自筆証書と公正証書の違いとは?相続トラブルを回避できる遺言の書き方・作り方(法律ライター)

●相続トラブルは誰でも起こりうること。遺言書を作成して備えることをおすすめする。
●遺言には、自筆証書遺言と公正証書遺言の二種類がある。
●どのよう内容にするかは自分で決める必要があるが、不備のないように、かつ自分の意思を正確に反映したものを作るには専門家のサポートが必要。
●遺言作成の手助けをしてくれる弁護士・司法書士・行政書士の特徴を理解して、満足のいく遺言の作成を。

ドラマや小説でよくある相続トラブル。自分の身には関係ないと思っていませんか?華麗なる一族でなくても、あなたの身に起こりうることです。遺産相続の際に争わないために遺言を書くのがいいとわかってはいても、実際にどうすればいいかわからないという方も多いのではないでしょうか。高齢社会で相続の機会も多い昨今では、各人で対策を講じるべき問題となっています。

当記事では、元ロースクール生である筆者が、相続で困った事例をご紹介しつつ、とるべき対策を提案していきたいと思います。

困った!相続トラブル事例

c38dbf84e08f8150d49ded7e11cff3d1_m

相続とは、故人の財産を誰かに帰属させるための制度です。相続に関することは、民法上にそのルールが定められています。したがって、故人が遺言を書かなかった場合でも、基本的に配偶者・子などの家族に相続されます。相続人が複数いる場合、相続の対象となる財産を共同相続し、遺産分割手続で分けることになります。この遺産分割でうまく話がまとまればよいのですが、そういったケースばかりではありません。

例えば、相続財産の中心が持ち家と土地だった場合に、そこに住み続けたい相続人と他の相続人間でトラブルが起こる場合があります。誰かひとりがその土地家屋を相続するならば、他の相続人に相続分の価額を賠償しなければなりません。賠償できなければ、相続財産を売却して、その代金を分けることになります。故人が農業を営んでおり相続人のひとりが後継者だった場合などは、賠償金を他の相続人に支払えなければ家業が継げないということもあります。

ほかにも、内縁の夫や妻が亡くなったとき、内縁関係では相続人になれませんから、何の財産も受け取ることができません。このようなトラブルを避けるために有効な対策が「遺言」です。

遺言の種類~自筆証書遺言と公正証書遺言〜

7c469e34339c25787cc8ec42336aac62_m

遺言にもいくつかの種類があります。ここではよく利用される自筆証書遺言と公正証書遺言の二種類をご紹介します。

自筆証書遺言

自筆証書遺言の作成はとても簡単です。遺言作成者がその全文、日付および氏名を自書し、押印すれば完成します。「それならば自筆証書遺言を作ろう!」と思われるかもしれませんが、デメリットも多くあります。自己保管のため紛失・偽造の危険も大きく、また少しでも書式に不備があれば無効となってしまいます。
例えば、以下のような自筆証書遺言は無効となります。

・Wordで作成したもの
・高齢で誰かに手を支えてもらいながら作成したもの
・日付を「○○月吉日」としたもの

遺言には通常の文書とは違った特殊なルールが多くあるので、簡単に書けると言っても、慣れていないと有効な遺言を作成するのは難しいといえます。

公正証書遺言

公正証書遺言は公証人の面前で作成するもので、原本は公証役場にて保管されます。よって、偽造・紛失のおそれがなく、書式による無効を心配する必要はありません。また、自筆証書遺言と異なり自書の必要がないので、手が不自由な方でも会話で作成できますし、会話できない方も手話等で作成することもできます。
公正証書遺言は、以下の5つの手順で作成します。

1)遺言者が証人二人以上を連れて、公証役場を訪れる。
2)遺言者が遺言の趣旨を公証人に対して述べる。
3)公証人は遺言者の言葉を筆記し、その内容を遺言者と証人に読み聞かせる。
4)遺言者と証人は確認をし、署名押印する。
5)公証人が署名押印する。

以上の特徴を踏まえて、遺言書作成の経験のない一般の方であれば、確実で安心な公正証書遺言をおすすめします。

具体的な遺言の作り方

2bdbd18feac7a37be0fa2096c511e577_m

遺言書の内容を決めよう

まずは遺言の内容を考えましょう。当たり前のように思われるかもしれませんが、自分がどのような目的で遺言を書きたいか整理しておく必要があります。家族が困らないように配分を決めておきたい、相続権のない人物に遺したい、自営業だから経営資産が分散するのを防ぎたい、など……。遺言を書こうと思われた理由はさまざまだと思います。その目的を前提に、遺言の内容を考えることが第一です。
そして、実際に遺言作成するにあたっては、専門家に依頼するのがよいでしょう。書き直すこともできますが、不備のないように、かつ自分の意思を正確に反映したものを作るには専門家のサポートが必要です。

専門家にサポートしてもらおう

法律家といえば弁護士という印象が強いですが、司法書士や行政書士に頼むこともできます。弁護士の場合、相続財産の権利関係が複雑な場合の処理を任せられ、遺言執行者として指定しておけば後々まで安心です。ただし、そのぶん依頼費用が他と比較して高額となり、20万円~を目安に準備しておく必要があります。

司法書士は登記の専門家であるため、土地建物など不動産登記の相談もできる点が強みといえます。費用は目安として7~15万円程度とされ、弁護士に依頼するよりも抑えることができます。

また、行政書士は書類作成を請け負う仕事であり、もちろん遺言書作成も依頼できます。遺言専門の行政書士事務所などもあるようです。ただし、係争が起きた場合には代理にはなれないので、そのような心配がなさそうな遺言の場合に依頼するとよいでしょう。費用は目安として7~15万円程度です。

満足のいく遺言書を作ろう

遺言とひとことで言っても、目的も内容も人それぞれです。自分の想いをベースに、専門家の手を借りて法的に有効な遺言書を作成します。自分の遺言だけでなく、相続で揉める可能性が考えられるならば、親などに遺言を書くようすすめてもいいと思います。書き直すこともできますが、できるならば一度で満足のいく内容の遺言書が作れるといいですね。

この記事を書いた人

自筆証書と公正証書の違いとは?相続トラブルを回避できる遺言の書き方・作り方(法律ライター)

仲里なお

ライター

愛媛県出身。
大学は法律専攻で、某法科大学院に在籍していた。六法のなかでは民法がすき。法律ライターとして活動中。

このライターに記事の執筆を相談したい

関連記事