なぜ彼のもとには仕事が舞い込むのか?ピエール瀧に学ぶ「仕事の流儀」(エンタメライター)

●本職は日本のテクノシーンを牽引する「電気グルーヴ」のメンバー、ピエール瀧氏。
●一般には俳優として認知されているが、他にも多岐にわたる活動をしている。
●ピエール瀧氏の考え方、活動からは多くのビジネスマインドを学ぶことができる。
●仕事こそが芸の肥やし、学ぶべくして仕事を引き受けている。
●作品に奉仕すべく、自信の個性は必要としていない。
●どんな仕事も、引き受けたら楽しむ。

“得意分野は何ですか?” “やりたいことは?”

フリーライターをしていると、クライアントに必ず聞かれる質問です。特化した分野を持つことは強みになります。ただ正直なところ、フリーランスは得意分野の仕事だけを待っていても、ご飯は食べられません。当記事の著者である私も、とにかく「なんでも書く」という一心でここまでやってきました。
とはいえ、このような状況に悩んでいた時期も確かにありました。“なんでも屋”でいいのだろうか……と。そんなとき、「ピエール瀧氏が主役のNHKドラマが好評」というニュースを耳にしました。

「何やってんだ……。でも、すごいな。主役やったんだ」

そこから彼の出演作品やインタビューなどを読みながら言動をひも解くと、そこには彼なりの「仕事の流儀」があり、さらにそれは働く人、すべてに使える流儀でした。

こちらでは、すべてのビジネスマンが参考にすべきピエール瀧氏の「仕事の流儀」をご紹介します。

電気グルーヴのメンバー・ピエール瀧

2016年で活動26年目に入った「電気グルーヴ」。DJとして活躍する石野卓球とともに、国内外のテクノイベントなどに参加するテクノユニット。80年代にインディーズで活動していたバンド「人生」を解散し、その後1991年に2人が中心となって「電気グルーヴ」を結成します。当時の日本では「テクノ」というジャンルの認知は低かったのですが、その音楽センスに加えて、彼らのパフォーマンスに独特の歌詞、発言で広く知られるようになりました。

ボーカルだけでなくかぶりものに仮装、初期のころにはろくろを回すなど破天荒なパフォーマンスで話題を呼びました。一方で、電気グルーヴのCDジャケットやPVなどのディレクションも行い、電気グルーヴの強烈な個性、デザインワークの指針になっています。

【仕事精神1】学ぶために仕事をする

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ネットで「ピエール瀧 作品」と検索してみると映画、ドラマ、バラエティなど、うんざりするほどの膨大な数がヒットすることがわかります。そして、年を重ねるごとにそのジャンルはますます広がっています。なかでも俳優・ピエール瀧氏の評価が高いのですが、そのことについては、こう語っています。

―実際に演じるようになられてからはどう感じますか?

 

ピエール瀧 : これで俺は、役者に目覚めていくぞ!みたいな機運が芽生えたか?ってことですか?(笑)あんまりその、仕事として捉えてないので。今日はその、何とかって 映画の現場だから、社会科見学に行くついでに、というか、丁度仕事でオファーがあったので(笑)……やる、ってことにして現場でも見学に行くか、って感じですね。でも、現場でそういったものが芽生えた、とかもあんまりないですよ、ほんとに。ゆるゆると、依頼が来た仕事の中で楽しそうなのをやってるだけですよ。

 

(引用:創刊5周年記念企画/ピエール瀧 × Art Yard Interview)

学校を卒業すると当たり前に「仕事」を探します。それは生きていく上で一番欠かせないチケット、「お金」をもらうため。生きている中の貴重な時間を仕事に費やすなら得意とする分野や、趣味を兼ねた仕事を探します。そこから考えると、ピエール瀧氏が仕事を決める基準は「楽しそう」ということになります。
しかし、役者の仕事を受ける理由のひとつとして、彼はこのようにも話しています。

現場に行くための手段です。役者として自分を高めよう、高めていかなければ、というのはあまりなくて。いろんな現場で、いろんなスタッフ、いろんなモノの作り方を見てみたいんですよね。見るためには、セリフを覚えて、現場になじむようなところまで準備していかなくちゃ見られない。スクリーンに映っている自分がうんぬん……ではない。

