ベテラン社員こそ知っておきたい。組織を成長させる「ホウレンソウ」の極意(ビジネスライター)

●「ホウレンソウ」とは、「報告・連絡・相談」の頭文字をとったビジネスの基本となる作法である。
●「ホウレンソウ」は新人のためだけの作法ではない。
●「ホウレンソウ」の目的のひとつはリスク管理であり、その先には組織を成長させていくという目的もある。
●具体例をもとに「報告・連絡・相談」の違いを理解し、適切な使い方を学ぶ。

「ホウレンソウ」とは、ご存知の通り「報告・連絡・相談」の頭文字をとったものです。仕事の基本として、新人研修のテーマに取り上げられることも多くあります。しかしながら、その具体的な内容をいまいち理解できてないという人が案外多いのも事実です。特に社会人経験が長い人にとっては、「ホウレンソウ」なんて今さら学ばなくても……と感じられることでしょう。
私が人材育成関係の仕事に従事していた際、新人から役員クラスまでの教育研修の企画を担当しておりました。このとき、コミュニケーションに関わる基本となるとして「ホウレンソウ」の正しい理解と共通認識の共有が大切であると感じることがありました。

そもそも何のために「ホウレンソウ」をするのか、みなさんはその目的について説明できますか?もし「今の自分の居場所や業務の進捗を伝えること」程度に認識しているのであれば、いったんその目的について再度確認してみましょう。これにより、目的に応じて伝えるべき(上司の立場であれば、聞くべき)情報が明確になっていきます。当記事では、「ホウレンソウ」の違いと具体例、その目的について解説します。

「ホウレンソウ」の目的は「リスク管理」にある

「ホウレンソウ」の目的は、一言でいってしまうとリスク管理です。もちろん、それだけが目的ではありませんが、重要な役割を占めているのがリスク管理といっても過言ではないでしょう。もう少しわかりやすく言うと、「トラブルを未然に防ぐ、もしくは最小限に抑える」と表現できます。

ほんの少し伝えることをおろそかにした結果、大きな問題に発展し、その対策に時間をとられてしまった……という経験はありませんか?日常でも、例えば結婚したり子供ができたりと、プライベートに変化が起こった場合に、知人への連絡を怠るケースも多々あるでしょう。親しかった友人に連絡を忘れ、結婚式の写真をSNSに載せたら「なんで言ってくれなかったんだ」と気まずい関係になってしまった、などというケースもよく聞かれます。これもまさに「ホウレンソウ」ができていなかったことにより起こってしまったトラブルのひとつと言えるでしょう(この例の場合、相手が親しい、もしくは自分にとって重要な関係者であるということがポイントではありますが……)。

「必要な情報」を「適切なタイミング」で相手に伝えることによって、トラブルを未然に防ぐ――。これが「ホウレンソウ」の重要な目的のひとつなのです。

「報告」「連絡」「相談」の違い

「報告」=経過、結果を伝えること

「報告」は、「経過、結果を伝えること」を意味します。事前に指示、命令をされたことについて、現状どうなっているかを知らせることが「報告」です。次のようなシチュエーションで具体的に考えてみましょう。

あなたは某企業の新人営業マンです。上司のA課長から指示を受け、「B社の担当者に会いたいのでアポをとってほしい」と依頼されました。A課長の都合は確認済みです。B社に電話したところ、A課長の都合が良い候補日のうち1つだけ調整ができました。
そこでA課長に「先ほど指示を受けたB社のアポの件ですが、A課長から候補をもらったこの日程でアポがとれました。」と伝えました。

このシチュエーションの場合、この「アポがとれ、1つの候補枠で調整できた」という旨をA課長に伝えることが「報告」です。

「連絡」=関係者と情報共有をすること

「連絡」は、「関係者と情報共有をすること」を意味します。ある情報を聞いたとき、関係者にその事実を伝えることが「連絡」です。ポイントは、「関係者を把握できているか、憶測ではなく事実だけを伝えられているか」という点です。次のシチュエーションで具体的に見ていきましょう。

あなたは某企業の営業マンです。ある日営業先A社にでかけたところ、「半年後に事務所を移転させる」という旨の話を聞きました。移転先は、同じ営業担当のCが担当する地域です。あなたはその話を聞き、上司にはメールで、営業メンバー全員にはCcで「A社が半年後に移転するとのこと。移転地域は〇〇です。」と伝えました。

このシチュエーションの場合、「A社が半年後に〇〇という地域に移転する」という事実をメールにて共有することが「連絡」になります。営業メンバー全員にCcで連絡したのは、「担当者が変わるエリアに移転する」ということを全員で共有するためです。担当変更の有無は上司の采配次第ですが、その他のスタッフにも影響する可能性がある場合は、全員に共有しましょう。「関係する人」を「ある事象が起こることにより少なからず影響を受ける人」という風に考えてみると、少しクリアになります。

