便通を制する者が健康を制す!インド伝統医療「アーユルヴェーダ」にみる便秘改善法(ヘルスケアライター)

●インドでは便秘への対処法として、伝統医療アーユルヴェーダの生薬トリパラーがよく用いられる。
●アーユルヴェーダとは、局部的疾病の治癒を目的とする西欧医学と異なり、心身と魂の健康を志す生命の科学である。
●トリパラーとは、アーマラキー、ピピータキー、ハリータキーの3つの果実を一組にした製剤であり、インド街中の薬局で安価に手に入れることができる。
●便秘で悩んでいる人には、安くて副作用がなく、自然の力で便通を促す生薬トリパラーがおすすめである。

何かとストレスが多く、生活が不規則になりがちな現代社会では、女性を中心に便秘に悩んでいる人が少なくないと思われます。お通じの調子が良くないと、お腹が重たく感じたり、何となくだるかったり、一日中身体も気持ちもぱっとしませんよね?その一方で、特に女性の場合は、なかなか人に相談しにくい話題でもあったりします。
そこで本稿では、インドで暮らす筆者が出会った伝統医療「アーユルヴェーダ」の便秘改善法について紹介します。

”万病のもと”としての便秘

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”ペート・サーフ・ホー・ガヤー?(お腹はすっきりしたか?)”

インドで暮らし始めてカルチャー・ショックを受けたことのひとつが、折につけ便通についてあけすけに聞かれるということです。たとえば何かの病気で医者にかかると、第一に聞かれるのが便通についてです。周囲との日常会話でも、しばしば今日の便通が話題になったりします。そして「便通がよろしくない」と言うと、あれこれや親切にアドバイスをされます。

こうした便通への多大なる関心には、二つの要因が考えられます。ひとつは、インド特有のケガレ観です。伝統的な暮らしでは、朝、起床後すぐに排泄をし、沐浴して身体を浄めるのが日課です。日本でもよく知られているように、インドでは排泄したらいわゆる手動シャワートイレでお尻をきれいにします。排泄後の状態は、観念的にも衛生的にも「不浄」とみなされるため、身体を洗うのは必須とされます。特に、寺院など聖域とされる場所に滞在することの多かった筆者の場合、周囲の人はよりこれに敏感でした。不浄を避けるために、きちんと排便したか(そしてその後沐浴したか)をやたら聞かれたのだと推測されます。
もうひとつは、インドでは便秘は万病のもとと考えられているためです。便が詰まった状態や消化不良によって、有害なガスや未消化物が体内に蓄積されます。それらは身体のすみずみに行き渡り、胸焼けや頭痛、身体のだるさ、さらには眼病までも引き起こすと信じられています。

このように、便通の良さはきわめて重要なのです。便通を良好に保つために、日々の生活習慣からヨーガの坐法や呼吸法の実践、生薬の摂取など、さまざまな工夫が試みられているのです。

生命の科学「アーユルヴェーダ」

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アーユルヴェーダとは、インド古来より伝わる伝統医療で、心身と魂の健康を志す生命の科学を意味します。その特徴は、局部的疾病の治癒を目的とする西欧医学とは異なり、目に見える症状だけでなく病気の全体を治そうとするホーリスティック医療にあります。
たとえば、目の調子が悪いとしましょう。一般の目医者に行くと、多くの場合は目薬を処方されるか、もしくはメガネやコンタクトレンズの度数の調整をされるでしょう。一方でアーユルヴェーダにおいては、病気の症状だけでなく、その根本原因を突き詰めて、病気の起源部位を含めた全体を治そうとします。アーユルヴェーダの考えでは、視力低下や視力障害の主要な原因とされるのが便秘です。そのため、目薬をさして一時的に痛みを緩和させるだけでなく、便秘を改善することで、痛みの根本を治療しさらに将来の眼病を防ごうとします。

