会社四季報から読み解く!証券アナリストや投資顧問が教えない株の重要情報まとめ(投資ライター)

●個人のネット投資家が中小型株の投資の際に参考にする証券アナリストなどの情報は、企業のファンダメンタルズ(業績の情報)やチャート分析が中心だが、それだけでは投資判断の材料として不十分。
●重要な判断材料は、『株式の流動性』と『株主構成など周辺情報』。これはヘッジファンドやデイトレーダーも重要視している情報でもある。
●これら情報のほとんどは、会社四季報から簡単に得られる。情報の分析も判断基準さえ知っていれば簡単にできる。
●すべてをクリアする銘柄が見つからない場合は、「流動性」「株主および経営陣の属性」「株主の保有割合」の3点に着目する。

証券アナリストや投資顧問からもらった情報をもとにしたのに、さっぱり株価が上がらないーー。中小型株に投資する個人投資家のなかには、このような悩みを持っている方も少なくないはずです。そしてうまくいかない原因は、提供される情報が片手落ちである場合がほとんどでしょう。

証券アナリストや投資顧問が提供する情報は、ファンダメンタルズ(業績面の情報)やチャート分析です。しかし、これらだけでは十分な判断材料になりません。重要な情報としては”株式の流動性”と”株主構成などの周辺情報”が挙げられ、これらの情報を加えることによって初めて投資成績が向上しやすくなります。事実、ヘッジファンドやデイトレーダーはこれらの情報を大きな判断材料にしています。このように、上がる株を見極めるためには様々な情報が必要になるのです。そしてこれらの情報は、「会社四季報」から読み解くことができます。

こちらでは、アナリストなどがほとんど提供しない株の重要情報と、その分析方法についてご紹介します。

『株式の流動性』と『株主構成など周辺情報』

e34f2c96534464a357ed08db98c9220a_s

まずは、投資先を判断するうえで重要となる要素、『株式の流動性』と『株主構成など周辺情報』について説明します。

株式の流動性

『株式の流動性』とは、市場でどの程度の量の株式が日々売り買いされているか、ということであり、“出来高”と言われているものです。中小型株のなかには、ファンダメンタルズが優れていても流動性が極端に低い銘柄がいくらでもあります。
株価は数多くの投資家が自己判断でいつでも自由に売り買いすることで初めて値段が決まるわけですから、このような銘柄の株価は変化しにくいのです。

株主構成など周辺情報

『株主構成など周辺情報』は、ファンダメンタルズと流動性以外にも投資の成否を決める情報のことです。株主構成のほか、配当の推移や幹事会社はどこか、といった情報が挙げられます。
これらの情報は、一言で言えば”会社が株価を上げるための努力をしているか”ということを判断する重要な基準になります。努力をしている会社の株価は上がりやすくなります。

「会社四季報」の本当の見方はこれだ!

d828c97e971c1ce2bd9de5b1603b0c55_s

上記の情報は「会社四季報」から読み解くことができ、それだけでもかなりレベルの高い投資判断が可能になります。会社四季報の重要情報とその見方は、次のとおりです。

企業概要

こちらは、社名の横に2~3行で書かれているコメントです。その会社の事業の特徴や、現状・課題、「営業体制を強化中」「M&Aを積極展開」と言った特に注目すべき取り組みなどが書かれています。ここで見るべきポイントは、キーワードがあるかどうかです。「増配」「株式分割」「ストックオプション導入」「中期経営計画策定」などといった流動性を高める要素、株価を上げる努力が見えるセンテンスを確認しましょう。

従業員

【従業員】の項目に、連結と単体別の従業員数と平均年齢、平均年収が記載されています。チェックすべきポイントは、平均年齢と平均給与です。平均年齢は、40歳をひとつの基準にします。業態などを考慮しながら、平均年齢か標準かどうかを判断しましょう。基準から大きくかけ離れている場合には、その理由検討します。分からない場合には、企業のIRに直接電話して確認しましょう。
平均給与が業界平均に比べて高すぎる場合には、念のため注意が必要です。投資家への配分が後回しになっている可能性があるためです。

幹事社

【証券】の項目における(幹)の箇所に、主幹事と副幹事の証券会社がすべて記載されています。主幹事は(主)、副幹事は(副)と表記されています。幹事社が大手ばかりの場合には、投資に慎重になったほうが良い場合が少なくありません。中小型株の場合、大手の証券会社は上場後にあまり面倒を見ないケースが多いからです。

発行済み株式数

【株式】の項目の冒頭に、発行済みの最新の株式総数が記載されています。こちらは、流動性を分析する上で基本となる数字です。投資対象となる目安は1,000万株以上です。

株主

【株主】の項目に、保有株式数で上位10人(社)の名前と保有する株式の割合が記載されています。必ず確認すべきことは、株主の肩書きです。投資先として良いものは、代表取締役およびその親族が株式の33.3%以上を保有しているケース、つまりオーナー企業であるケースです。なぜなら、経営陣が俄然株価を上げる努力をすると考えられるためです。

