映画ファン必見。『スター・ウォーズ』が映画界にもたらした3つの偉業

●偉業その1:スター・ウォーズ制作のために造られたスタジオ「ILM」が、映像の常識を変えた。
●偉業その2:ルーカスフィルムの1部門である「スカイウォーカー・サウンド」は、今なお音響スタジオの名門として影響力を持っている。
●偉業その3:「三部作」という続編を前提にした映画づくりは、そもそもスター・ウォーズが元祖!
●これらの背景を知ることによって、スター・ウォーズがより好きになり、作品を見返したときの喜びも大きくなるはず!

『スター・ウォーズ』が映画界に与えた影響は計り知れない。大迫力の戦闘シーン、深みのある物語、魅力的な登場人物。それらの要素が複雑に絡み合うことで、世代や性別を超えて愛されるシリーズができあがった。

今回はそんなスター・ウォーズが「映像」「音響」「ものづくりの精神」という3つの分野で成し遂げた偉業を紹介しようと思う。

その前にまず、スター・ウォーズという作品のスゴさを解説させてほしい。

1977年に公開された第1作は、たちまち人々を熱狂させた。アメリカ本国では映画館に長蛇の列ができ、クリスマスにはスター・ウォーズのおもちゃをねだる子どもが続出したという。

その後もスター・ウォーズの勢いは止まらない。1999年からは旧三部作の前日譚となる新三部作がスタートし、公式ファンイベントも発足。ルーカスの手を離れたものの、2015年からはまた新しい三部作が制作されている。スター・ウォーズは公開後40年を経てもなお、人々を夢中にさせるだけの熱量を持つ、素晴らしいコンテンツなのだ。

偉業その1:宇宙戦争をスクリーンに再現した映像スタジオ「ILM」を世に送り出す

1970年代、SFというジャンルは低俗なもの、あるいは難解なものとして捉えられていた。当然、宇宙の戦争モノに資金を出す製作会社はどこにもなかった。

ルーカスはなんとか20世紀フォックスと契約を結んだのはいいものの、宇宙での戦闘シーンを再現できるスタジオなどどこにもない。そこで自ら「ILM(インダストリアル・ライト&マジック)」という映像スタジオを立ち上げた。

ILMはロサンゼルス郊外の倉庫でひっそりと発足した。技術者は皆若かったし、未知の映像をつくり出す作業は困難の連続だった。まさに「魔法(マジック)のような映像を作る」という途方もない目標のために、皆が創意工夫したわけだ。

その努力が実って、誰も見たことがなかった壮大なスペース・オペラの、記念すべき第1作が完成した。その映像は観客たちの度肝を抜き、子ども心を抜群にくすぐった。たちまちスター・ウォーズは、映画界を牽引する存在になったのである。

その後のILMの活動は、スター・ウォーズの枠に収まらないものになる。『ジュラシック・パーク』の恐竜や『ターミネーター2』の液状のサイボーグをスクリーン上に登場させたのもILMだし、Pixarの元となったのはILMの1部門なのだ。

つまり、ILMがなければ存在しなかった作品もあるということだ。そういう意味でも、映画界におけるスター・ウォーズの存在意義は大きいのである。

偉業その2:名門音響スタジオ「スカイウォーカー・サウンド」を創設

ルーカスは自らが望む映画づくりのために、1971年「ルーカスフィルム」を設立。その1部門として特に大きな影響力を持つのが「スカイウォーカー・サウンド」だ。

映画をよりリアルなものにするには、環境音を含めた音づくりが何より大切になる。ライトセイバーの独特の起動音を思い出してほしい。X-ウイングやTIEファイターが旋回するときの轟音も、ベイダーの呼吸音も、スター・ウォーズの世界はユニークな音であふれている。それを陰ながら支えてきたのが、スカイウォーカー・サウンドなのである。

スカイウォーカー・サウンドは、スター・ウォーズで得たノウハウを活かし『インディ・ジョーンズ』『ジュラシック・パーク』『トイ・ストーリー』などの音響を手がけてきた。あの名作映画の臨場感を出すのに一役買っているわけだ。

そのおかげか、スカイウォーカー・サウンドはアカデミー賞の音響賞で輝かしい受賞歴を誇る。親会社のルーカスフィルムが2012年にディズニーの傘下に入ったことで、これからさらに多くの映画の「音づくり」に貢献してくれるだろう。

偉業その3:映画界に「三部作」という概念を定着させる

「三部作」という概念は、今では当たり前のものになっている。しかし、そういった続編を意識した映画づくりの元祖はスター・ウォーズなのだ。ルーカスは企画段階から物語を9部構成にする予定だった。彼の頭の中にあるイメージは、1本の映画には収まりきらなかったのだ。

とはいえ、三部作という映画づくりが定着していない当時、露骨に続編を匂わすような演出はできない。『エピソード4 新たなる希望』を見直してもらえればわかると思うが、映画がそのまま終わっても不自然にならないように物語が展開している。

1作目のヒットを受け、ルーカスは続く『帝国の逆襲』『ジェダイの帰還』という2本の続編を作った。そして、できあがった3本の映画に『エピソード4』『エピソード5』『エピソード6』というサブタイトルをつけた。その後も続編・スピンオフ作品は作り続けられ、2019年現在、10本ものスター・ウォーズ映画が世に送り出された。

3本の映画をワンセットにすることで、物語に奥行きが出て、世界観も広がる。特に、スター・ウォーズは広大な銀河を舞台にした、アドベンチャー映画である。新作が公開されるたびに「今度はどんな星が登場して、どんなクリーチャーと出会えるのか」とワクワクしている人も少なくないと思う。

いち映画ファンとして、当時の常識を破り、スター・ウォーズに三部作という概念を持ち込んでくれたルーカスに感謝したい。

知れば知るほど奥が深い、スター・ウォーズの世界

もしあなたがこの映画を見直すことがあれば、作り込まれた「映像」に、あふれる「音」に、「物語」の機微に気を配ってみてほしい。ほんの少し注意してみるだけでも、そこにはきっと新しい発見があると思う。そして、それらの背後には、作り手たちの偉大な挑戦があったことを思い出してほしい。

この記事で紹介できたのは、スター・ウォーズの偉業のほんの一部に過ぎない。戦闘機の動き、ライトセイバーの誕生秘話、クリーチャーの造形に至るまで、この作品ができるまでの制作サイドの工夫は数限りない。この記事が従来のファンには新しい楽しみ方を提供し、まだこの映画を見ていない人には、作品に興味を持つきっかけになればいいと思う。

そして、スター・ウォーズの世界観は映画に止まらず、グッズ展開、テーマパークの開設などにまで至っている。その世界はまさに銀河のように、今なお広がり続けているのである。

この記事を書いた人

映画ファン必見。『スター・ウォーズ』が映画界にもたらした3つの偉業

永坂 泰一

ライター

神奈川県出身、東京都在住。
ひょんなことからフリーとしての活動を始めることになりました。趣味は映画鑑賞・読書・ボードゲーム・ボクシング・徒歩旅行etc…。美大を目指して浪人した後、靴の専門学校に通ったうえ、アパレルの販売員を経た「なんでもアリ」な経験値がウリです。

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