照明は光源の種類と使い方で驚くほど空間は変わります。家具や内装にどれだけ凝ったとしても、照明が台無しであればこだわったインテリアもせっかくの魅力が発揮できません。照明や電球を選ぶ際に、照明器具などの意匠的なデザインと違い、種類がたくさんあってわかりにくいのが「電球の種類」ではないでしょうか。照明器具は素材や形などで自分の好みを把握しやすくても、どの光源の電球を選んで良いか、また自分好みの明かりは何なのか……というところまでは知る機会が少ないと思います。
当記事では、今までに100棟以上の住宅や店舗の設計を手掛けたインテリアコーディネーターがおすすめする、それぞれの電球の特徴と効果的な使い分けの方法をご紹介します。
電球の主な分類(蛍光灯・LED・白熱灯)
豊富な電球の形と暖かな雰囲気が魅力。装飾に適した白熱灯
白熱電球は太陽や自然界の光にもっとも近く、赤みのある温かな色でふわりと光るのが特徴。大小や丸さ、ろうそく型のシャンデリア球などさまざまな形状があります。そのため裸電球のみでも意匠的な役割を担うことができ、電球を含めて照明のデザインにもなっている器具が多くあります。
白熱灯の寿命は約1,000〜2,000時間のものが多く、現在となっては蛍光灯・LEDよりも短寿命で消費電力も大きいのがデメリットですが、独特の温かみのある光は他の光源では再現ができず、リラックス効果がもっとも高い明かりでもあります。インテリアなど装飾性や演出性に優れ、調光機能で多彩な明るさが表現できます。
白熱電灯の代替品として登場した蛍光灯。白い光でまんべんなく照らす
白熱灯に変わる長寿命の電球として登場したのが蛍光灯。これまでの白熱灯がオレンジ系の暖色だったのに対し、青みのある光でより明るさを感じられる光を持つのが特徴です。オフィスや公共建築、住宅など「明るさを求める場所」に幅広く普及しています。白熱灯の1/4ほどの消費電力で空間をムラなく照らすことができ、影を作りにくい光を持ちます。
他の電球と違い、パイプ状の長い形状や円形のフォルムを持っており、白熱電球から付け替えをする「電球型蛍光灯」は渦巻き状や球型にまとめられたものです。購入時に光の色を選べるのも蛍光灯のポイントです。
長寿命で消費電力が少ない、新しい明かりのLED
現在主流となっている照明でもっとも新しいものがLED。約40,000時間(器具による)という長寿命で消費電力が少ないのが何よりのメリットで、住宅だけでなく商業施設などでも交換が進められています。
また現代の技術が生かされ、豊富な色の表現や一つの照明器具や電球で色・明るさが変えられる機能を持っているものもあります。オレンジ系や白系だけでなく、カラフルな色の表現が可能で、面を照らすものと、イルミネーションなど点で光を表現するものがあります。
光源が小さく、照明器具自体を薄く、小さくできることで新しい照明器具のデザインを生み出しました。しかしながらまだまだ成長段階でもあり、器具自体も他のものに比べ高価です。他の照明器具が「電球を取り替える」システムが一般的なのに対し、LEDは照明器具一体型、他の光源と同じように電球型に分かれます。
蛍光灯の光の特徴と使い方
影を作らない、フラットな光が欲しい場所に適している
蛍光灯の光は、フラットに照らされるためにほぼ影を作らないのが特徴です。陰影ができにくいため、細かな作業をする場所や影を作りたくない場所に向いています。電球自体に意匠性はないため、ガラスシェードや裸電球として使う照明器具にはあまり似合いません。
壁面に光を反射させるシャンデリア系の器具は、影を作らないためのっぺりとした印象になり、物足りなく感じる場合もあります。とにかく「明るさ」を重視したい場所におすすめです。
頻繁にオン・オフの必要がある場所には向かない
「省電力」という言葉から誤解をされやすいのですが、蛍光灯が一番電力を消費するのは点灯直後。長く点灯させるほど消費電力は低く、安定していきます。そのため、点灯時間がわずかですむ場所の場合逆に大きな電力を消費する原因にもなります。
また蛍光灯独自の特性により、点灯後から徐々に100%の明るさに近づいていくので、点灯直後は暗いのも特徴です。気温が低いほど明るくなる時間は長くなり、廊下やトイレなど、頻繁に入・切する場所では用事が終わった頃に明るくなってしまうことに。そのためこうした場所にはあまり向きません。
デザイン性のある電球型蛍光灯も
蛍光灯独自の電球の形状を生かした装飾電球も「Plumen」というデザインブランドから誕生しています。従来の白熱電球ソケットに取り付けができ、存在自体がデザイン照明として空間を彩ります。コードの色で印象が変わり、これまでの「白熱電球の代わり」のイメージから「おしゃれな照明器具」としての存在感を確立しました。曲線の描く光自体で装飾性を持っているのが特徴です。モダンでスタイリッシュな印象を与えます。
LED照明の選び方と魅力
メーカーによって色や明るさが統一されていない点に注意
LEDはメーカーによって同じワット数でも明るさの感じ方が異なったり、色が揃わなかったりするデメリットがあります。他の光源は電球を中心にして明かりが360度広がるのに対し、LEDは点で光り、直進方向に対象物を照らすのが得意です。
