D.トランプも涙する!?「V8カマロ」オーナーが語るアメ車の楽しみ方(自動車ライター)

●過去のスタイルと現在のスタイルの相違を時代背景とともに解説。
●「アメリカ車は大食い・ばかデカイ・曲がらない」という説を検証。
●買い物、仕事など日常での「使い勝手」について、日常でのエピソードと共に実話ならではのリアル感を込めて検証。
●本当は長距離に強いはずのアメ車……その実態を探るべく、青森出張へは愛車・カマロで行くことに。
●燃費などはあまり気にせず、「走り心地」や「エンジンの具合」、「サスペンションのヘタリ具合」といった、実走についてのインプレッションを時系列(そんなに長期間ではないが)で紹介。
●車社会における、アメ車の立ち位置や周囲との共生についての総括。

2017年5月現在、D.トランプが米大統領に就任して数ヶ月が過ぎようとしています。彼は就任早々から「日本はもっと我が国の車を買うべきだ」と、今まで過去の大統領が言ってきたことを、またしても声高に述べています。オバマ前大統領がやれなかった(やらなかった)シリア空爆が落ち着けば、日米貿易条約にも着手してくるでしょう。

その根源は単純で、「日本の車ばかりアメリカで売りまくっていて、なぜ日本人はアメ車を買わないのか?」に尽きると思います。しかしながら、冷静に考えてみると筆者(当年52歳)より上の世代は、「アメリカ1番」的な思想を持ってる人も多いですよね?リーバイスのジーンズに憧れ、朝食はトーストにコーヒー、なんてネ。
当然ながら、車で言えば『ブリット』でS.マックイーンが乗っていたムスタングや、『刑事ナッシュ・ブリッジス』でD.ジョンソンがブン回していたバラクーダ・クーダなどといったマッスルカーに垂涎の眼差しを送ったりするわけです。実際にカッコ良かったですしね。

それが、いつの間にか“アメ車は燃費が悪すぎる”とか“大きすぎて日本の道には合わない”なんて言われはじめ、今では一部のマニアしか見向きもしない始末です。果たしてアメ車は、本当に日本には向いていないのでしょうか?また、日米間の車貿易は不平等なのでしょうか?

仕事からデートまで……アメ車的日常生活を実践

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筆者は雑誌のライターで忙しく稼いでいたお陰で、1990年に3代目のシボレー・カマロZ28、走行8キロの“訳あり新古車”を購入しました。ほぼ新車状態で、気持ち良かったのを覚えています。お値段は、フェアレディZのフル装備車と同じか、少し安いくらい。それでも、エンジンがV型8気筒の5000cc(正確には4860cc)で、「押し出し」が強いところが気に入っていました。

この車で吉原(東京都台東区、いわゆるソープ街です)によく取材で行ったりもしました。店頭で水を撒いている従業員なんかは、勝手に同業者の引き抜きと勘違いしてくれたり、カー・マニアの店長なんかとはクルマ談義に花を咲かせたりもしていました。
燃費の問題は国産のマークⅡクラスより「少し悪いかなぁ」と思うくらいで、街中で5キロ弱、高速では6キロを超えていました。取り回しの件は“はじめから下町とか密集地には行かない”と決めて乗っていれば、気にはなりません。

要は「気の持ちよう」次第なのだと思いますよ。峠なんかではテンロク(1.6L)クラスにカモられるけど、直線や海岸線を流しているときの”DERoo,DERoo”っとした重低音のエグゾスト・ノイズの調べはサイコーです。

もちろん、買い物や都内の移動、それにデートも、文字通り大車輪の活躍でした。トリビア的な情報を挙げると、エアコンの効きが凄くいいので(多分、欧○車なんかよりもイイ気がした)暑がり&汗っかきの筆者には重宝していました。

1泊3日、岩槻(埼玉県)~青森往復をカマロで行く!

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こうして当時、筆者の日常はカマロとともにあったのですが、思いもかけずにロングラン・テストをする機会が訪れたのです。
その頃、ちょうど月刊誌で連載を始めることになり、「その第1回を”青森編”でやろう!」という話が出てきました。「遠いけど、いい?」と担当者は申し訳なさそうに私の顔を伺っていましたが、当然答えはYesです。経費は全部クライアント持ちで、なおかつカマロのテストができるのですから。
この段階での愛車・カマロの仕様はというと、エンジンとサス、コイルはノーマル。マフラーはトランザムの廃車から頂戴した中古の社外品、タイヤは8分山のFireStone(ブリヂストンの米国名)です。念のため、オイルをカストロールに変えました。アメ車にカストロは似合わないですが、クルマを変えても、いつもオイルはコレなので……。

そして、いよいよ当日です。起点に近い「岩槻料金所」を8時に出発(写真)。途中、鹿沼あたりまでは断続的に連なっていた他車も、このあたりからは、まばらです。ケータイがまだ普及していない時代だったので、定時連絡を入れながら食事、トイレ、休憩を3度取って、「青森料金所」を抜けたのは15時でした。
約700kmを休憩込みで7時間でした。300km地点の仙台を過ぎてからは、交通量が更にグンッと減って、さながら無人の野を征く『マッド・マックス』のM.ギブソンのようでした(笑)。1泊して翌夕に帰途についた強行軍でしたが、車のトラブルはありませんでした。

感想としては、市街地も含めた燃費が7キロ弱と予想より伸びなかった点と、エンジン、ボディ自体が重いので、最高速も意外と出なかった(基本は制限速度です)点が気になったくらいでした。
1,000km超を走るには、シートが柔らかすぎたことを除けば、ブレーキのフェード(焼き付き)もなく、快適でした。帰ってオイルを見てもドロドロしていないし(1,500kmじゃ当然ですけど)、8本のピストンも全くの正常な動きをしていました。
実際に遠っ走りして「アメ車、やるもんだなぁ」と再認識を得たのが、精神的に大きかったです。

左ハンドルで安全に

結局、筆者はこのカマロに9年間乗り続けました。直接の駆動系の故障はなく、ラジオのオート・アンテナが勝手に伸び縮みしてしまったことくらいです。あとは、キャブレターにガソリンが噴射されなくなって「もう9年乗ったから、そろそろいいかな」と買い換える決心をしたのでした。

巷では、いっこうに右ハンドルの“日本仕様”を発売する気配がないアメ車に対して「日本向きじゃないよ」などという言葉が聞こえます。しかし、左ハンドルだと歩行者への視認が良くなって、かえって安全な場合があるのも事実です。ちなみに、こうしてアメ車についていいことばかり書いていますが、私はトランプ支持者ではなく、ましてやタカでもハトでもありません。古いのも新しいのも、カッコ良いからアメ車が好きなだけです。

おりしも、「新型のカマロを秋には日本でも販売をスタートさせる」というニュースリリースがGMジャパンから発表されました。その1台は、2Lターボだそうです。アメ車といえば、ターボよりもスーパーチャージャーというイメージがありましたが、実に楽しみな1台です。

この記事を書いた人

D.トランプも涙する!?「V8カマロ」オーナーが語るアメ車の楽しみ方(自動車ライター)

中川デイブ

フリーライター

手書き時代から健筆を振るう老ライター。守備範囲は「政治から風俗まで」だが、狭く浅い。

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