草履より痛くない!カジュアル着物を3倍楽しめる「い草サンダル」の魅力

●和装用草履や下駄を履くと、足の裏が痛くなることがある。
●昔の日本人と違い、現代人は硬い地面の上を歩くことが多い。
●草履の台は硬く、地面からの衝撃をやわらげることができない。
●靴と草履では歩き方が異なり、草履を履いたまま靴の歩き方をすると足への負担が増える。
●歩き方を気にして着物が楽しめないのはもったいない。そこで、おすすめなのが歩きやすい「い草サンダル」。
●筆者は、い草サンダルを履き始めてから着物でアクティブに活動している。
●「着物には草履」という固定観念を捨てることで「着物=動きにくい」というイメージから解放された。

小紋・紬・浴衣などのカジュアルな着物(以下、カジュアル着物)を着るとき、皆さんはどのような履物を選んでいますか?着物には草履や下駄を合わせるのが定番ですが、慣れていない人はすぐに歩き疲れてしまうでしょう。昔の日本人が毎日のように履いていた履物は、靴に慣れた現代人にとって「ちょっと難しい履物」になってしまったのです。
しかし、草履をうまく履けないからといって着物を諦めるのは早計です!カジュアル着物をもっと気軽に楽しみたいなら、鼻緒タイプの「い草サンダル」を試さない手はありません。
い草サンダルは草履や下駄よりも履きやすく、大きなポテンシャルを秘めた履物です。今回は、着物歴7年の筆者が“い草サンダルの魅力”をご紹介します。

鼻緒ずれだけじゃない!草履による足トラブルの内容と原因

筆者は、かつてカジュアル着物にウレタン草履や右近下駄(底が平らでゴム・ウレタンが貼られている下駄)を合わせていました。いずれも鼻緒が柔らかいため鼻緒ずれはしなかったものの、長時間歩くと足裏全体がジンジンと痛んだものです。そもそも、草履や下駄を履いたときに足裏が痛むのはなぜでしょうか?

原因1:草履の台が硬い

草履や下駄が当たり前だった頃の日本人は、舗装されていない砂地や土の上を歩いて過ごしていました。
一方、現代の日本人は硬く舗装された地面に足を打ち付けながら歩いています。クッション性の高いスニーカーなどを履くと足への衝撃が吸収・分散されますが、台が硬い草履は靴のように衝撃を吸収できません
近年人気のウレタン草履は軽くて台面(足の裏に当たる部分)が柔らかいものの、靴のように台全体を曲げることは不可能です。足に優しい高機能な草履もありますが、誰もが気軽に買える値段ではありません。

原因2:靴と草履では歩き方が異なる

そもそも、靴と草履では正しい歩き方が異なります。草履に慣れていない人が履くと、歩き方が原因で足のトラブルが起こることもしばしばです。

by pixabay

靴を履くときは後ろ足のつま先(親指)で地面を蹴って重心ごと移動し、前足をかかとから下ろします。これが“健康的な歩き方”といわれていますが、残念ながら着物には似合いません。

by photoAC

草履を履くときは後ろ足に重心を置いたまま前足を踏み出し、足を持ち上げすぎないよう注意しながらつま先からそっと下ろします。前足全体を地面につけた後で重心を前に移し、後ろ足をそっと持ち上げましょう(画像の女性は下駄を履いていますが、基本的な歩き方は草履と同じです)。
歩くときに体が前のめりになると、指の股が鼻緒に強く当たって鼻緒ずれの原因になります。また、草履を地面に引きずることもマナー違反です。2本の指で鼻緒をつまんで、優しく草履を運ぶようなイメージで歩くとよいでしょう

草履を履いて靴の歩き方をすると足の負担が増加

では、草履で靴を履いたときと同じ歩き方をするとどうなるか、見ていきましょう。
まず、つま先で地面を蹴るときに指の付け根が台に押し付けられます

次に、着地するときにかかとが台に強くぶつかります。これらの動作を繰り返すことで、足が疲れてしまうのです。
また、後ろ足を蹴り出すときにかかとが台から離れ、蹴り出した反動で台がかかとにぶつかるため、パタパタと音が出ます。草履によるパタパタ音はあまり上品なものとはいえず、地面の水や泥が跳ねて着物を汚すこともしばしばです。
ある程度履き込んだ草履や下駄をお持ちの方は、台底(歯)を見てみましょう。もし台底の後ろ側(または後ろの歯)が大きくすり減っていれば、正しく歩けていない可能性が高いです。

