空くん：ねえお父さん、「死ぬ」ってどういうことなの？
お父さん：生きていた人や動物が、息をしなくなって、動かなくなる。そして、もう生き返らないのが死ぬということだよ。胸に手を当ててごらん。「ドクン、ドクン」と動いているものがあるだろう？
心臓だよね！そう、心臓。人間や動物にはみんな心臓があって、血液を体中に送り出しているんだ。全身をめぐる血液は、人が生きていくための栄養を運んだり、逆に体の中のいらないものを外に出したりするための働きをしてるんだよ。心臓が止まると、血液の流れも止まってしまうから、体が動かなくなる。死んだ人の体はとっても冷たいのは、体中をめぐっていた血液の流れが止まって、熱を生み出すことができなくなるからなんだ。どうして人は死ぬの？それにはいろんな理由があって、ケガや病気の場合もあるし、歳をとって身体の機能が弱くなって死んでしまうこともある。命には終わりがあってね、どんな人でも動物でも、ずっと生き続けるということはできないんだ。
ずっと生きることはできないの？それは、できないんだよ。どうして命に終わりが来るのかは、まだよく分からないことも多いんだけど、人の場合で言えば、体を作っている細胞っていうのがあって、その働きと関係があるみたいだよ。37兆2000億個っていう沢山の細胞が人間の体にはあるんだけど、それぞれの細胞は生まれたときから寿命が決まっているようだね。生まれたときから死ぬって決まっているの？そうなんだ。それは細胞が分裂して新しく生まれ変わる回数だったり、新しい細胞が生まれてくるために死ぬことを選ぶ細胞があったりするからなんだ。
このことは「遺伝子」というものと関係してるんだよ。
遺伝子って何？簡単に言うと、体を作るための設計図みたいなものだよ。空くんには、お父さんの遺伝子が半分、お母さんの遺伝子が半分入ってるの。だから、お父さんやお母さんと、目の形が似てたり、髪の毛が似てたりするんだよ。遺伝子って、すごいね！そうだね。遺伝子は親から子供へ受け継がれるんだけど、どうして受け継がれるかというと、その遺伝子を未来に残したいからなんだ。細胞には遺伝子の情報を記録している「DNA」というものがあってね。そのDNAが何かの拍子に突然変異することで、新しい遺伝子が生まれて、生物はいろんな進化をしてきたんだ。実は、地球に生き物が誕生してから約20億年っていうとんでもなく昔の時代は、生物は死ななかったんだよ。
え？はじめは死ななかったのに、死ぬようになったの？そうなんだ。びっくりだよね。その理由は、生命が誕生したばかりの頃は、とにかく分裂して、増やすことが大事だったからなんだ。でも、突然変異で異なる細胞が生まれると、優秀な方を残した方が有利だから、いつの間にか、細胞の中には、決められた分裂の回数で死ぬようになっていったものが出てきたんだよ。なんかよく分からないね。バカだと死んじゃうの？ううん。単純に頭が良い、悪いというわけではないんだ。全体の中で一番良い影響がありそうなものを残そうとして、他の細胞が譲っていった感じだね。細胞って色々考えてるんだね〜。病気になっちゃう細胞もあるのかな？あるよ。その代表的なのが「ガン細胞」というものだね。ガンって聞いたことあるよ！ガン細胞は、遺伝子がいつかは死ぬように決めていたはずの細胞が、死なないで異常に増えてしまう病気になっちゃった細胞なんだ。それとは逆に、死んでほしくない脳細胞が病気になっちゃってどんどん死んでしまうと、お年寄りがなりやすい「アルツハイマー」になってしまう。脳細胞は1度死んじゃうと再生されないから、記憶がなくなったり、判断することができなくなったりするんだ。遺伝子に組み込まれた寿命以外に、細胞の病気もヒトが死ぬことと関係があるんだよ。細胞が病気になっちゃうのはどうしてなの？生活スタイルと深い関係がある場合が一つだね。特に大きいのがストレス。ヒトの体は、お日様がでているときに起きて活動して、夜になると眠るように、自然のリズムがあるんだけど、夜更かしを続けたりすると、ヒトの体はとてもストレスを感じるんだ。もしかしたら、遺伝子からの「危険だよ」っていうお知らせかもしれないね。お父さんも死んじゃう？そうだよ。いつかは死んでしまうね。死んだらもう生き返ることはできないから、とても悲しいけど、地球の長い歴史を考えてみると、たくさんの「死ぬこと」が次の「生きること」を支えてきたんだ。だからね、今生きてることはとっても大切なんだよ。命のある限り精一杯生きていくことは、何十億年も前に生まれて、進化しながらずっと続いてきた生命を受け継ぐことなんだからね。
なんとなく分かってきたよ。ちゃんと生きないといけないね。
