保険会社の破綻や持病の取り扱いなど…知らないと損する生命保険の重要知識(保険ライター)

●保険会社、商品の種類、加入経路を問わず、基礎知識が必要な時代になっている。
●約款、注意喚起情報の大切さを確認しよう。原則として、署名・捺印したあとで「知らなかった」は通用しない。
●国内で保険事業を行う生命保険会社は「生命保険契約者保護機構」に加入している。
●引受緩和型商品を選ぶ場合は、始めから引受緩和型と絞るのではなく、自分の健康状態を詳しく伝え、通常の保険商品へ加入できないかを探るようにしよう。
●加入、見直しにあたって避けたいのは「1社だけ」「1度だけ」「1人だけ」で決めること。

生命保険の加入経路は、生命保険会社の営業職員、保険代理店、窓口での販売に加え、インターネットやテレビ・新聞・雑誌を通じた通信販売型での加入など、様々な選択肢から選べるようになりました。最近では、加入の手続きだけではなく、契約者側が加入前に行う情報収集も人を介さないケースもあります。このように、現代では多くの経路がありますが、どのような経路であったとしても、保険は必ず中身を確認しなければなりません。

契約者は、保険契約時に様々な箇所に署名をしたりチェックマークを付けたりします。その中には、保険会社が定款、約款、契約のしおりを使って保険商品について正しく説明を行い、契約者がその内容を理解して同意した旨の署名があります。契約者は契約時に説明を受けて同意したことになるため、原則として後から「知らなかった」「内容が理解できない」と嘆いても遅く……。人を介した加入で巧みな話術で勘違いをしてしまうことや、人を介さない加入で面倒だからと読み飛ばしてしまうことは、とても危険な行為なのです。

パンフレットなどの広告物に記載される内容は、保険内容のほんの一部です。加入前から約款に記載されている内容について詳しく知っておくことが、正しい保険選びへと繋がると言えるでしょう。
当記事では、生命保険会社に10年在籍していた筆者が、契約者から問い合わせを受けたものの中で特に多かったトピックについて解説していきます。

知っておくべき生命保険会社が定めている規程

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加入前にも加入後にも、理解しておくべき内容としては次のようなものがあります。筆者の経験上、契約時にひとつひとつ説明を行っていても理解されにくく、忘れられてしまいがちなものです。同時に、問い合わせが多かったトピックでもあります。

生命保険会社が破綻したらどうなるの?

2017年3月に破産開始決定を受けた「てるみくらぶ」は、その対応が大きく報道されました。保険では被害額が大きく上回ることになりかねません。日本では戦後、日産生命、東邦生命、第百生命、大正生命、千代田生命、協栄生命、東京生命、大和生命生命などが破綻しています。
生命保険会社が破綻した場合に混乱を避けるため、国内で保険事業を行う生命保険会社は生命保険契約者保護機構に加入しています。保護機構の会員会社はこちらの「生命保険契約者保護機構」のページに記載されています。

保険会社が破綻した場合、その保険会社の保険契約は無効にはなりません。保険契約時に決められている「予定利率」が3%を超える商品は省かれますが、それ以外の一般的な保険契約については、契約者保護機構によって、責任準備金とよばれる保険金や給付金の支払いのために保険会社が積み立てていた金額の90%までが補償されます。
その後、救済保険会社とよばれる保険会社か、保護機構が設立する承継保険会社が保険契約を引き継いでくれます。その際に予定利率の見直しなどが行われ、保険の内容などがどのように引き継がれるか決まるのです。

貯蓄性の高い商品ほど損をしてしまうので理不尽にも思えますが、そうではありません。契約が無効となってしまわぬよう、契約者がなるべく損をしないよう保険業法で定められ、保険会社同士がタッグを組んでいる大切な制度なのです。

予定利率が3%を超える商品の契約については、別途規程が定められています。「お宝保険」などと呼ばれ、主な契約者は現在シニア層となっています。現在加入中の保険証券を確認し、予定利率が3%を超えている場合は、生命保険契約者保護機構の「高予定利率契約」についての取り扱い規程を確認しましょう。

※上記の取り扱いに、共済や少額短期保険業、特定保健業者は含まれていません。それらについては、各自で取り扱いが異なるため、加入前や加入後で調べようとしている保険の取り扱いがどこの保険会社であるかの確認が必要です。

持病がある人向けの商品でなくとも加入できる場合はあるの?

