みなさんは、「心筋梗塞」や「脳梗塞」という病名をご存知でしょうか。下手をすれば命を失いますし、一命を取り留めても多くの場合は動悸や息切れ、麻痺などの後遺症が現れます。どちらも血管が詰まることで引き起こされる病気です。
「そうそう。だから血液をサラサラにしておかないと」と考えたあなた、「血管の健康力」も同じくらい重要なことはご存知ですか?専門医師のあいだではすでに20年前から常識となっているのですが、一般的にはまだあまり知られていないようですね。そこで今回は、取材歴20年以上の医療記者である私が、その「事実」をご紹介したいと思います。
心筋梗塞や脳梗塞が増えている…働き盛りは特に注意!
かつて日本では珍しかった心筋梗塞や脳梗塞も、食事の欧米化などに伴い、今ではもはや一般的な病気となりました。そして今ドクターたちが懸念しているのは、「働き盛りの患者さんが増えている」という現実です。これまではお年寄りばかりだった患者さんのなかに、40歳代や50歳代の患者さんが目立つようになってきたと言うのです。おそらく彼らは家族を養う大黒柱。発症しないよう注意したいですね。
大切なのは「血液サラサラ」よりも「血管の健康力」
最初にご紹介したように、心筋梗塞と脳梗塞はどちらも血管が詰まることにより引き起こされます。残念ながら、これらは「血液サラサラ」だけでは防げません。それよりも重要なのが「血管の健康力」なのです。詳しくご説明しましょう。
血管という管は、いくつかの層が重なってできています。そして一番内側にある「内皮」という層が「血管の健康力」の源となっています。健康力のある血管はしなやかであり、また、血液中を流れる悪玉コレステロールなどの異物が血管の壁のなかに侵入してくることもありません。
「健康力」が落ちると血管内に異物が蓄積、その放出が血管を詰まらせる
では、血管の健康力が落ちたらどうなるのでしょうか。健康力が落ちた血管は硬くなるだけでなく、壁のなかに悪玉コレステロールなどの異物が潜り込みやすくなってしまいます。つまり、血管の壁が「異物の貯蔵庫」になってしまうのです。医学的にはこれを血管の「プラーク」と呼んでいます。
血管のプラークは、すべてではありませんが、何かのきっかけで崩壊します。トンネルの壁が落ちるように、血管の壁の内側が崩壊するのです。そうなると、壁のなかに溜まっていた異物が血液中に放出されます。血液には「異物に触れると固まる」という性質があるため、プラークが崩壊すると血液は固まり、血管が詰まってしまうのです。
血管が詰まった場合、一番多い原因がこの「プラークの崩壊」です。どれほど血液がサラサラでも、このプラーク崩壊を防ぐことはできません。
医学界では’90年台半ばからの常識
健康力が十分な血管であれば、少しくらい血液が固まっても溶かす力があるのですが、健康力が衰えた血管にその力は残っていません。詰まってしまった血管は、すぐに治療しなければ血管は詰まったままです。そして詰まった先の細胞は、血液から酸素を受け取れず、死に絶えていきます。これが心臓で起きれば、心筋梗塞、脳で起これば脳梗塞です。
今回ご紹介した「血管詰まりの主な原因はプラークの崩壊」という事実。医学界では1990年代の半ばに、米国のフスター、フォークという二人の医師が報告し、一大センセーショナルとなりました。しかしながら、患者さんレベルではほとんど知られていないようです。医学にはこのような「専門家のあいだでだけ常識」という話題が少なくありません。
血管の健康力維持には、健康な生活と生活習慣病の早期治療が大事
さて、大事な話を忘れていました。そう、血管の健康力はどうすれば保てるのでしょう?答えは「急がば回れ」。適度に運動し、タバコは吸わない、です。
また「高血圧」、「糖尿病」、「高コレステロール血症」は、血管の健康力を損ねる三大悪です。放置する期間が長いほど健康力は低下していきます。診断されたらすぐにかかりつけの先生に相談してみましょう。
高血圧や糖尿病、そして高コレステロール血症は、たいていの場合自覚症状がありません。「何も不具合がないのに、なぜ、治療しなくてはいけないの?」と思ったことはありませんか?それは血管の「健康力」を保つためだったのです。そして今回ご紹介した通り、血管の「健康力」が保たれていれば、恐ろしい「心筋梗塞」や「脳梗塞」を予防できます。
血管の健康力に注目しよう
いかがでしたか?心筋梗塞や脳梗塞を防ぐには、「血管サラサラ」よりも「血管の健康力維持」の方が重要——。納得していただけたでしょうか。周りの人にもぜひ、教えてあげてください。