私がひきこもりを克服できた理由〜”回避性人格障害”発症から社会復帰までの軌跡〜(ヘルスケアライター)

●ひきこもりは、国内に300万人以上いるとされている。
●友人である小川さんも、ひきこもり経験者のひとりで、回避性人格障害をきっかけにひきこもりとなった。
●「正社員」というこだわりが社会復帰の妨げに。
●ゲームテスターのアルバイトを通じて社会と触れ合う。
●その後は無事に社会復帰を果たし、現在では正社員として働いている。
●プライドを捨てること、自分を受け入れることが大切である。

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我が国が抱える社会問題のひとつに、「ひきこもり」があります。NPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」によると、軽度の人を含め、ひきこもりは国内に300万人以上いるようです。

私にとって、この「ひきこもり」という社会問題は、決して他人事ではありません。それは、私の友人である小川さんも、ひきこもりで苦しむ人物のひとりだったからです。

小川さんは中学生のころからの友人で、現在28歳です。昔から温和な性格で、男子からも女子からも好かれる存在でした。

そんな彼ですが、23歳のときに”回避性人格障害”と診断されてしまいます。仕事先では連絡事項以外の会話ができなくなり、さらには家族からの電話にも出られなくなりました。ここから、彼の2年間におよぶひきこもり生活が始まります。

そんな彼も、現在では無事に社会復帰を果たし、力強く人生を歩んでいます。ひきこもり生活中は、どのような気持ちで日々を過ごしていたのか。そして、どのようにして社会復帰を成功させたのか――。当記事では、小川さんが経験したひきこもり脱却までの軌跡を、インタビュー形式でお伝えいたします。

“元ひきこもり”の友人・小川さんへインタビュー

診断結果は”回避性人格障害”

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-- まずは、ひきこもりになった時期ときっかけについてお伺いします。

23歳のときに仕事を辞め、そのままひきこもりになりました。22歳で新卒入社したのですが、毎朝仕事に行くのがつらくなってしまい……。うつ病かと思い病院に行ってみると、医師から「回避性人格障害」と診断されました。

-- 心の病気と告げられたときは、どのような気持ちでしたか?

「なんとなくそうだろうな」とは思っていました。職場の人間関係を気にして、些細なことで神経をすり減らす毎日でしたから。

-- 会社を退職してから、どのような生活をしていましたか?

人間関係に疲れていたので、最初の1ヶ月は重度のひきこもりでした。その後は社会復帰を志し、正社員の求人を探して面接を繰り返す日々が始まります。ただ、結果は不採用ばかりでした。

-- 契約社員などではなく、あくまでも正社員を志望されたのですか?

当時はまだ23歳と若かったためか、「契約社員だと世間体的に良くない」という先入観がありました。その後は面接に行くこともなくなり、そのまま2年間何もしない日々が続きます。このころは、人と会うことさえ怖くなっていましたね。本当に人生が終わってしまったような感覚でした。

「ゲームテスター」という仕事との出会い

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-- その後、ゲームテスターという仕事に興味を持たれたようですね。

『とあるフリーターの日常』というWeb漫画を読んで、ゲームテスターという仕事を知りました。ネットで求人を見つけ、どうしようか迷いましたが……意を決して面接を受けてみることに。結果、無事に採用されました。

-- ゲームテスターとは、どのようなお仕事だったのでしょうか。

開発中の新作ゲームに不具合がないかをチェックする仕事です。

-- 正社員で採用されたのですか?

いや、そのときはアルバイトでしたね。履歴書不要、学歴不問なので、やる気があれば誰でも始められます。

-- 「正社員」というこだわりは捨てたのですね。

今までは将来のことを考えて、「選択肢は正社員しかない」と思っていました。ただ、このころからは「2年以上も仕事をしていなかった自分が将来を語るなんて恥ずかしい」とも思うようになりましたね。

アルバイトを通して生じた心境の変化

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-- 2年ぶりに働いてみて、なにか変化はありましたか?

アルバイトではありましたが、「社会と関わっている」という実感を味わうことができました。前に進めたような気がしましたね。

-- ゲームテスターという仕事に向いていたのかもしれませんね。

黙々と作業ができるという点は非常に良かったです。働いている人たちのなかにもひきこもり経験者が多かったので、人間関係においても不安は少なかったと思います。

-- 現在もアルバイトとして働いているのでしょうか。

今はその会社で正社員として働いています。

-- アルバイトから正社員になった経緯は?

アルバイトとして働き始めて1年が経過したころ、上司から「契約社員にならないか?」と声がかかりました。「せっかくのチャンスを逃したくない」という想いのもと、契約社員としての仕事をスタートさせます。このときの仕事ぶりを評価され、2年後に品質管理部門の正社員として採用されました。

プライドを捨てて自分を受け入れる勇気

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-- 回避性人格障害の症状は現在も出ていますか?

飲み会などの場では、今でも少し身構えてしまいますね。それでも、「自分は回避性人格障害です」と思い切って打ち明けてみたら、職場の人たちは温かく受け入れてくれました。

-- 打ち明けるときは、すごく勇気が必要だったと思います。

そうですね。でも、周りが理解してくれていると、不思議と人を避けることも少なくなりました。打ち明けて本当に良かったと思っています。

-- アルバイトでもハードルが高いと感じる場合は、どのようにして第一歩を踏み出せば良いと思いますか?

ひきこもり向けコミュニティーサイトがあるので、まずはそこを覗いてみると良いと思います。また、ひきこもり卒業を目指す人たちが集まるイベントもあるので、そこもチェックしてみてはいかがでしょうか。自分と同じ悩みを持つ仲間に出会えれば、きっと刺激をもらえるはずです。

-- 最後に、ひきこもりに悩む人たちに向けてメッセージをお願いします。

あのときゲームテスターのアルバイト面接に行かなかったら、僕は今でもひきこもりのままだったでしょう。そして、「正社員の求人しか受けたくない」というプライドを持ち続けていたら、今の自分はなかったはずです。きっかけさえあれば、ひきこもりは卒業できます。まずは自分を受け入れ、そのうえで自分ができることから始めてみてください。

ひきこもりは克服できる

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ひきこもり克服のきっかけとなったものは、偶然目にしたWeb漫画。そこから様々なことを考え、そして行動に移し、小川さんは無事ひきこもりを克服することができました。このように、克服のきっかけは身近なところにいくつも転がっているのかもしれません。

人は誰しも、自分なりのプライドを抱えながら生きています。それが生きるうえでの道標となることも多々あるでしょう。しかしながら、場合によってはそのプライドが自身の歩みを止めてしまうこともあるのです。小川さんの場合、「正社員にならなくてはいけない」というプライドが彼自身の歩みを止める原因となっていました。ときには、自身が持つプライドを疑ってみることも大切であると言えるでしょう。

ありのままの自分を受け入れ、できることから少しずつ挑戦してみれば、ひきこもりはきっと克服できるはずです。当記事に触れ、ひきこもりに悩む人たちが少しでも前向きになってくれたのであれば、とても嬉しく思います。

この記事を書いた人

私がひきこもりを克服できた理由〜”回避性人格障害”発症から社会復帰までの軌跡〜(ヘルスケアライター)

石川 広樹(いしかわ ひろき)

ライター

管理栄養士(病院・有料老人ホーム)、司書(公立図書館・新聞社の調査資料チーム)などを経験し、2015年からフリーランスのライターとして活動。
食に関する記事だけではなく、ダイエットや心身の疲れなど「健康状態」に関わる記事の執筆もおまかせください。
趣味はランニング、読書、ゴルフ。

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