カジュアル着物を気楽に着たいなら「い草サンダル」がおすすめ

着物の歩き方を美しく見せつつ余計な疲れを溜めたくないなら、正しい草履の歩き方を身につけるのが一番です。とはいえ、歩き方は一朝一夕で変えられるものではなく、所作ばかり気にしているとせっかくの着物を楽しめなくなってしまいます

by pixabay

そこでおすすめしたいのが、鼻緒タイプの「い草サンダル」です。い草サンダルは、草履や下駄にはないさまざまなメリットを持っています。

メリット1:歩きやすくて痛くない

い草サンダルは全体が柔らかい素材でできており、歩行時によくしなって地面からの衝撃を吸収・分散してくれます。そのため、草履や下駄に慣れていない人でも快適に歩けるでしょう。

メリット2:表面がサラッとしている

い草サンダルの表面に張られている畳表は吸湿性が高く、裸足でも汗のべたつきがほとんど気になりません。高温多湿の日本の夏には、まさにうってつけの履物といえます。こまめに陰干しして湿気を飛ばせば、より長く使い続けられるでしょう。

メリット3:安くてデザインが豊富

い草サンダルは草履より価格が安めで、鼻緒のデザインも豊富です。おしゃれにこだわりがある方は、柄足袋やペディキュアの色に合わせて使い分けてもいいですね。
背を高く見せたい方や着物への泥はねが気になる方には、底が厚めのものがおすすめです。底が厚い履物を履くことで着物の裾が地面から離れ、わずかながら泥はねのリスクが下がります。

メリット4:浴衣や洋装にも合わせやすい

カジュアル着物だけでなく浴衣・デニム・エスニックスタイルなどに合わせやすいことも、い草サンダルの大きなメリットです。日常的にい草サンダルを履くことで、足指の筋肉も自然に鍛えられます。

い草サンダルを知る前と後で、筆者はアクティブに変わった

休日などにカジュアル着物を着始めてから7年ほど経ちますが、着始めたばかりの頃(い草サンダルを知る前)は「着物でのお出かけ=周囲にエスコートしてもらうもの」と無意識のうちに思っていました。実際に、着物で外出すると丁寧に接客してもらえることが多いです。
しかし、現在はそうした意識が薄れ、着物でも洋装時と同じくらいアクティブに動くことがほとんどです。その理由には、所作のコツを知ったことや子どもの世話で自ら動かざるを得なくなったことに加え、「着物=草履・下駄」という固定観念を捨ててい草サンダルを愛用し始めたことも大きく影響しています。

足元から快適さを追求すれば、着物はもっと身近なファッションになる

「着物を着るなら所作も美しく」という意見もありますが、マナーや立ち居振る舞いばかりを気にしてカジュアル着物を敬遠するのは、もったいないことです。かつての日本人は毎日着物を着ていたのですから、現代の着物がもっと身近でアクティブなものであってもいいと筆者は考えています。
ただ、現代日本の生活習慣・環境がかつての日本のそれと大きく異なることも事実です。現代人が無理なく着物を楽しむためには、伝統を大事にしつつ、現代に合う利便性や快適さを追求することが欠かせません。
伝統的要素(畳表・鼻緒)と現代的要素(硬い地面でも痛くない・気軽に買える価格)をあわせ持つい草サンダルは、現代のカジュアル着物にぴったりのアイテムです。着物+い草サンダルスタイルで気楽に過ごすことで、「着物=動きにくい、堅苦しい」というイメージが大きく変わるでしょう。

この記事を書いた人

草履より痛くない!カジュアル着物を3倍楽しめる「い草サンダル」の魅力

アキオカ アヤカ

ライター

京都市出身。

家族の転勤と自身の出産を機に、オフィスワーカー→在宅ライターに転身。
さまざまなテーマの記事を執筆してきたが、特に国内旅行・妊娠/出産/育児・和装・グルメ系を得意とする。
2020年に料理ブログ「アキオカ家のトラベルごはん」を始め、国内外各地の料理や古い文献に登場する料理などを再現して楽しんでいる。

※ブログURL→https://komonjocooking.hatenablog.com/

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