様々な媒体で、持病がある人向けの引受緩和型商品の広告が掲載されています。しかし実は、そのように謳っていなくても加入できる商品もあるのです。保険会社の約款に定められている内容には、以下のようなものがあります。

・健康状態の告知などによっては契約する保障内容を削減することがある
・告知された病気や怪我を保障の対象外とすることがある
・保険料を通常より多く支払うことになる場合がある

これらは裏を返せば、持病など何らかの告知がある場合にも加入できることとなります。

筆者は保険契約に際し、告知による決定内容を目にしました。持病の告知によって保険料は通常通りで数年間は死亡保障が削減されたケースや、告知された怪我の治療に対しては保険金はおりないものの、それ以外は通常の加入と同じ扱いとなるケースなど、様々な決定があります。
その決定内容は、どのような病気や怪我であるのかと、現在の治療や服薬がどのような状況であるかによって大きく変わるもの。同時期に保険会社毎で判断が異なることもあれば、同じ保険会社で期間が空くと決定内容が違うケースなどもあります。
実際の契約できる保障は手続き時に告知する内容次第ではありますが、加入前に、健康状態などについて営業職員を通じて保険会社に照会する方法をとる保険会社もあります。

引受緩和型商品を選ぶ場合は、始めから引受緩和型と絞るのではなく、自分の健康状態を詳しく伝え、通常の保険商品へ加入できないかを探ることをおすすめします。保険会社の営業職員や保険代理店など人を介した経路で、保険の取り扱いに慣れた人に担当してもらえば、マニュアル的な対応を避けることができるでしょう。

保険会社の巧妙な言葉に注意

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引受緩和型商品などのように保険会社の広告は、「新しく始まった制度に基づく商品である」と錯覚するようなものがあります。すでに違う保険会社で行われていたことであっても、「保険の新常識」「自分の会社はこんなに新しいことを始めた」「今までとは違う新たな保険」と宣伝される場合があります。

同じ生命保険会社での見直しであれば、消滅してしまう特約や、減ってしまう保険金額などについて説明をする義務がありますが、保険会社を変える場合にはその義務はありません。その保険会社に限った保障内容ではないのに見直しをしてしまう、契約者が気が付いていないのに大幅に保険金額が減っていた、などといったケースも十分にあり得ます。

このような保険会社での違いに惑わされないための方法として、複数の保険会社への相談をおすすめします。説明する人が同じである乗合代理店は、複数取り扱いと謳っていても、その担当者の考え方だけに感化されてしまいがちです。

相談相手はひとつに絞らないように

保険について検討する場合や、加入するにあたって危険なのは「1社だけ」「1度だけ」「1人だけ」で選んでしまうことです。巧妙な言葉や、親身な雰囲気に惑わされてしまいかねないためです。

様々な経路で保険の相談をすることは面倒でしょう。しかし、保険の検討や加入にあたって、最も短時間で最も損をしない方法が複数の経路での相談なのです。情報収集のツールや加入経路などの選択肢が増えても、加入者側がすべきことは変わっていません。その保険の中身を詳しく知り、正しい情報を把握しましょう。

この記事を書いた人

保険会社の破綻や持病の取り扱いなど…知らないと損する生命保険の重要知識(保険ライター)

小城まどか

ライター

九州在住。国内大手生命保険会社にて保険外交員として約10年間在籍。
個人宅・法人・職域への営業活動の中で、生命保険と損害保険の新契約や保全(各種手続き・給付金請求・減額・解約など)をおこなう。
在籍中に取得・合格したものとして一般課程試験・応用課程試験・専門課程試験・ファイナンシャル・プランニング技能検定3級・認知症サポーターなどがある。
転居に伴い退職し2017年3月よりライターとなり開業。「保険に関わる知識を広げたい」「もっと保険のよさを伝えたい」と生命保険・損害保険に対し情熱を持ちライティングにあたる。

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