病気の原因や対処法は、個人個人の体質や置かれている環境によっても異なります。アーユルヴェーダでは、ヴァータ(風)、ピッタ(火)、カパ(水)と呼ばれる3つのドーシャ(病素)を基準にして、その人の体質や病状を判断します。同じ病気でも、ドーシャ間のバランスによって、症状や処方がまったく異なってきます。
たとえば、ショーガ、特に乾燥ショーガは便通を良くするとされますが、身体を熱くしすぎるため、カパ体質の人には推奨されるものの、ほかの体質の人にはあまり適切とは言えません。

便通促進!「トリパラー」の力

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上記のとおり、その人固有の病因や体質に注意する必要はありますが、便秘改善法として多くの人々に用いられているのが「トリパラー」と呼ばれる生薬です。
トリパラーとは、アーマラキー、ピピータキー、ハリータキーという名の3つの果実を一組にした製剤です。トリパラーは便通に効くだけでなく、身体を強化し、若さを維持する効果もあるとされています。これはトリパラーだけでなく、アーユルヴェーダの生薬全般に強壮剤の効果があり、西欧医学の薬のような副作用もほとんど認められません。

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インドの街中の薬局では、トリパラーの粉末をプラスチックの小瓶に詰めたものが100g50ルピー(約85円)程度で売られています。安いですね!インド物価で考えてもかなりお手軽です。粉末はくすんだ黄土色です。
服用法について、医学書である『入門アーユルヴェーダ』(※)によれば、コップ一杯の水にスプーン一杯のトリパラーを入れ、翌朝布で漉して、濾液の半分で目を洗い、残り半分に蜂蜜を少々加えて内服するとあります。一般には夕食後か寝る前に、スプーン一杯のトリパラーを水かぬるま湯で飲みます。トリパラーは非常に苦いので、粉末を水に溶かすのではなく、直接口に放り込んで水で流し込んだ方が飲みやすいです。

もともと便秘がちだったうえ、インドの人たちの便通確認に辟易していた筆者も、トリパラーを試してみることにしました。結果、翌朝にはその効果を実感!何より市販の便秘薬のような痛みをまったく感じることなく、自然に便通が促される感じがしました。いったん便通が習慣づけられると、その後次第にトリパラーに頼らなくてもお通じが良くなったので、現在では便通の調子の良くない場合にだけ服用するようにしています。

(※)バグワン・ダス、マンフレッド・ジュニアス. 1990.『入門アーユルヴェーダ』アーユルヴェーダ研究会監修、幡井勉・児玉和夫・高橋澄子・足立卓郎・中川和也訳、平河出版社: pp.101

アーユルヴェーダで健康的な生活を

これまでさまざまな便秘薬を試してきたけれどイマイチ効果がなかったという方には、新たな便秘改善法として、安くて副作用がなく、心身と魂の健康を志すインドのアーユルヴェーダ薬トリパラーがおすすめです。今だとネット通販でも(割高にはなりますが)入手できるようなので、興味のある方は一度お試しになられてはどうでしょうか。
もちろん、トリパラーだけに頼るのではなく、便秘改善のためには日々の生活習慣を見なおすことも大切ですね。アーユルヴェーダでは朝起き抜けにコップ一杯の白湯や水を飲むことが推奨されています。また、ショーガやカレーに用いる一部の香辛料、アロエなどは、消化力を強め便通を促進するとされます。ほかにも、ヨーガの一種であるカパラバティ呼吸法は、消化を良くし便通にも効果があると言われます。ただし、効果のほどには個人差があるので、自分に合うものが見つかれば、日々の生活に取り入れてみても良いかもしれません。

最後に、この記事を読んでくださった方が少しでも便秘改善のヒントを得て、心も身体も魂も軽やかな明日を迎えられますように!

この記事を書いた人

便通を制する者が健康を制す!インド伝統医療「アーユルヴェーダ」にみる便秘改善法(ヘルスケアライター)

阿嘉あかる

ライター

インド在住。ライター歴1年目、新しいことを学ぶのが好きなので、なんでも書いてやろうという意気込みです。専門は宗教・スピリチュアリティ。多数の調査・取材経験有り。書物やネットで得た知識だけでなく、自分の経験にもとづいて文章を書くのがモットーです。

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