これらのほかにも、短期売買する投資家や、仕手筋などの投資家が名前を連ねていないかをチェックします。また、株主のなかには“信託口”が入っているケースもあります。これは、機関投資家や富裕層が実際の保有者であるケースが多いのですが、本当のところは分かりません。どうしても気になった場合には、IRに問い合わせをしましょう。なお、株主の肩書きは、ネットや有価証券報告書でチェックできます。

株主情報では、外国人と投信の保有割合も非常に重要です。外国人は<外国>、投信は<投信>に保有割合がパーセントで記載されています。目安としては、両方とも2~8%程度が理想と言えます。0%ですと見向きもされていないということですし、10%を超えると、これ以上の買いが入りにくい可能性があるためです。

浮遊株

【株主】の項目の株には、<浮動株>という記載がなされています。こちらは、長期保有を目的としない一般投資家が持つ株式の割合のことです。浮動株が10%台かそれ以下ですと、特定の株主が多くの株式を持ち続けているため、流動性が上がりにくいと判断できます。

役員

【役員】の項目に、法律上の役員と、監査役の名前が全員載っています。ここでは、株主のチェックと同じ分析をします。役員がオーナーか、サラリーマンか。反社会的、あるいは素性が不透明な人物が入っていないかなど調べます。また、証券会社のような株のプロの経歴を持つ役員が経営企画の責任者であるような場合には、株価を上げる努力をする可能性があると期待できます。

配当推移

【配当】の項目に、過去5年間の1株当たりの当たり配当金が記載されています。増配しているかどうかを確認しましょう。毎年増配である場合には、今後も増配が期待できますので、買いの判断材料となります。

有利子負債

有利子負債の情報は、【財務】の項目の一番下に記載されています。オーナー企業への投資の場合には、有利子負債がゼロか、なるべく少ない会社に投資しましょう。経営の基本姿勢を判断する上で特に重要なデータになります。

会社四季報に掲載されていない重要情報

会社四季報の情報に加え、以下の情報もチェックしてみましょう。

出来高

出来高は、市場で1日に売買された株式の量のことです。売買された株式数か、売買金額のどちらかを指しますが、投資家は普通、売買代金を参考にします。こちらは、契約している証券会社のネットサービスで簡単に調べられます。それを必ず確認しましょう。
目安としては、
25日平均で5,000万円以上を投資対象とします。それ以下であれば、流動性が低いと判断せざるを得ません。

ストックオプション

ストックオプションは、役員や従業員に市場よりも安い値段で自社の株を買う権利を与えることを言います。有価証券報告書には導入の有無、権利付与の対象、買える条件などを記載する項目が必ず設けられていますので、簡単に調べられます。
導入されているのであれば、買いの判断材料になるでしょう。なぜなら、社員が努力して業績を上げることが期待できるからです。また、社員全員に制度を導入しているのであれば、さらに評価できると考えられます。

すべてが理想的なケースはそう多くない

ea09781f4463b0227fb21969f6569a13_s

重要項目をチェックした結果、すべてが理想的な内容だったという銘柄はそれほど多くありません。その場合には、「流動性」、「株主および経営陣の属性」、「株主の保有割合」の3点に着目しつつ改めて判断すると良いでしょう。経営陣や株主に不透明な人物がいる場合は論外ですが、「流動性が低い」などといった経営者の判断次第で解決ができるような問題ならば、さらに突っ込んだ分析をすべきです。
具体的には、まず決算説明会などでの経営者のコメントを調べてみましょう。そのなかに一言でも問題解決へのコメントがあれば、中期的なスタンスでの投資対象として検討すべきです。

続いて、IRへの電話取材もやってみましょう。チェック項目のなかで分からない点をストレートに質問します。このときの担当者の対応も、判断材料として非常に重要な情報です。その場で即答できない、もしくは対応そのものを拒否するような場合には、それだけで投資対象になりません。

基礎を頭に入れておこう

これらの情報は、投資における基本中の基本となる部分です。とはいえ、これらを念頭に置いて投資するだけでも、成果は確実に変わるでしょう。投資先に悩んでいる個人投資家は、ぜひ参考にしてみてください。

この記事を書いた人

会社四季報から読み解く!証券アナリストや投資顧問が教えない株の重要情報まとめ(投資ライター)

柄澤邦光(からさわ・くにみつ)

ライター・証券アナリスト

経済記者・ライター。新潟県出身、東京都在住。
総合経済紙記者、総合月刊誌編集者等を経て、現在は証券アナリストとして中小型株銘柄を中心に企業調査レポートも執筆。
現場取材第一主義を貫き、あらゆる業界の取材経験があるが、特に金融・エネルギー・建設・IT分野が得意。
現在は、人材・介護・医療分野も手掛けている。
趣味は落語、映画鑑賞、食べ歩きと、阪神タイガース。

このライターに記事の執筆を相談したい

関連記事