【あらすじ】
主人公の小野みさきは、24歳のライター。社会人2年目の彼女は最近多くの仕事を任されるようになり、順風満帆……と思いきや、実はそうではない様子。その原因は、彼女の家族にあるようです。
一見すると、ただ厳しだけのように見えるみさきの親。それに対して友人の荻原カナは、「毒親」という存在に関する指摘をします。続けてカナは、「アダルトチルドレン」という存在についても言及します。
カナのすすめに従い、みさきは親から距離を置くことを決意します。その結果みさきは仕事に打ち込めるようになり、自分の生きづらさとも上手く付き合っていく工夫ができるようになりました。みさきはカナに感謝しつつ、自分の経験を記事にすることを決めます。
私の親って「毒親」なの……?
「毒親」とは、アメリカの精神学者スーザン・フォワードが書いた『毒になる親』という本から来ており、”子どもにとって害となる親”を指す言葉です。ここで言う害には、虐待などといった身体的・精神的なものはもちろん、支配的な行為、過干渉なども含みます。
みさきの例を見てみると、「仕事があるにもかかわらず厳しい門限を設定する」、「門限を破った場合、ビンタやお小遣い没収、食事抜きなどの罰がある」、「夫婦喧嘩の仲裁をさせる」といった実害を与えています。
また、みさきは「私がいないと~」と発言していますが、これは毒親などがいる「機能不全家庭(家族としての機能を十分に果たせていない家庭)」によく見られる共依存の関係でもあります。つまりみさきは、家族に貢献することによって自分の存在意義を見出そうとしており、また家族に必要とされることで自分の価値を感じているのです。
もしかして私、アダルトチルドレンかも……
確かに……。カナの話聞くと、うちの親って「毒親」かもしれない。
うん。それにね、みさきは「アダルトチルドレン」っぽいところがあると思うよ。
アダルトチルドレンってなに?
アダルトチルドレンとは、機能不全家庭で育った18歳以上の人のことを言います。元々はアルコール依存症の患者がいる家庭に育った18歳以上の子どものことを指しましたが、今現在はそれよりも幅広い意味でつかわれています。
アダルトチルドレンには、大きく分けて5種類のタイプがあります。
【1】ヒーロー
周囲の期待を受けて、それに応えようと行動してきたタイプ。「期待に応えられないと見捨てられるのでは」という不安と隣り合わせ。
【2】ケアテイカー
周囲の面倒を見てきたタイプ。常に周囲を優先させて動いているため、自分の意志が把握できていなかったり、自己主張ができなかったりする傾向にある。
【3】ロストチャイルド
自分の存在をできるだけ消してきたタイプ。手のかからない子として見られている場合も多いが、寂しさを抱えていることも多々ある。
【4】クラウン
空気が重いシーンでは、無理におどけたりふざけたりして周囲を笑わせてきたタイプ。空気を読みすぎてしまい、気疲れしてしまうことも。
【5】スケープゴート
常に悪者として振る舞ってきたタイプ。自分が悪者になることで家族や周囲をまとめていたため、大人になっても悪者として振る舞ってしまうこともある。
その影響は家庭の外にまで
アダルトチルドレンの特徴は、家族に対してはもちろんのこと、他の人間関係においても適用されます。そのため、アダルトチルドレンは家庭内にも家庭外にも居場所がないと感じることさえ少なくないようです。
みさきって、面倒事も引き受けちゃうタイプでしょ?それに、大学や会社も家族の期待に応えていいところに行こうと頑張ってたし。ヒーローやケアテイカーって感じかな。
期待されると「応えないと!」って思っちゃうんだよね。応えられないと幻滅される、っていう不安があるのかも。周りに嫌われたくなくて、色んなこと引き受けて苦しくなっちゃう。そういえば、小学校に入るとき受験に失敗してものすごく怒られたことがあるんだ。もしかしたらそれが原因かも。
小さいときの経験がトラウマになって、大人になっても影響を受けるってことは少なくないみたいだよ。みさきの場合も、それがきっかけで今も「期待に応えなきゃ」って思っているのかもしれないね。
生きづらさを解消したい!
期待されるのって嬉しいけど、すごく苦しいんだよね。今の仕事をしていても、逃げたくなることが何度もあったもん。
やっぱり、一度家族と距離を置いたほうがいいんじゃないかな?お父さんとお母さんが心配っていうのもわかるけど、みさきは自分自身のことを第一に考えたほうがいいと思う。
うん……そうだね。本当は、家族と離れたほうがいいってわかってたんだ。このままだと仕事だって上手くいかなくなっちゃいそうだし。これをきっかけに一人暮らし、始めてみるよ。
物理的に距離を置くことが大切
毒親の影響を緩和するためには、物理的な距離を置くことが非常に有効です。何故なら、一人で暮らすことによって親に影響されず、自分のペースで生活できるようになるからです。また、家族と接しないことにより、自らのアダルトチルドレン的な要素を抑えることにもつながります。
もし毒親の影響が大きく、心身に不調をきたしている場合は、精神科や心療内科でカウンセリングを受けることもおすすめします。
気持ち的に辛くなったら、カウンセリングにも行ってみてね。きっと楽になるはずだよ。
ありがとう、カナ。なんだか話したらすっきりしたよ!せっかく久々に会ったんだから、今日はスイーツバイキングにでも行こう!
賛成!みさきの新たな門出も祝して、ね!
毒親の呪縛からの解放
カナに相談してから3ヶ月。私は晴れて一人暮らしを始め、門限を気にすることなく仕事に打ち込めるようになった。親とのいざこざも少なくなったからか、以前ほど「私がいないと家族が回らない」という変な責任感もない。
だけど、まだ周囲の期待に応えようと頑張っちゃう癖は抜けないかな。それでも、何かを頼まれたときに一旦保留にして考えるように注意するようになった。20年以上かけてしみついた癖だから、気長に付き合っていくつもり。
「毒親」について教えてくれたカナのおかげで、自分の人生がやっと自分の手に戻ってきた感じがするな。私は今回の経験を、他に困っている人たちへ届くように記事にすることを決めた。毒親、そして毒親に悩んでいる子どもの存在をもっと知ってもらえるように……!
fin.
カナ久しぶり!元気してた?
元気元気!そっちも元気そうで何よりだよ。
うーん……元気と言えば元気なんだけど……。
何かあったの?
何かってほどでもないんだけど、私もやっと仕事に慣れてきて最近編集会議とかにも参加できるようになってきたの。けど、そのせいで帰りが遅くなっちゃって、「門限守れー!」ってお父さんとお母さんがカンカンなんだよね。「門限守れないならご飯はナシ」って言われて、最近は夜ずっとコンビニのおにぎりだし。
それ、大丈夫……?
門限守れない私が悪いからしょうがないよ。一人暮らししようにもお父さんとお母さん喧嘩ばっかりだから、私がいないと家族が上手く回らないしね。
そういえば中学のころからそんなこと言ってたよね、みさき。
うちの両親、昔から喧嘩してばかりだからね。お互いの愚痴を私に言ってくるから、調整するのも大変だよ。
門限とかが厳しいのも結構前から?
そうだね、高校のころからずっと19時。昔から、門限破るとよくビンタされたりお小遣い没収されたりしてたなあ……。
ねえ、みさき。気分悪くしたらごめんね。もしかするとみさきの親って「毒親」かもよ?
毒親ってなに?