女の子の習い事として人気のある「バレエ」。しかし近年、大人からバレエを習い始める人もじわじわ増えている。少数ではあるが男性もエクササイズとしてバレエを取り入れており、姿勢の改善や体幹トレーニングに役立っている。
筆者は25年バレエを続けており、都内スポーツジムやバレエ教室で長年バレエを指導してきた。今回はそんな私が、大人だからこそ多角的に楽しめるバレエの面白さを伝えたい。
スポーツジムで気軽にバレエレッスンを
バレエっていったいどこで習えばいいの?と思われる方も多いだろう。実は、一般的なスポーツジムでも始められる可能性がある。全国展開しているスポーツジムの多くでは、スタジオレッスンとしてバレエクラスが提供されているのだ。
先に述べた通り、私自身も多数の店舗でバレエを教えてきた。個人のバレエ教室にはほぼ100%と言っていいほど大人初心者向けのクラスが設定されているため、門戸は広く開かれていると言えよう。
練習着としてフリフリの舞台衣装を思い浮かべる方も多いだろう。スポーツジムであれば、普段のトレーニングウエアを着用し、専用のバレエシューズだけ用意すればいいところがほとんど。中にはシューズ貸し出しを行っている店舗もある。
男性はピチピチの白タイツに抵抗のある方が多いと思われるが、普段のレッスンでは女性同様普段のトレーニングウエアで全く問題ない。
形から入りたい方は、大人向けに販売されているゆったりしたレオタードや巻きスカートなどもチェックしてみよう。レッスン中のおしゃれも楽しめるはずだ。
インナーマッスルが引きしまる!超ハードなバレエレッスン
正しいバレエの姿勢は普段の生活では使わない筋肉への刺激になるため、しばらく立っているだけで汗が吹き出るほどのトレーニングになる。「体が硬いから……」とバレエを敬遠する方もいるが、実は柔軟性は二の次。バレエの正しい姿勢を保つための筋トレがレッスンの中心である。
例えばこのポーズ、「1番ポジション」を見てみよう。
ただ立っているように見えるが、腹筋背筋をしっかり使って姿勢を起こしている。内腿を引きしめ、土踏まずの筋肉を駆使。手は二の腕でしっかり支え、かつ指先まで神経を通わせる。それでいて「なにも大変ではないですよ」といった表情をすることがとても大切である。1番ポジションはバレエの最も基礎的な立ち方であるが、このポーズを美しく決めるためには何年ものトレーニングが必要になる。
私が子供に教えるときはとにかく自分がお手本になって反復練習をするのだが、大人のクラスでは上記のように言葉でしっかり説明するようにしている。大人から始めるメリットとしては、頭で考えながら動くことができ、子供たちよりも短期間できれいな筋肉が付いてくことが挙げられる。筋トレと同様、使う筋肉を徹底的に意識することによって、ダンサーらしい美しい筋肉が手に入るのだ。
エクササイズには様々な流行りがあるが、バレエは100年以上前から廃れない身体芸術だ。多くのバレリーナたちが探求に探求を重ねてもゴールにたどり着けないと言うほど、奥の深い魅力的なトレーニングなのである。
参考として、以下を見てみよう。イギリス・ロイヤルバレエ団のレッスン風景だ。プロのダンサーも初心者も、難易度に差はあれどレッスンメニューは同じ。団員たちの尋常ではない汗の量は必見だ。
大人バレエの醍醐味!おしゃれをして優雅に観劇という楽しみ方
トレーニングを始めたら、プロの舞台をぜひ一度観ていただきたい。3大バレエと呼ばれている『白鳥の湖』『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』は押さえておきたい。他にも幕ものであれば『ドンキホーテ』、または有名なバレエダンサーが一堂に会して上演するガラコンサート(小品集)なども、観劇初心者の方にはおすすめだ。
チケットは5,000円から13,000円ほどが一般的だが、上記の小品集などはこれより高額になることもある。決して安くはないが、自身のトレーニングの一環として、また大人のたしなみとしても一度は観劇してみる価値はある。
観劇の際は、結婚式2次会程度の身だしなみが好ましい。劇場に行くと、着物の女性やダンディな着こなしが素敵なおじさまが目にとまる。ぜひおしゃれも楽しんでバレエ観劇を楽しんでいただきたい。
バレエに年齢性別は関係ない!
以前私の担当したクラスに、74歳のご夫婦が参加されていた。70歳から2人でバレエを始め、目下の目標は「妻を回すこと!」。お二人ともとてもお元気で、4年かけて柔軟性も向上し日常生活の中で怪我をすることも減ったそうだ。バレエに限らず、新しいことを始めるのに「遅い」ことなんてないと、このご夫婦から学んだ。
「バレエなんて自分の人生とは関係ない」と思っていたあなた。実はすぐそばでバレエへの戸口は開いているのだ。自分が踊って楽しみ、音楽を聴き、観ても楽しめる。年齢も性別も気にせず、今の自分にあったバレエの楽しみ方をぜひ見つけていただきたい。