現代アートの先駆者マルセル・デュシャンから学ぶ「常識」をぶち破る力

●現代アートの先駆者マルセル・デュシャンは、それまでの芸術の概念をくつがえすような作品を発表し、アートの世界に大きな影響を与え続けている。
●彼の作品や行動を分析すると、「常識を打破する力」「自己プロデュース力」「他者を巻き込む力」が突出していることが分かる。
●上の3つの力は、アップルの創始者「スティーブ・ジョブズ」やマルチタレント「西野亮廣」にも共通しているものであり、アートだけではなくあらゆる分野で成功するために必須な力である。

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激動を迎えるこれからの時代、「新しいものを生み出せるかどうか」はビジネスで成功するために必要な力である。

アートの世界で、これまでの芸術に疑問を呈し、芸術の新たな概念をつくったことで現代アートの先駆けとなった「マルセル・デュシャン」という人物がいる。彼の偉業は、これからのビジネスで生き残るために必要なことを体現しているのではないだろうか。

この記事では、大学時代マルセル・デュシャンの研究を行っていた私が、デュシャンの偉業を現代のビジネスにリンクさせながら分析をしていく。アートとビジネスを接続させて考察していくことで、今までアートと接する機会が少ない読者の方にも、興味を持ってもらうきっかけになればと思う。

マルセル・デュシャンとは

マルセル・デュシャンは、フランス生まれの芸術家である。ニューヨーク・ダダにも加わり、アメリカで主に活動した。

芸術作品とは、一般に「美しく」、そして何より作家自らが創作した「オリジナル」のものであることがそれまで常識だった。彼はその常識を覆すような作品を制作し、世の中を驚かせた。代表作のひとつに、『泉』という作品がある。これは、既製品の男性用小便器に「R.Mutt」と署名だけしたものである。美しくなく、また自身で作成していない作品は物議を醸しだした。『モナ・リザ』に髭を付け足して発表した、『L.H.O.O.Q』も有名な作品のひとつだ。

このような既製品を使った彼の作品シリーズは、「レディ・メイドシリーズ」と呼ばれている。レディ・メイドシリーズは、これまでの芸術の概念に疑問を呈し、その概念を覆すものであった。そして、現在に至るまでアートシーンに大きな影響を与え続けている。

レディ・メイドシリーズからみる、成功するための3つのポイント

レディ・メイドシリーズが世の中に大きなインパクトを与えた要因として、下記の3点が挙げられるように思う。これから、そのポイントを紹介していく。

「常識を打破する力」

レディ・メイドシリーズが、これほどに影響を与えている要因として一番大きいのが、「常識を打破する力」である。デュシャンは、これまでの芸術の在り方について疑問を持ち、自問自答を繰り返していた。その疑問の答えとして、レディ・メイドというまったく新しいアートの形を提示したのである。

このように既存のものに疑問を持ち、新しいものを生み出す力というのは、あらゆる場面で必要な力であると考えられる。

「自己プロデュース力」

レディ・メイドが当時どんなに新しいものだったとしても、ただ展示するだけでは「何これ?」で終わってしまっていただろう。レディ・メイドシリーズが有名になったのは、デュシャン自身が世間に対して適切にアピールをしたためである。

『泉』は、ニューヨークの独立美術家協会が主催する公募展に出品された。本来は出品したものは無審査で展示されるのだが、出品拒否となってしまった。その後、新聞に作品が出品拒否されたことに対する抗議文を掲載、さらに雑誌にレディ・メイドに関する声明を書いた記事を載せる。自らの手でスキャンダルを巻き起こし、作品を一躍有名にしたのである。新しいものというのは、ほとんどの場合、最初は受け入れられにくい。デュシャンのようなプロデュース力があって、初めて世の中に影響を与えることができるのである。

「他者を巻き込む力」

レディ・メイドは、作品自体で完結していない。観る者に「芸術とは何か?」という問いを投げかけて、観客は作品を観てその問いに答える。つまり、観客はレディ・メイドという作品に「参加」しているのだ。そして観客同士で、自分が参加したアートに関して意見をぶつけ合うという行動を通じ、さらに『泉』は存在を強めていく。

人は、自分が関わったものに関しては、より関心が深くまた興味を持つ生きものだ。このような「他者を巻き込む力」は、デュシャンが現代アートの先駆者としてアートの世界に革命をもたらした大きな要因であると考えられる。

