部下の育成はパワハラと紙一重?上司が身に付けるべき真の育成方法

●管理職経験がある筆者が、パワハラをする上司側の見解をまとめる。
●管理職として仕事をしている以上、誰でも部下にパワハラをする可能性がある。
●しかしパワハラが問題として扱われるかどうかは、上司の手腕にかかっている。
●上司は育成だと思ってやっていても、部下はパワハラとして受け取ることがある。
●最大の問題は加害者側である上司に、パワハラをしているという認識がないこと。
●パワハラをする上司にはさまざまな心情や背景がある。
●叱ることは育成において必要不可欠であり、ポイントは叱ったあとのフォローにある。

組織とは「2割のできる人と6割の凡人、2割の足を引っ張る人」という構成が自然と成り立っていると言われています。つまり、仕事ができない人は職場に必ず1人はいるものであり、そこを周囲が上手くカバーしながら組織は回っているのです。
しかしながら、責任感がなく仕事が雑、ミスをしても謝らない、注意されたことを正そうとしない……そんな部下にイライラしてしまう気持ちは心から理解できます。

私は管理職時代、ゆとり世代社員にほとほと手を焼いていました。その部下はミスを注意しても直そうとはせず、同じミスを何度も繰り返します。ミスをその都度指摘し続けても成長が見られず、とうとう怒りが頂点に達し、大声で叱って泣かせてしまったこともありました。
今思えば、この指導方法がパワハラと受け取られていた可能性も否定できません。このように、パワハラをするつもりがなくても時と場合によっては誰しもパワハラ上司になる可能性があるのです。パワハラが問題として表面化するかしないかは、上司の手腕にかかっているといっても過言ではありません。

そこで当記事では、管理職を経験したからこそわかる、パワハラをする上司側の視点でその背景をご紹介します。

パワハラの要因は加害者側にその認識がないこと

パワハラという言葉はここ数年の間に作られたものですが、仕事上の厳しい指導は昔から行われていたはずです。しかし、時代の流れと共に仕事に対する考え方も変化し、主従関係のような上司と部下という関係性も変化し始めました。
かつては仕事終わりに上司に飲みに誘われたら断る選択肢などなく、お酌をして回るのが当たり前という世界でした。しかし平成の世では飲みに行くことを強要するとパワハラに当たり、今や飲み会を断ることも社員の権利として確立されつつあります。

つまりパワハラという概念が生まれた背景には、加害者と被害者間における認識の大きなズレがあったのです。「相手のことを思ってやっている」という考え方は免罪符になり、部下に激しく叱責したり、人格を否定したりすることさえ「愛のムチ」として正当化できてしまいます。

このように、加害者である上司側がパワハラをしているという認識がないため、部下が次々に去っていっても自分が悪いと気付かずに被害者を生み出し続けるのです。

パワハラ上司に共通する特徴

私がかつて勤めていた会社はパワハラ行為を平然とする管理職が多かったのですが、会社側もベテラン社員であるために黙認するしかないという状況でした。

以下では、かつての私の直属の上司や、管理職に昇進してから同じ目線で先輩管理職を見てきた中で知り得た、パワハラ上司の特徴をご紹介します。

仕事に私情を持ち込む

個人的な好き嫌いという感情を仕事に持ち込み、人によって態度を変えるタイプです。ひどい場合は気に入らない人物をターゲットに仕立て上げ、一挙手一投足にケチをつける、まるでイジメのようなパワハラ行動を平気でやってのけます。
かたやお気に入りの人物に対してはミスしても一切叱ることなく黙認し、愛情を注いでとことん「えこひいき」するのです。

肩書に固執するものの責任は負わない

部下は自分の手下であり、人の上に立つ自分は偉いと勘違いしているタイプです。そして自分の面目を保つために肩書に固執しているだけで、仕事はチームで行っているという意識を微塵も持ち合わせていません。

例えば仕事で問題が起きた場合、まっとうなリーダーであれば問題が起きた経緯を探るものですが、このタイプが真っ先にすることは犯人捜しです。「誰がこのミスを犯したのか」ということが一番重要で、その人物をとことん追い詰めることで部下に全責任をなすりつけようとします。

管理職としての自信がない

管理職は業務成績や部署の人事にもかかわる、とても難しく大変な仕事です。最初は誰しも管理職としてやっていけるか自信がなく、慣れない仕事に日々疲弊している状態です。そして部下とコミュニケーションを取りながら、徐々に人間関係と仕事に慣れていくと同時に管理職としての自信が付いていくのです。

しかし「部下になめられてはならない」と考えるタイプは、その自信のなさから力ずくで部下に言うことを聞かせようとします。また部下もそんな上司とのコミュニケーションは必要最低限に留めようとするため、一向に信頼関係を築けないのです。

叱ること以上にフォローが重要

部下の育成にとって、過ちを指摘して叱ることは必要不可欠です。しかし、ただ叱るだけでは部下は育ちません。必ずミスに対するフォローを入れるようにしましょう。フォローとは、犯してしまったミスの原因を突き止め、次回にすべき問題解決策を指導して自信をつけさせることです。

パワハラ上司の多くは、叱るだけ叱ってそのあとのフォローを何もしていません。パワハラ上司はミスをした「事実だけ」をひたすらに責め立てるため、部下は萎縮して仕事に対して自信が持てなくなってしまいます。

萎縮してしまうと、仕事上で最も大切な上司への「報告・連絡・相談」すら躊躇するようになり、業務上で大きな問題が起こる可能性が高くなります。つまりパワハラをすることによって仕事の生産性が下がり、最終的には上司へと跳ね返ってくるものなのです。

部下に慕われる上司になるために

部下の成長をきちんと把握し、それを正当に評価してくれること。そしてどんなトラブルが起きたとしても、管理職としての最終責任をきっちりと果たしてくれること。これらが部下に慕われる上司の条件です。

この条件をクリアしている上司であれば、部下も安心して仕事ができるだけでなく、仕事に対するモチベーションも高くなります。つまり最終的には部署のため、会社のために大きな貢献へとつながるのです。

パワハラ行為をしている以上、このような効果を得られることはないと断言できます。管理職としての評価を気にするのであれば、今すぐにでもパワハラ行為を止め、公平な視点で部下を見るようにしましょう。

この記事を書いた人

部下の育成はパワハラと紙一重?上司が身に付けるべき真の育成方法

鎌田みなみ

ライター

千葉県出身、在住。
2016年頃から書くことを始め、2018年から本格的にライター業務を開始。美容全般、教育、習い事など、さまざまなコンテンツを執筆。どんなに未知の世界であっても調べ尽くし、わかりやすく書くことがモットー。趣味は調べ事と音楽鑑賞、料理。

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