【少女漫画】個性的すぎるギャグマンガ家”岡田あーみん”の世界観を堪能しよう(マンガライター)

●1983年、彗星のごとく現れたギャグ漫画家・岡田あーみん。
●個性的な作品であったが、掲載雑誌は王道少女漫画が軒を連ねる『りぼん』だった。
●高校生のひとり娘・典子が不憫すぎる作品『お父さんは心配症』。
●戦国時代を舞台にした抱腹絶倒作品『こいつら100%伝説』。
●恋愛漫画を軸とした都会的なギャグ漫画『ルナティック雑技団』。

1983年、集英社の『りぼん』でデビューした漫画家、岡田あーみん。『お父さんは心配症』『こいつら100%伝説』『ルナティック雑技団』とデビュー以来連載を続けていましたが、1997年以降、突然活動を休止してしまいました。
毒々しいギャグ、流血あり、下ネタあり。当時正統派少女漫画雑誌だった『りぼん』では、ちびまる子ちゃんと並んでかなり異色の作風でした。それでいて不思議な魅力(いわゆる中毒性)があり、その世界観にはまってしまった少女も多いはず。

今回は、リアルタイムで読んでいたアラフォー女子の私が、歌謡界で言うところの山口百恵ばりに彗星のごとく現れては去っていった「岡田あーみん」作品の魅力を、独断と偏見で語ります!知ってる人には共に懐かしんでもらい、知らない人には「岡田あーみん」の魅力を知ってもらえたら嬉しいです。

秀逸ギャグのデパート・岡田あーみん

何気ない日常の中、ふと笑いに飢えていると気づいたとき、私は迷わずあーみん漫画に手を伸ばします。「いつ読んでも笑わないページなどないんじゃないか?」という安心感。爆笑連発。岡田あーみんの名を出すと、私の周りでは100%「あー!懐かしい!」と場が盛り上がります。このように、岡田あーみん作品に影響を受けているアラフォー女子は非常に多いのです。

キャッチフレーズは「少女漫画界に咲くドクダミの花」。ドクダミの名のとおり、当時「星の瞳のシルエット」や「ときめきトゥナイト」など、絶大な人気を誇っていたピュア漫画を蹴散らす勢いの、強い臭気を放った、強烈なあーみんワールド。私の笑いの基盤は、ここにあると言っても過言ではありません。

岡田あーみんのマンガ3作品

【1】『お父さんは心配症』

ストーリー説明

高校生のひとり娘・典子を男手ひとつで育てている中年サラリーマン、佐々木光太郎。北野くんという彼氏ができた娘が心配なあまり、勝手な妄想を炸裂させ、殺すこと(!)も厭わない暴挙に出まくります。(典子も北野くんも、心配ないほどとてもいい子です。)
典子にとって一番の心配のタネがお父さん自身だということに、本人は気づきません。周囲を巻き込みながら、毎回想像を絶する大騒動を繰り広げます。

作品の魅力

とにかくお父さんは変態で、おげれつ極まりないです。流血、吐血、おもらし当たり前。ゲロを吐いたあと、それを典子のクラスメイトが食べたシーンはさすがに胸が悪くなってしまいましたが。典子の言うとおり、”お父さん最低!”です。

しかもはじめはまともキャラだった北野くんもお父さんの変態パワーに感化され、どんどん変態化していきます。典子不憫すぎる。私なら確実に病んでいます。
そんなお父さん、お見合いした安井さんという子持ちの美人ママに好かれようと必死に頑張ります。いつも迷惑をこうむっている典子、でもお父さん大好きで、幸せになるのを心から願っています。微笑ましい。

当時は典子に感情移入していたのですが、親となった今、お父さんのたまに吐く、鋭いコメントに激しく共感してしまう自分がいます。

“何が大人達は夢を忘れた人間だっ。おまえらみたいなクソガキ育てるのに必死でそんなもんみてるヒマあるかっ”

