顔認証はスマホだけじゃない!AI+顔認証で広がる近未来型ビジネス

●日本の顔認証技術は世界トップレベル。国内では防犯、マーケティング分野で活用が進む。
●海外各国の顔認証システムはバラエティに富んでいる。牛や魚の顔認証システムもあれば、中国のように顔認証システムが進化し、個人の信用スコアリングシステムになっている例もある。
●マイクロソフトが2018年12月に「顔認証技術は悪用される危険性があり、国の規制が必要という見解を出す。
●AIの登場で社会は大きく変化する。自分の個人情報の使われ方についてリテラシーを高めよう。

スマホですっかり身近になった「顔認証技術」。最近は空港の出入国管理やコンビニエンスストアの決済にも導入されるなど、日本でも利用範囲がどんどん広がっています。

「手ぶらで決済できる。パスワードを覚える手間が省ける! これはいろいろなビジネスチャンスが生まれそう」。2015年に初めて顔認証システムについての記事を書いてから、いちライターとしてこの技術の可能性に興味を持ち、顔認証に関するニュースを常にチェックしてきました。

顔認証システムの活用方法については海外のほうがかなり進んでおり、牛や魚の顔認証システムや顔認証システム+買い物履歴などのデータをもとにした「信用スコアリングシステム」なども登場しています。

「顔」と個人情報や行動履歴を紐づけてAIで解析すると、いろいろなビジネスが生まれる可能性があります。そして「顔」という非常にセンシティブな情報を取り扱う技術であるため、危惧されている面もあります。

この記事では、2019年時点での顔認証技術の活用状況、メリットやデメリットについてご紹介いたします。

日本でも自動販売機、店舗、Pepper君などで活用される顔認証技術

実は、日本のメーカーにおける顔認証技術の精度は非常に高く、NECや東芝は米国の研究機関から世界トップレベルの技術力という評価を得ています。ほかの大手メーカー、ベンチャー企業なども優れた顔認証技術を提供しており、国内のあちらこちらで、ひそかに顔認証システムは活躍しています。
例えば、JR東日本には顔認証した上で好みの飲み物を提示してくれる自動販売機があります。最近、終了してしまったPepper君も顔認証システム装備のバージョンがあり「こんにちは!」と挨拶しながら顧客データを蓄積していたのです。

広告分野では、電通とマイクロソフトが顔認証で年齢や感情を分析する「OOH広告」を提供しています。最近、何となく自分が欲しいものがよく広告に出てくると思う場合、もしかしたらそれは顔認証システムによるレコメンドだったのかもしれません。

大手書店のジュンク堂は万引き対策で顔認証システムを導入。万引き犯と疑わしい人はもちろん似ている人も検出され、入店すると警備員のスマホに連絡がいくシステムを構築しています。

このように、日本社会のシステムも近未来的に進化していることはいるのです。

海外では、人間だけでなく牛や魚向けの顔認証システムも登場

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ただし、技術力は高くても、活用方法のバラエティさでは海外各国のほうが進んでいるといえるでしょう。海外では、顔認証システムが畜産業、漁業などの生産性向上ツールとしても登場しています。

例えば、米国のカーギル社は牛を顔認証システムで管理して食欲、体重の増減、動きなどから健康状態をチェックし、餌やりなどの飼育方法に生かせるシステムを発売しています。 サーモンの名産地ノルウェーでも、養殖場のサケを管理するための顔認証システムが登場しています。サケの目やエラの特徴で個体を識別して、病気のサケを隔離できるようです。

タイでは学校の出欠確認に顔認証システムを使い、さぼっている生徒の親にLINEで通知するシステムが登場。中国では、顔認証決済をするコンビニエンスストアはすでにかなり普及しており、最近は信用の可視化システムに進化しています。顔と個人情報、行動履歴を紐づけすることで、その人の社会的なランクが決まってしまうシステムです。

顔認証システムの活用法については、“その国の主要産業が何か”によって、早期に登場するサービスが変わりそうです。また、顔認証技術を人に対して利用する場合は、各国の個人情報に関する法律も関わってきます。良し悪しは別として、国が顔認証システムの導入を主導している中国だからこそ、近未来的な活用法に突き進めているのかもしれません。

2018年、マイクロソフトが顔認証技術についての規制を国に求める

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顔認証システムが進化した社会はどうなるのか? 一般人にはなかなか想像がつきません。
しかし、2018年12月、驚くべきことに顔認証システムを提供する側のマイクロソフトが顔認証技術の規制を国に要求する異例の事態が起きます。さらに、マイクロソフトの呼びかけに応じて、Googleも顔認証APIを停止すると発表します。

一体、顔認証システムの何が問題なのでしょうか?

マイクロソフトが指摘しているのは“システムが悪用される危険性”です。民主国家の日本にいるとピンときませんが、たしかに独裁者が顔認証システムを独占して使うと大変なことが起こる可能性はあるでしょう。米国大手IT企業マイクロソフトの方針転換は、日本の顔認証システム業界にも多少の影響は与えると考えられます。

実際大げさな話ではなく、一般企業がマーケティング目的の顔認証システムを使うことにも危惧する面はあります。例えば、ある店の顧客データベースにいつの間にか登録されてしまい、来店すると、自分の顔と購買履歴が画面上に映る。店員に「あ、いつもコロッケ買うおばさん」「発泡酒の人」と記憶されるなどという、ありがたくない事態も容易に想像できるのです。

顔認証システムを使う側が、どこまで顧客の顔画像と購買履歴を紐づけてデータ保有できるのか? 顧客は自分が買い物した商品、自分がとった行動と顔が紐づけされ、サービス提供者がそれをいつでも確認できるシステムに、どこまで納得できるのか? ここは人によって意見が分かれるところかもしれません。

いずれにせよ、顔認証システムについては、消費者がその仕組みや使用目的を理解した段階で、丁寧な説明があった上で導入されることが望ましいでしょう。

近未来型社会に必要なリテラシーを身につけよう!

近年はVUCAの時代となり、指数関数的にビジネス環境が変化していくといわれています。AIの登場によりテクノロジーが進化し、新ビジネスが生まれていくのは素晴らしいことです。しかし、システムの進化のスピードがあまりに速く、消費者の知識が追いつかない状態が続く可能性もあります。顔認証システムに限らず、今後の個人情報ビジネスについては、消費者一人ひとりがリテラシーを高めていく必要があるでしょう。

この記事を書いた人

顔認証はスマホだけじゃない!AI+顔認証で広がる近未来型ビジネス

野村 優

ライター

鹿児島県出身、フィリピン在住。
ライター歴10年以上。最近は、英語教育、海外転職、グローバル人材育成、モチベーション関連などの教育分野、セールステック、HRテック、エドテックなどのITツールについて書いています。変化する時代に何を変えて、何を変えずに大事にすべきかという視点を常に持ちたいと考えています。趣味は読書、海外旅行(アジア)です。

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