連絡をする際の注意事項として、間違っても事実でない情報や憶測は入れないよう気を付けましょう。この事例で言うと、「〇〇という地域に移転するらしいです。もしかしたら事業が拡大しているのかもしれません。」「〇〇という地域はCさんが担当ですので、Cさんが担当するのだと思いますが」などといった伝達がNGということです。
どうしても憶測を入れたいときは、「ここから先は想像ですが……」「私の考えですので、事実ではないですが……」といった枕言葉を挟みましょう。とはいえ、原則として求められていないときには憶測を入れないほうが賢明です。

「相談」=問題解決のためのアドバイスを求めること

「相談」は、迷ったり判断をしかねたりしたときに、相手に意見を求めることをいいます。もう少し端的にいうと、「問題解決のためのアドバイスを求めること」です。こちらも、例と共に考えてみましょう。

あなたは某企業の営業マンです。ある顧客先で納品した製品の故障が発生し、早急に対応しなければならなくなりました。対応方法は絞れましたが、いまいちどちらの案がいいのか決めかねています。上司のA課長の意見を聞くために、次のように伝えました。
「A課長、お忙しいところすみませんが、現在顧客先でトラブルが発生しており、対応について迷っています。案は2つあり、1つは●●です。技術的な部分で一番安全で、他の顧客にも影響はないのですが、時間がかかることがデメリットです。2つ目は~です。時間としては短縮できますが、他の顧客との調整が必要であり、下手したらほかの顧客に迷惑をかける恐れもあります。A課長のご意見を伺いたいのですが。」

上記の例では、「自分の考えを課長に伝えた上で、意見やアドバイスを求める」といった動きが「相談」にあたります。「製品の故障」という問題の解決策を考える際に、アドバイスを求めています。「相談」を持ちかける際は、以下の3ポイントを意識しましょう。

【1】情報整理

まずは、今ある情報を整理しましょう。情報を整理する際は、以下の情報を書き出してみましょう。客観的な事実を書いていくことが重要です。

・関係者
・事象
・事象から起こる(もしくは起こっている)問題点

【2】対応策を考える

相談をする際にありがちなのが、「どうしたらいいでしょうか。」という漠然とした内容で話をしてしまうことです。プライベートな相談であれば問題ないかもしれませんが、ビジネスではご法度。これは相談とは言えません。
先ほど整理した情報から、自分自身で考えられる対応策を1つでもいいから考えてみましょう。もしどうしても思いつかない場合は、以下のように伝えてみてください。

「過去に同じような事象で対応されたことはありますでしょうか。」
「将来的にはこの顧客との取引を停止したくはないので、そうするために今回どう対応したらよろしいでしょうか。」

とにかく、自分の考えをはっきりと伝えましょう。これにより、相談された相手も判断がしやすくなります。

【3】できる限り端的に伝える

伝え方も非常に重要なポイントです。忙しい上司や先輩、同僚に相談を持ちかけるのですから、できる限り端的に(それでいて正確に)伝えるよう意識しましょう。また、「お忙しいところすみません。」や「急ぎの相談で申し訳ないのですが」という言葉を挟むことにより、印象もソフトになります。

1)現在の状況を伝える
2)自身の考えた対策案を伝える
3)そこから考えられるメリット、デメリットを伝える
4)相手の意見を聞く

上記の流れで実践すると良いでしょう。もちろん、途中途中で相手からさらに突っ込んだ質問が入る可能性もありますが、意識的に伝える形を決めておけば「結局何が言いたかったのか」という迷宮にはまりづらくなります。

「ホウレンソウ」で成長する組織づくりを

はじめにお伝えした通り、ホウレンソウの重要な役割のひとつは「リスク管理」です。少しネガティブな印象もありますが、リスク管理によってトラブルを事前に回避したり、最小限に抑えたりできれば、前向きな事象にかけられる時間は増えていきます。これが、新たなアイデアの誕生や組織の改善につながるのです。

繰り返しになりますが、ホウレンソウは新人のためだけの作法ではありません。「その先にはより組織がある」ということを見据え、正しく理解しながら活用していきましょう。

この記事を書いた人

ベテラン社員こそ知っておきたい。組織を成長させる「ホウレンソウ」の極意(ビジネスライター)

yuzuriha

ライター

生まれは長崎、関西在住。8年ほどシンクタンクで人材育成事業のコンサルタント営業に従事。主に経営者、役員を中心に人材育成に関わる問題解決に携わる。
テーマとしてはビジネス系では人事、人材関連。そのほか趣味の占いや旅行についても知識あり。
専門的なことを、事例を交えてわかりやすく伝えることを心掛けている。

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