【2】『こいつら100%伝説』

ストーリー説明

時は戦国、乱世によりスパイがうようよする中、白鳥城の姫の命を守ってくれと、忍術道場の先生に護衛の依頼が来ます。そこに弟子入りしている3人、なんと姫に一目ぼれしてしまい、姫争奪戦がスタート。これまた周囲を巻き込み(主に先生)、毎回とんでもない騒動に発展していきます。

作品の魅力

とにかくすべてのキャラの個性がスゴイ、としか言いようがないです。たくさんのキャラがとっかえひっかえ登場して物語をかき回していく中、必死の突っ込みは師匠ただ一人。血管が切れていつ死んでもおかしくないその様は抱腹絶倒間違いなしで、もうどのエピソードが面白い、などと抜粋などできないほどすべてのページで笑わない箇所はないのです。

相変わらずの流血具合、なんなら『お父さん~』よりパワーアップしてます。3巻で完結したのは、かなり物足りなかった……。もっと引っ張ってほしかった……。ちなみに私の好きなキャラは極丸。

“EじゃんGじゃん最高じゃん “

【3】『ルナティック雑技団』

ストーリー説明

中学生、星野夢実は両親が海外出張の間、憧れの同級生『孤高の貴公子、天湖森夜』の家に下宿することに。森夜を偏愛している母ゆり子、森夜に激しい恋心を抱く成金薫子、成金家の執事である黒川、森夜を一方的にライバル視している愛咲ルイなど……。奇抜で個性的な人たちに囲まれ、虐げられ、振り回されながら夢実は鍛えられ、森夜と徐々に心を通わせていきます。

作品の魅力

「あれ?小綺麗な漫画が描きたくなっちゃったのかな?」と勘ぐったのも束の間、「やっぱりそういう路線行くのね……」と嬉しくなったのを覚えています。ただし、『お父さん~』や、『こいつら~』よりは大分落ち着いている、恋愛漫画を軸とした都会的なギャグ漫画です。もちろん、おげれつ街道は健在。夢実も普通の少女かと思いきや、結構な変態街道まっしぐらです。
百合子やルイの、洗練されているような、でもやっぱり意味不明な言動の数々は、当時から頭を離れず、たまに真似してセリフを口走っていました。

“思春期から発情期へ通じるけもの道をなんとかなんとか 寸前で禁猟区よ!!”

“調子にのるわ、救急車に乗るわ、のりにのってるノリノリガールやなあ”

短編で後日談があり、2015年に新装版が刊行されています。ちょっと切ないです。

独断と偏見で語る”岡田あーみん”

「よく『りぼん』の編集部が許可したな」と感心するくらいの、お門違いワールド。そして活動を休止しているせいで色々な説が流れていますが、どれもはっきりしません。事実上の引退後状態が続くこと約20年……ファンとしては消息が気になるところですが、復帰はもう叶わないのでしょうか。引退理由が謎だというところも、関心を引かずにいられません。

『お父さんは心配性』に掲載されている『あーみんの思い出あれこれ』はあーみんのエッセイ漫画ですが、そこには漫画家であるための焦りや苦悩が面白おかしく描かれています。まさに命を削って描いているというか、激しい、怒涛のような漫画家人生だったのだろうな、と想像できます。
執筆を復活しないのも、「私は描ききった、もう悔いはない」という誇りを持っているからだろう、と勝手に解釈しています。そうした生き方に、私は憧れすら抱いてしまっているのです。

この記事を書いた人

【少女漫画】個性的すぎるギャグマンガ家”岡田あーみん”の世界観を堪能しよう(マンガライター)

板野千代子

ライター

兵庫県出身。二人の子育て真っ最中。
得意分野は漫画、歴史、子育て。
会社員のかたわら小劇団に所属していたので観劇が趣味。
イケメン好き。そのイケメンで妄想を暴走させるのも趣味。

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