コーヒー店などでホットコーヒーを注文する際に、皆さんは「ブレンド」という言葉をよく使われるかと思います。ブレンドとは、「違う種類の豆を混ぜて作られたコーヒー」を意味するものです。言い換えれば、お店独自のブレンドがなされたコーヒーでもあり、お店のこだわりが詰まっているともいえます。
では反対に、豆が一種類のみの「シングルオリジン」というコーヒーがあることをご存じでしょうか。個性的なシングルオリジンはブレンドコーヒーとはまた違った楽しみ方があるため、皆さんにもそのおいしさを知ってもらいたいと思っています。
そこで当記事では、コーヒー店に勤務している筆者が、シングルオリジンコーヒーを購入する際にチェックしておきた“4つのポイントをご紹介します。シングルオリジンで、ワンランク上のコーヒー生活を楽しみましょう。
シングルオリジンの基礎知識
まずは、シングルオリジンコーヒーの基礎情報から簡単に説明します。ブレンドは数種類の豆を混ぜているのに対し、シングルオリジンは1つの農園や地域で収穫された1種類の豆しか使用しません。そのため、生産地によって豆の個性が出やすいのが特徴です。シングルオリジンは、種から一杯のコーヒーになるまでの過程を追跡することができる、選ばれたコーヒー豆と言えるでしょう。
購入する際のポイント1:産地をチェック
先程も述べたように、コーヒー豆は気温や土壌や標高によって味が変わるものです。どのような違いがあるのか、主な産地ごとの特徴をご紹介します。
エチオピア産
華やかな香りで、優しい味わいが特徴です。「モカ」と表記されていることもあります。海を挟んだエチオピアの反対側にイエメンのモカという港があり、「エチオピア」より「モカ」という名称のほうが広く浸透していることから、「モカ」と呼ばれるようになりました。そのため、コーヒー豆の「モカ」はエチオピア産が多いのです。
ブラジル・グアテマラ産
多くの人が真っ先にイメージするような、最もオーソドックスで親しみ深い味です。コーヒーらしい苦みと香ばしさのバランスがよく、私の店でも人気があります。飲みやすいため、初めてシングルオリジンを購入する方におすすめです。
ルワンダ産
独特なハーブのような香りがします。私は最初、今まで嗅いだことがないような匂いだったので、このコーヒーが苦手でした。しかし、慣れればクセになるコーヒーでもあり、今では田舎道を散歩中に青々とした草の香りがすると、ルワンダのコーヒーを思い出してしまうほど好きになりました。
インドネシア産
「マンデリン」という名で親しまれています。どっしりとしたコクを感じ、重厚感があるコーヒーと言えるでしょう。
タンザニア産
タンザニア産で名高い「キリマンジャロ」は、柑橘系のスッキリとした酸味が感じられるコーヒーです。ストレートで飲みたいときや、さわやかな朝にもマッチします。
購入する際のポイント2:精製方法をチェック
コーヒーの実の中にあるコーヒー豆を取り出す作業を「精製」といいます。先程は産地について触れましたが、同じ時期に同じ農園で収穫された豆でも、精製方法によってさらにコーヒーの味が変わるのです。
ナチュラル
天日干しの「ナチュラル」は、コーヒーの甘さが凝縮されているような味わいです。ドライフルーツをイメージしていただくと、分かりやすいかと思います。果実のような後味があり、甘味を感じたい方におすすめです。
ウォッシュド
コーヒー豆を水で洗い流す「ウォッシュド」は、クリーンでスッキリとしています。一番流通している精製方法で、クセがありません。どのコーヒー豆を買うか迷ったときは、こちらを選ぶことをおすすめします。
パルプドナチュラル(ブラジル産)・ハニープロセス(中米産)
ナチュラルとウォッシュドの中間で、ナチュラルよりクセがなく、ウォッシュドより甘さが感じられます。いつもより少し冒険したい方におすすめです。
スマトラ式
インドネシアのスマトラ島で行われている精製方法で、酸味が弱く、コクと独特な香りがあります。私はスマトラのコーヒーが好きでよく飲みますが、最初の半分はストレートで飲むのがおすすめ。カップ半分ほど味わった後にミルクを入れると、またひと味違うスマトラのコーヒーが楽しめます。力強いコーヒーを求めている方にぴったりです
購入する際のポイント3:焙煎度をチェック
精製したコーヒー豆を飲めるようにするには、焙煎が必要です。焙煎度は、浅煎り・中煎り・中深煎り・深煎りの4タイプに分かれています。同じ豆でも焙煎度合いによって味が変わるため、コーヒーを飲むシチュエーションをイメージして焙煎度を選びましょう。
浅煎り
スッキリとした浅煎りは、紅茶のような口当たりが特徴です。明るい柑橘系の酸味を感じられるため、フルーツと合わせるとお互いの良さが引き立ちます。
中煎り
サンドイッチなどの軽食と相性がいいです。強い苦みを感じにくく、食べ物の味を邪魔することなく楽しめます。軽くて飲みやすいため、私はたくさん飲みたいときに中煎りを選択しています。
中深煎り
コーヒーらしいコクと苦みを求めている方に、ぴったりの焙煎です。いろいろなものに合わせやすいため、時間や食べる料理を選びません。ミルクや砂糖を入れて飲んでも、ストレートで飲んでもおいしく味わえます。
深煎り
深煎りは、一言で言うと「濃いコーヒー」です。濃い目のコーヒーが好きな方はもちろん、ミルクで割るカフェオレやアイスコーヒーにも向いています。私のおすすめは、バターをたっぷり使った焼き菓子と一緒に飲むことです。焼き菓子とコーヒー、両方のコクが楽しめます。
購入する際のポイント4:フレーバーをチェック
コーヒーは味はもちろんですが、口に含んだときに感じる香りにもそれぞれの特徴があります。これは「フレーバー」と呼ばれるものです。身近な食べ物で表現されることが多く、店頭のPOPやコーヒーのパッケージなどにも書かれています。
例えば「ナッツ・チョコレート」と書いてあったら、ナッツのような香ばしさとチョコレートのようなほろ苦い味がイメージできます。「ラズベリー・ハニー」であれば、ラズベリーのさわやかな酸味と蜂蜜の柔らかい甘味がイメージできるでしょう。
表記されている食べ物を参考にしながら、自分が飲みたいコーヒーをイメージしてみてください。「スッキリとしたコーヒーが飲みたい場合」は、柑橘系のフレーバーの豆が適しています。反対に「コクのあるコーヒーが飲みたい場合」は、チョコレートや黒糖などのコクのあるフレーバーの豆を選ぶといいでしょう。
香りや味の個性を楽しもう
コーヒーはただ苦いだけではなく、香りや味を楽しむことができる飲み物です。中でも、シングルオリジンは、香りや味の特徴を色濃く感じさせてくれます。この記事を読んで、コーヒーには甘さやおいしい酸味があることを知ってもらえればと思います。
優秀なシングルオリジンは、あなたが飲みたいと思っているコーヒーの味を再現してくれます。私がここで紹介したポイントを参考にしながら、ぜひコーヒー豆の専門店で買ってみてください。シングルオリジンを飲んで、あなたが今まで知らなかったコーヒーの奥深さを感じてもらえたらうれしいです。