また、光が広がりにくいためLED電球の光る面が限られていると、下側は明るいのに天井側は暗いという欠点がありました。そのため乳白色のグローブで光を拡散し、明かりを広げる工夫がされているものが多くあります。年々改善されつつありますが、購入する時期が違うと電球の形状や大きさ、色も違ってしまう可能性があります。
白熱灯風の透明なLED電球もある
工業的な見た目のLED電球を、フィラメントが味わいのある白熱電球風に見せられる、透明なLED電球も普及が進んできました。見た目は白熱電球そっくりですが、原理はLEDが使われているために予想よりも明るかったり、思うような光り方でなかったりする場合もあります。
ガラスを煌めかせる効果は少なく、陰影をあまり作らないためにシャンデリアやガラスシェードの照明器具は白熱球に比べ魅力は減ってしまうでしょう。白熱球の暖かみのある光と比べるとLEDは「しんみり」光るため、購入前に現物を見て明るさなどがイメージに近いかどうかを確認するのをおすすめします。
Bluetoothやリモコンで色や明るさが変えられる
スマートフォンやBlurtoothと連携し、明るさやカラフルに色を変えられる機能があるものは、好きな色を自在に作り出すことが可能です。現在では間接照明の演出用やスピーカーと一体になったものなど、明るさ以外の付加価値を持つユニークな存在のものが数多く登場しています。賃貸マンションや無難な色の内装が物足りない場合など、光の色で空間を演出できる新しい方法のインテリアテクニックと言えるでしょう。
壁や物体を使った間接照明に最適
LED照明は細さや薄さが特徴なので、建築化照明など設置場所を小さく目立たせたくない場所に適しています。直進的に光る特徴を生かし、スポットライトなどで特定の方向を照らすのに長けています。
白熱電球のように照明自体で演出するのではなく、スタンドライトやクリップ式のスポットライトへの取り付けなどで広い壁面や天井を照らすように配置すると、光が美しいグラデーションを作り部屋自体が照明として幻想的な空間になります。
白熱灯の魅力とワンランク上の取り入れ方
安価で演出性が高く、種類の豊富な白熱電球
一つ100円台から購入できる白熱電球。趣のある光と豊富な種類の電球の形で、照明器具に頼らずともソケットだけで魅力的な明かりを演出できます。徐々にLEDへと移行していますが、味わいのある光には根強いファンも多く、カフェなどでも好んで使われています。コストを抑えながらもおしゃれに見せたい場合には、ペンダントライトのソケットと電球だけでも十分。個性的な形の電球はそれだけでインテリアのポイントになります。
クリア球とホワイト球の使い分け方
フィラメントが光ることで明かりを灯す白熱電球。クリア球は光がダイレクトに広がるため、影もくっきりと現れます。陰影を美しく見せたいシャンデリアやガラスシェードの照明器具や、そのまま裸電球としても味わい深く魅力的な演出ができます。
一方ホワイト球は光を拡散する効果があり、影の出方もふんわりとします。レトロ照明などの光を通さないシェードや、書き物をする際にメリハリのある影が邪魔になってしまう場所でもソフトに暖かみのある明かりをもたらしてくれます。デスクの上やキッチンの上などの作業をする場所でも影が邪魔になりません。
白熱球の調光機能
明るさを調節できる「調光」は専用のリモコンが必要ですが、他の光源に比べ白熱灯が一番取り入れやすいというメリットがあります。LEDか白熱灯に多い機能ですが、LEDの場合は調光対応専用の器具や電球である必要があります。また、自然界の夕日がそうであるように、暗くなるほど赤みの強い光になるのがリラックス効果のある正しい「調光」の定義でもあります。
最近人気のエジソンランプが味わい深いのは、赤みの強いフィラメントとノスタルジックな雰囲気がマッチするため。これがLEDの場合は多くが白みの色はそのままに暗くなるだけなので、正しくは「減光」と呼ばれます。
電球そのものがインテリアになる使い方
お手頃価格で特別効果な照明器具がなくても意匠性の高い白熱球。シェードのないペンダントライトはもちろん、コンセントに挿すだけで良いスタンドライトや置き型照明で、光源の高さや異なる明るさを取り入れてみてください。炎のような「曲がりシャンデリア球」、球の半分がミラー加工された「ハーフミラー球」、人気のエジソンランプなど、球の形でも気軽に印象を変えることもできます。
照明を変えて自分好みの空間を
一口に「電球」「照明」といっても、光源の種類によって特徴や印象が変わります。近年では省エネルギーや電気代といったキーワードを聞く機会が多いため、自然とLEDが一番いい、という意識が働くかもしれません。しかし照明は24時間ずっとつけっぱなしにする機会はあまりなく、家の中でも「明るさの機能が必要な場所」と「くつろぎの心地よさが必要な場所」を見極めていくと、劇的に大きな変化が実はないというのがわかります。
明かりひとつで空間の見え方は変わり、心地よさがずいぶんと変わるもの。感覚的な「心地よさ」は消費電力や電気代のように明確に数値化されるものではないため、つい見逃されてしまう要素です。電球の特徴を押さえ、ぜひ自分好みの空間を作ってみてください。