みなさんは、浄水器を正しく使えていますか?
浄水器は、適当に水道水を流しておけば、水がきれいになるというものではありません。正しい認識を持って、正しい使い方をしないと逆効果になる場合もあります。しかし、浄水器で水がきれいになっているかどうかを、一般家庭で確認する方法はないのです。もしかしたら、あなたも水がきれいになっていると勘違いしたまま、間違った使い方を続けてしまっているかも。
浄水器は、決して安い買い物ではありません。せっかく使っているのなら、正しい認識を持って、上手に使いこなしてもらいたい。そんな気持ちを込めて、元浄水器メーカー開発者の私が浄水器の正しい使い方について解説していきます。
「浄水器の性能を正しく理解すること」が正しい使い方への第一歩
浄水器の性能を知るならカートリッジの性能を理解すべし
「浄水器の性能」とは、すなわち「浄水カートリッジの性能」のことです。しかし、カートリッジの種類が多すぎて、性能を理解しようにもよく分からないと思われるかもしれません。
カートリッジの性能表示は、「家庭用品品質表示法」によって表記する項目が決まっています。つまり、品質表示の各項目を正確に理解しておけば、浄水器の性能や良し悪しを判断することができるのです。どのような種類で、どのようなメーカーのカートリッジであろうと、表記項目が同じなので問題ありません。
品質表示の用語解説
・ろ材の種類
ろ材とは、ろ過の機能を持つカートリッジの主材料です。基本的には「活性炭」が使われており、活性炭は残留塩素などを吸着することで取り除きます。この項目に「中空糸膜」が含まれている場合は、濁りや鉄サビなどミクロの汚れを取り除くことができます。
・ろ過流量
ある一定の水圧をかけたときに流れる浄水の水量のことです。この数値が高いと、浄水器を使用したときの水の勢いが強くなります。逆に、浄水器を使用するときに水の勢いが弱いと感じる場合は、この数値が高いカートリッジに変更すると良いでしょう。
・使用可能な最小動水圧
浄水器を支障なく使用するために必要な水圧のことです。一般家庭で使用する場合は、特に気にする必要はありません。
・総ろ過水量
カートリッジ性能を担保できる総水量のことです。カートリッジの寿命は、この数値をもとに計算されています。
(例:総ろ過水量1,200Lのとき1日の水使用量を10Lとすると、1,200÷10=120日≒4カ月が取り換え目安)
・除去率
担保している除去率のことです。カートリッジの性能テストでは、基本的に対象物質を80%以上除去できていればOKとなります。そのため、80%と記載されていることがほとんどです。
浄水の性能に関する勘違いしやすい落とし穴
【1】対象物質を100%取り除くわけではない
カートリッジは対象物質を100%取り除くわけではありません。カートリッジの性能テストでは、対象物質を80%以上除去できていれば基本的にOKとなります。ただし、性能テストの条件は厳しく設定されていますので、実際は100%近く除去できていることが多いです。しかし、カートリッジの性能を過信しないようにしてください。
【2】勢いよく水を出しすぎると性能が落ちる可能性がある
浄水器は、水の流量が「ろ過流量に記載してある数値」以下の場合のみ、性能を担保しています(例えば、ろ過流量に2.0L/分と記載があれば、2.0L/分以下の流量で使用しないと性能を十分に発揮しません)。つまり、勢いよく水を出しすぎると、しっかりと除去できていない可能性があるのです。
【3】カートリッジには適した水温がある
カートリッジの性能や寿命は、水温に大きな影響を受けます。使用可能水温が記載してある場合もありますが、記載がない製品も多いです。記載がない場合は、常温(5℃~35℃)での使用をおすすめします。
【4】取り換え時期を超えると様々なデメリットが生じる
除去物質によって除去率が徐々に落ちていくものと、ある一定ラインを超えると急激に低下するものがあります。そのため、取り換え時期の目安を超えて使用する場合は注意が必要です。ほとんど意味を成さないばかりか、菌繁殖の温床となる危険性もあります。
“どんなときでも浄水”はNG!浄水器の上手な使い分け
浄水器があるからといって、浄水ばかりを使うのはよくありません。浄水のメリットとデメリットをしっかり理解して、水道水と浄水をうまく使い分けることが大切です。
浄水器の良さが生きる4つの使用シーン
・水を飲む/お茶を沸かす
これは言うまでもないと思います。そのまま飲むより安全で、カルキ臭を軽減することができます。
・野菜を洗う
水道水に含まれる残留塩素は、野菜のビタミンを壊してしまいます。浄水を使用して、野菜本来の栄養素を守りましょう。
・お米を研ぐ/お米を炊く
水道水中の物質が、雑味や不快な匂いの原因となる可能性があります。また、水道水はお米のビタミンも壊してしまうので、浄水の使用がおすすめです。
・お湯を沸かす
水道水の沸騰時間が十分ではない場合、発がん性物質であるトリハロメタン濃度が上昇することが分かっています。そのため、水道水であれば10分以上沸騰させることが必要です。一方、浄水の場合はその必要はありません。
すぐに飲まない場合は浄水を使ってはダメ!
浄水は残留塩素を除去しているため、菌が繁殖する危険性があります。そのため、長期保存には向きません。氷やお茶を1日以上保存する場合は、浄水の使用は避けましょう。
浄水器の間違った使い方
【1】浄水だけを使う
せっかく浄水器があるのだからと、浄水ばかりを使うのはダメです。カートリッジ性能は、使えば使うほど低下します。必要ないときは使用しないようにしましょう。また、浄水は塩素を取り除いているので、水の通り道に菌が繁殖しやすくなります。定期的に塩素が含まれる水道水を流して、水の通り道を殺菌することが大切です。
【2】交換目安の時期を過ぎても使用している
取り換え目安を過ぎても「ないよりはマシ」と使い続けてはいないでしょうか。新しいカートリッジを買う予定がない場合でも、取り出しておくことをおすすめします。そのまま使い続けた場合、浄水器としての機能を果たさないだけでなく、菌が繁殖する温床となる可能性があるのです。
【3】捨て水をしない
長時間(1日以上)使用していなかった場合は、菌が繁殖している可能性があります。カートリッジは皆さんが思う以上に菌が繁殖しやすいのです。そのため、30秒から1分間くらい浄水を流しっぱなしにしましょう。
浄水器は「正しく」「上手に」活用しよう
あなたは正しく使えていましたか?もし勘違いをしたまま使っていたとしたら、この機会に正しい使い方を覚えて、うまく使いこなしてください。
野菜を洗うときやお米を研ぐとき、きれいな水を気兼ねなく使えるところが浄水器のいいところです。そして、飲料水を買うのと比較しても、コストパフォーマンスが高いというメリットもあります。
使いこなせばとても便利な浄水器と上手に付き合ってもらえると、元開発者としてもうれしいです。