各土地に合った機能と美しさを兼ね備え、日本でも常に高い人気を誇るヨーロッパ雑貨。パリやロンドンのアンティークや、「マリメッコ」などでおなじみのフィンランド・デザインなど、魅力的なものはさまざまにありますが、今回紹介したいのは”東欧(中欧)雑貨”。お店よりリーズナブルな価格で手に入り、ものすごいお宝も潜んでいるかもしれない蚤の市で、東欧雑貨を手に入れてみませんか?東欧を訪れるならぜひ訪れたい、各地の蚤の市をご紹介します。
【1】チェコ:街中にアンティーク・ショップがずらり
まずは、東欧の中でも最もヴィンテージ、アンティークの集う街と呼んでも過言ではない、チェコの首都プラハ。その理由は街を歩けば随所に見つかる、アンティークショップの多さ。そんなプラハで代表的なのが「コルヴェノバ(Kolbenova)」の蚤の市です。観光客から地元客で賑わう一大市で、生活用品からアンティーク品まで数々に集まります。
ゲートで20czkもしくは1ユーロを支払ってから入場。
ここでゲットしたいのが、旧チェコスロバキア時代のヴィンテージ。チェコは1918年から1992年にかけて、隣国スロバキアとひとつの国でした。
現在もチェコのお土産として人気の「ボヘミア・ガラス」は、旧チェコスロバキア時代のものを見つけたらぜひゲットしたいひと品。中でも型にガラスを流し込んでつくる「プレスガラス」という技法で作られた製品は、同じ型でもガラスの厚みが違ったり、歪みがあったりするのも愛らしいポイントです。
ボヘミア・ガラスのクマ。同じ型でもすべて1点もの。
チェコ雑貨は赤、緑、青など、カラフルな色合いのものが多く、かわいらしいのでお土産にも最適。選ぶ時はぜひ「チェコスロバキア」の刻印があるかをチェックしてみて。
【2】ハンガリー:実は中欧最大の蚤の市!?
ヴィンテージを求めるならチェコと思いきや、実は”中欧最大”との呼び声の高いのが、ハンガリーのブダペストにある蚤の市「エチェリ(Ecseri)」。「なぜ最大?」と疑問に思う人は、世界地図をチェック。西にオーストリア、東にウクライナと四方を囲まれた内陸国であり、過去にはトルコ率いるオスマン帝国の一部でもあったことから、各地のものや文化が集い、入り混じっていることがわかります。
チェコのボヘミア・ガラスでつくられたケースに、どことなくオリエンタルな雰囲気を感じるものまで。
広大な敷地にいくつものテントが並ぶ。
ハンガリー製はもちろん、各地のヴィンテージが集まるエチェリ。「これはどこでつくられたもの?」など、地元の人たちと会話をしながら、買い物をするのも楽しみのひとつ。会場では、おじさんのような顔が描かれたツボを見つけてみて。「ミシュカ」と呼ばれる、ハンガリーの伝統的な陶器だそうです。
蚤の市は毎日開かれていますが、お店が多く開く週末を狙うのがベター。思わずあれもこれも欲しくなってしまうこと請け合いです。
【3】ベルリン(旧東ドイツ):ハイセンスなヴィンテージが集う
第二次世界大戦後からベルリンの壁崩壊まで、西と東に分断していたドイツ。首都であり、当時東ドイツに位置していたベルリンでも、週末は各地で蚤の市が開催されます。中でも最大の盛り上がりを見せるのが「マウアーパーク(Mauerpark)」。その名の通り公園で開かれる蚤の市は、ヴィンテージだけでなく飲食店や、手づくりのプロダクトなども並び、一大イベントのような雰囲気です。
ここで紹介する他の蚤の市と異なるのは、古着の多さ。それもファッショナブルなものが多く、おしゃれな若者たちで溢れかえっています。「日本人と比べサイズが大きいので、ヨーロッパでは服が探しにくい」という人でも、ここだとぴったりなものが見つかるかもしれません。
さらに「GDR」や「DDR」といった刻印がされた製品は、間違いなく東ドイツ産。おしゃれなアイテムからガラクタまで、とにかくなんでも集まるマウアーパークで、お気に入りを見つけてみて。
詰め込まれたダンボールからお宝を探すのも楽しい。
ドイツ産はもちろん、ロシア産や時計のメッカ・スイス産のものも見つかる。
【4】ポーランド:温かみのある雑貨がたくさん!
最後は東にロシア、西にドイツと、ふたつの列強に挟まれ、幾度もの占領時代や国境線の変更を乗り越えてきたポーランド。その歴史背景は、一見すると蚤の市とは関係なさそうですが、実はそうではないのかもしれません。
自動車の上で接客をする売り子さん。人の優しさを感じるのも、街を好きになる理由。
例えばポーランドの西部にあり、第4の都市と呼ばれるブロツワフは、過去はドイツ領だった街。そのためかドイツ製の雑貨がよく見られ、「ローゼン タール(※)の食器はどう?」と声をかけられることもしばしば。
※ローゼン タール……ドイツの老舗陶器メーカー
ハンドペインティングの「ヴウォツワヴェク陶器」。食卓で使ったり、壁にかけたりといろんな用途で楽しめる。
もちろん、ポーランド雑貨もたくさん並びます。特に食器類は、日本でも人気のポーリッシュ・ポタリー「ボレスワヴィエツ」や、手描きの花が目印の「ヴウォツワヴェク陶器」、その他にも飴色の陶器など、ぽってりとしたシルエットと温かみのあるものが多いのが特徴的。どの食卓にも合う素朴さは、どこか日本の民藝を彷彿とさせます。
だから東欧・中欧の蚤の市は面白い!
プラハのアンティークショップで出会った「こぐまのミーシャ」は、ソ連時代につくられたロモノーソフのもの。
これら東欧諸国に共通するのが、国の分断、占領、国境線の変動など、周辺諸国に影響を受けながら、現在の国の姿があるということ。さらに多くの国が第二次世界大戦後、旧ソ連(現ロシア)のもとで社会主義化されていた背景があります。
チェコスロバキアや、東ドイツなど旧国名の刻印は、年代を知る手がかりのひとつ。そうやってものの背景を探ることで、より深く楽しめるのも東欧雑貨の魅力かもしれません。
ちなみに、筆者が蚤の市に行くたびについ買ってしまうのが「USSR」や「CCCP」などの表記がされた旧ソ連時代のロシア雑貨。ソ連雑貨の広がり方も、東欧の国々の姿を知るうえで非常に興味深く思います。
デザインだけでなく、ものの背景も西欧や北欧とも異なる東欧雑貨。蚤の市で現地の人々に触れ、そこに並ぶ雑貨から各国の暮らしや文化までも想像してみてはいかがでしょうか。