォニアムに似た楽器が到来し、第二次世界大戦に敗戦した後、米国により導入されたスクールバンドの普及によりユーフォニアムという名が定着しました。一般的に日本では、イギリスのピストン式ユーフォニアムが使われています。

ユーフォニアムは作曲家に嫌われている?

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ユーフォニアムが作られたのと同時期に、ロータルーバルブ式で自由に音階を奏でられる金管楽器がいくつも開発されました。例としては、ホルンの音域を持ちながらチューバの音階も出せるワーグナーチューバや、バストランペットなどが挙げられます。これらの楽器の台頭により、ユーフォニアムはあまり使われなくなりました。

このような背景も影響しているのか、ユーフォニアムは作曲家たちに嫌われているようにも思えます。ドイツでは、19世紀に作曲家のワーグナーが自身の作品でチューバを使ったことから、主にチューバが使われるようになりました。そしてマーラーの交響曲では、ユーフォニアムと同じ音域を持つ金管楽器がソロを吹いています。
また、音の柔らかさが楽曲に適していないという理由で、ジャズではユーフォニアムがほとんど使われません。

もちろん、なかにはユーフォニアムがオーケストラで使われている楽曲もあります。ホルストの組曲『惑星』の第1曲『火星』では「テナーチューバ」という楽器のパートがあるが、現代のオーケストラではユーフォニアムで演奏されています。また、『展覧会の絵』におけるチューバのソロも、現代ではユーフォニアムで吹かれています。

このように、作曲家によってはユーフォニアムを使用することもあるものの、やはりユーフォニアムは作曲家に嫌われていたのでしょう。

イチ押しのユーフォニアム奏者”外囿祥一郎”

ユーフォニアムはマイナー楽器ではありますが、もちろん演奏者として活躍されている方も多くいます。そのなかで私のおすすめは、外囿祥一郎氏です。

ユーフォニアム奏者である外囿祥一郎氏は、2013年までは航空自衛隊航空中央音楽隊に在籍し、ソリストとして多くのコンサートを行っていました。現在は東京音楽大学准教授、エリザベト音楽大学、洗足音楽大学、昭和音楽大学各客員教授および相愛大学音楽学部特別講師としても活躍中です。また、「ブラス・ヘキサゴン」という金管アンサンブルユニットにも所属しており、ソロでもグループでも数多くの音源をリリースしています。

外囿氏の魅力は、何といっても音の深さにあります。そして音域がとても広いのです。私もユーフォニアムを吹いていますが、あの音は再現できません。とても尊敬している演奏者です。

ユーフォニアムをもっと知ってもらいたい!

私の友人には、元吹奏楽部員と『響け!ユーフォニアム』ファン以外でユーフォニアムを知っている人はいませんでした。この記事を読んで、「ユーフォニアムについてもっと知りたい!聞きたい!」と思った方は、是非一度吹奏楽などでユーフォニアムの魅力を体感してもらいたく思います。きっと、あの心地よい音色に驚くはずです。
また、『響け!ユーフォニアム』は吹奏楽部の雰囲気がしっかりと再現されている良い作品ですので、わざわざコンサートに行くのが面倒という方はそちらを見ていただくのも良いでしょう。

ユーフォニアムがもっと有名になり、いつか友人の皆が「知ってるよ!きれいな音だよね!」と言ってくれることを心より願っています。

この記事を書いた人

吹奏楽部アニメで話題となったマイナー楽器”ユーフォニアム”の魅力に迫る(吹奏楽ライター)

雪乃

ライター

千葉県在住、理系大学に在学中。音楽、ダンス、イベント、ゲーム、ファッションなどが得意。
趣味はよさこいで、地域の団体に所属している。見に行くのももちろん好き。
多彩なジャンルの記事を書いていきたい。

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