3つの力を活用し、別ジャンルで活躍している著名人の例

上記で紹介した3つの力は、アートの世界だけではなく、多ジャンルで活躍する上でも非常に大切な力ではないだろうか。他のジャンルで成功している人の例を見ていきたいと思う。

Appleの創始者「スティーブ・ジョブズ」

ビジネス界で最も成功した人物のひとりである、「スティーブ・ジョブズ」を例に挙げよう。彼はアップル社の創業者で元CEOである。彼がつくったiPhoneやiPadは、確実に私たちの生活を変えた。スマートフォンのように持ち運べて、かつ何でもできるような製品は考えられなかった。このように、ジョブズは新しい価値を生み出し、世の中に送り出したのである。

また、ジョブズはプレゼン能力が大変優れていたことでも有名だ。新しい製品の発売が決定する度に、熱を込めてプレゼンを行った。彼のシンプルでかつ情熱的なプレゼンテーションに、人は引き込まれていったのである。

このように、ジョブズには自分や自分の製品をアピールする力があった。彼のプレゼン能力によって、多くの消費者や、ビジネスを行う上で多くの協力者が彼の熱意に巻き込まれていったのである。その結果、彼は大きな成功をつかむことができたのではないだろうか。

マルチタレント「西野亮廣」

ビジネス書を出版したり、アートの世界でも活躍したりと、お笑い芸人としてはかなり異彩を放っている西野亮廣も成功者のひとりといえる。彼は、お笑い芸人が当たり前にやっている「ひな壇」を捨てた。その代わりに、アートやイベント運営、また一人でのショーなど幅広く活躍の場を広げている。このように、彼の存在や行動自体が、これまでの日本のお笑い界における「常識」を打破したのである。

また、彼は自己プロデュース力に長けている。クラウドファンディングを行う際など、普通にSNSで呼びかけるのではなく、彼の場合は自分をツイートしている人に対して個人個人に呼びかける。「会いに来る芸人」状態である。

これは彼の自己プロデュース力の一例であるが、自分を魅せ、人にアピールする力があるように思われる。また、多くの人が彼の行動に巻き込まれていく。例えば、ハロウィンの際、大量のゴミが発生してしまうことが社会問題となったとき、彼は逆にそれを利用した。ハロウィンの翌朝、コスプレをしてゴミ拾いを行い、そのゴミを使ってみんなでアートをつくるというイベントを企画した。たくさんの参加者が集まり、結果として渋谷の街はハロウィンの翌朝ゴミひとつない綺麗な街になった。

このように、マルセル・デュシャンの「常識を打破し新しいものをつくる力」「自己プロデュース力」「他者を巻き込む力」は、アートの世界だけではなく、他方面で活躍する上でも共通している力である。

アートとビジネスは実は共通点がたくさん!

現代アートの先駆者、マルセル・デュシャンの功績を振り返ると、彼は「常識を打破する力」「自己プロデュース能力」「他者を巻き込む力」に長けているように思われる。

これらの力は、多ジャンルで活躍する有名人の例を見ても共通するものであり、あらゆる分野で成功するために重要な力であると考えられる。個人としてしっかり立っていくことが求められるこれからの時代、これらの力はますます重要になってくるだろう。

また、一見ビジネスとは無縁そうな芸術分野においても、実はビジネスと共通する部分も多くある。アートにはあまり興味がないという読者も、一度美術館などアートに触れられる場所にぜひ足を運んでほしい。もしかしたら、現在取り組んでいる問題を解決に導くためのヒントになるかもしれない。

参考文献

西野亮廣、2016、『魔法のコンパス 道なき道の歩き方』、株式会社 主婦と生活社
筧菜奈子、2016、『めくるめく現代アート イラストで楽しむ世界の作家とキーワード』、株式会社フィルムアート社
小崎哲哉、2018、『現代アートとは何か』、株式会社河出書房新社

この記事を書いた人

現代アートの先駆者マルセル・デュシャンから学ぶ「常識」をぶち破る力

まりか

ライター

茨城県出身、名古屋在住。
現在美容メーカーに勤務中。学生時代、サークル活動でアートの記事を中心にいくつか記事を書いていました。現在は、ライターの仕事もはじめ、ジャンル問わず記事の作成をしています。
お酒とコーヒー、美術館巡りが大好きです。

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