とにかく弾きづらい!所有してみて感じた「リッケンバッカーベース」の魅力と欠点

●1931年に設立された楽器メーカー、リッケンバッカー。そこから発売されたのがリッケンバッカーベース。
●現在生産されているエレキベースに比べて造りが古く、欠点も多いため、人気の割には使用しているベーシストが少ない。
●整備において面倒なことが多く、最初はとにかく弾きづらい。
●本体の音作りに慣れればバラエティーに富んだ音が出せる。
●例えるなら「ヤンキー映画の主人公」。強くて凛々しいが、脆く繊細。最高にカッコいいエレキベースである。

1931年に設立されて以来、今なお世界中のプレイヤーに愛される楽器メーカー、リッケンバッカー。そこから販売されている楽器のひとつに、リッケンバッカーベースというものがあります。変形ベースの代表格であるその独特なルックス、そして芯の図太い音は、リッケンならではの特徴であると言えます。

とはいえ、リッケンバッカーユーザーに対して「変わり者」という印象を持たれる人も多いことでしょう。根強い人気の割に使用者が少なかったり、手放してしまう人が多かったりするのは、このベースが非常に厄介な欠点を抱えているからなのです。

当記事では、私が実際に所有し発見したリッケンバッカーベースの魅力と欠点をご紹介します。

リッケンバッカーの歴史

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アメリカの老舗楽器メーカー、リッケンバッカー。まずは、簡単にリッケンバッカーの歴史をご紹介します。1931年に設立されたリッケンバッカーは、1932年に世界初のエレクトリックギター「フライングパン」を発表しました。有名な大手楽器メーカーのフェンダーやギブソンと同時期から楽器製作をしていた老舗です。

1960年代にポールマッカートニーが使用

1960年代にビートルズのポールが使用したことで、リッケンバッカーベースは一躍有名になります。

・リッケンバッカーベースを演奏するポールマッカートニー

ポールが弾いているのは、4001Sというモデルです。彼の存在感にも引けをとりません。

1970年代にピーターフックが使用

1970年代にはポストパンクの元祖「Joy Division」のピーターフックが、Hondo製のコピーを使用していました。とても低く構えていますね。

・Joy Division

現代ではジェニーリーが使用

現在でも、数多くのベーシストがリッケンバッカーベースを使用しています。現行のアーティストで私が個人的におすすめするリッケンバッカー使いは、Warpaintのジェニーリーです。

・Warpaint フジロック来日時の映像

ホワイトカラーのリッケンバッカーと、コーラスエフェクターをかけた音が印象的です。邪魔なピックアップカバーを外していないところもグッド。女性が持つと、また雰囲気が変わりますね。

激しさと優しさを併せ持つ魅惑の低音

以前私は、フェンダージャパンのジャズベースを使用していました。その後、2011年製リッケンバッカー4003を中古で購入し、現在半年ほど使用したところです。
長らくジャズベースを弾いてきた私がリッケンバッカーを弾いたときの第一印象は「極端だな」というものでした。各ピックアップの個性が、ジャズベースよりはるかに強い。ゴリゴリとしたリア(ブリッジ側)と甘く優しいフロント(ネック側)を切り替える、また同時に鳴らす、この3通りを選ぶだけで音作りの方向が定まります。

加えて、トーンコントロールがピックアップごとに付いているので、音作りの幅はジャズベース以上です。ジャズベースはアンプで作り、リッケンはベース本体で作る、といったところでしょうか。

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とてつもない低音が出ます。初めてバンドの練習で使用したときは、メンバー全員が気分を悪くしていました(笑)
今は4,3弦にスタンダードより細いものを使用しているので、締まった音が出るようになりました。

他には、「1弦の音が小さい」という意見もよく聞かれます。確かに、他のベースと比べると1弦の音は小さく感じますね。しかし、このおかげで和音がとてもきれいに鳴ります。あえて和音を使いたくなってしまうほどです!

昔から変わらない不可解な構造

昔から造りが変わらないので、現在製造されている他のベースと比べると、不可解な構造をしています。通常のベースではトラスロッド(ネックの中の歪みを調整する部分)は1本ですが、リッケンバッカーには2本あります。1本であれば素人でも自宅で調整できますが、2本はリペアマンに頼む他ありません。ネックが曲がったら即楽器屋行きですので、それが嫌な場合は毎回弦を緩める必要があります。

そして一番の問題は、何と言ってもテールピースです。

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上部のスポンジミュートを調節する左右の大きなネジが、ピック弾きの際にかなり邪魔です。よって私は、右側をとってしまっています。(見た目は悪いですが。。。)
このネジは一度外してしまうと付け直すためにはテールピースごと外す必要がありかなり面倒です。

そして、ブリッジにも爆弾を抱えています。支えているのは左右のか細いイモネジだけ、弦高調整もこのイモネジだけですので、細かい調整はできません。おまけに、オクターブ調整は弦を外さないとできません。う〜ん、ワイルドです。「細かい調整なんかするな!」と言われている気がします。
また、見た目の割にテールピースの部品の裏は意外とスカスカで軽い。こんなにゴツくて強そうなのに、中身は弱々しいという……。どうしてあんなに太い音がでるのか、もはや超常現象です。

最初はとにかく弾きづらい

ジャズベース経験者である私でさえ、とにかく最初は弾きづらかったです。ゴッついピックアップカバーが邪魔なのですが……それでもやはりカッコいいんですよね。。。だから私は外していません。
おかげで、指弾きの際はネックの付け根に近い高いところを弾かなくてはならず、これがジャズベースを弾くときとかなり感覚が違ってきます。最初に紹介したWarpaintのジェニーリーも指弾きしていますね。彼女はピックを使用する際もこの位置をピッキングしていますが、私の場合はピックアップカバーとテールピースの間を弾いています。

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狭い!狭い狭い狭すぎるよ!

それでも、ここを弾くと硬くてカッコいい音が鳴ります。慣れればしっかりと弾けるようになりますよ。なんだか初心者に戻った気分でした。
それと、若干のヘッド落ちがあります。ギブソンのSGやフライングVほどではないですが、滑りやすい服やストラップだと地面と平行になってしまいます。

やっぱり見た目と音が大事

いろいろと問題点を指摘してきましたが、最終的には見た目と音に満足できるかどうかが楽器において重要な点だと考えます。見た目と音が最高なら、それは最高のベースなのです!

例えるなら、「ヤンキー映画の主人公」。強くて凛々しくてカッコいい、でも繊細で脆く危うい。手がかかる子ほど可愛いとも言いますよね。だからこそ、他の楽器にはない愛着がわきますし、整備の苦労も嫌になりません。これからも私の内臓を震わせるのは、このリッケンバッカーだけです!気になる方は一度手にとってみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

とにかく弾きづらい!所有してみて感じた「リッケンバッカーベース」の魅力と欠点

根本勝輝

大学生

出身も現住所も東京都。
現在大学生。文学部で学んでいます。音楽が好きで、楽器やレコードを集めています。作家では太宰治を敬愛しています。漫画やアニメの考察もできます。

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