 

(引用:女性自身 芝居が「面白いと思ったことがない」ピエール瀧が”演じる”理由)

お笑い芸人にとって「女遊びは芸の肥やし」という発言を聞いたことがあるかと思いますが、良い仕事をするには勉強は欠かせません。営業職なら海外の顧客を見据えて英会話を習う、事務職ならMOSの習得など、各分野の勉強の目的・方法・対象はさまざま。
前述したとおり、彼は「電気グルーヴ」ではPVやMVのディレクターなども担っています。役者も、声優も、バラエティ番組の出演も、自身のクリエイティブに欠かせない仕事の「肥やし」なのです。

【仕事精神2】仕事に自分の個性はいらない

仕事で働きが高く評価されるのは、自身の自信になり、スキルアップにもつながります。また、良い発想やアイデアは、仕事が成功へ走る原動力になります。
ピエール瀧氏はさまざまな経歴や経験を持っており、その分発想力も個性的です。

自分の魅力が何かなんて考えたことはないです。ただ、その場その場の現場で、作品の高い完成度を目指し、作品に奉仕の心を持ってなじむようにしています。そこで変にはみ出そうとすると、自分の印象は売れるかもしれないけど、作品の質は落とします。

 

(引用:ZAKZAK「ぴいぷる」)

彼のインタビューの「作品」という言葉を「仕事」に置き換えてみてください。どこかのビジネス雑誌のような内容になりませんか?
ピエール瀧氏は発想やアイデア、働きは「仕事を成功に導くため」のものときっぱりと割り切っています。単純な自分の意見・個性と仕事のための意見は全く違います。その重要性を、彼はきちんと把握しているのです。

【仕事精神3】受けたら最後までやり遂げる

電気グルーヴの26年間を追ったヒストリームービー「DENKI GROOVE THE MOVIE? -石野卓球とピエール瀧-」が公開されました。監督は大根仁氏。大根氏はドラマ版・映画版で「モテキ」の監督を務め、映画は第35回日本アカデミー賞話題賞・優秀作品部門を受賞した注目の監督です。そんな彼も、電気グルーヴに大きな影響を受けたクリエイターの一人でした。ほかにも、お笑いコンビ・ナイツの塙宣之も、電気グルーヴがかつてパーソナリティーをしていたラジオを聞いて、今の漫才スタイルを確立したと話しています。

「ダサい」と「かっこいい」のキワを歩きつつ、絶妙なポイントで誰も見たことのない刺激的な作品を出してきたセンスは唯一無二。現在、第一線で活躍するクリエイターや著名人も彼らの影響を受けた人たちは多くおり、一緒に仕事をしてみたいというファン心理でオファーを出すことはあるのでしょう。
ただ、それだけでこの仕事数はありえません。彼の仕事に対する姿勢が、理由のひとつになっているのではないでしょうか。

 

現場がとにかく好き。いろいろなもの作りが見られるのが楽しい。毎日、違うテーマパークに行って、バックステージを見ているのに近いかもしれない。そういうポジションでいられることがうれしい。

(引用:MANTANWEB(まんたんウェブ) 大河「軍師官兵衛」で独特の存在感 )

当たり前のようなことで、実は一番大切なこと。これをきちんと理解しているとしていないでは、大きな差が出てくるのではいでしょうか。

すべてに通ずる”ピエール瀧マインド”

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ピエール瀧氏の自由奔放なイメージとは裏腹に、仕事に関してはベーシックな流儀を持っていました。彼の流儀のエッセンスだけでも取り入れると「仕事のジャンル」はなくなり、「お金をもらう」以上の知識と楽しさを発見できるのではないでしょうか。

この記事を書いた人

なぜ彼のもとには仕事が舞い込むのか?ピエール瀧に学ぶ「仕事の流儀」(エンタメライター)

しょうじかおる

ライター

写真週刊誌、新聞記者などを経てフリーライターに。取材人数は1000人以上。得意分野は酒場・旅行・人物取材。シニア市場のコピーライティングも対応できます。大阪生まれ、大阪育ち。

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