イメージと違う!?公務員の実態~5年勤めた元公務員ライターが語る~

●公務員は残業・土日出勤が当たり前。税金を扱うため間違いが許されないので、うっかりしがちな人にはきつい。
●公務員はルーティン作業が多いと言われがちだが、その実態は日々改善を求められている。定年まで数年おきに異動もするため、仕事内容もイメージより大変。
●公務員にはイメージ通り「地味」「おとなしい」「真面目」な職員もいれば、まったく「公務員らしくない」職員もいる。部活動や社内サークルも活発でいろんな人がいるので、気の合う職員もきっと見つかるだろう。
●公務員は確実な仕事をする人・柔軟性の高い人が向いている。実際、イメージ通り福利厚生はしっかりしているので、向いている人はぜひ目指してほしい。

「楽」「9時~17時」「地味」といったイメージの強い公務員。不況の続く今、安定した福利厚生のある公務員人気は、とどまるところを知らない。市役所への就職・転職を希望する方も多いのではないか。しかし、これらの公務員に対するイメージは、実態とかなり異なっている。

今回は、とある市役所に5年間勤めた私が、そのイメージと実態とのギャップを楽しく・わかりやすくお伝えしたいと思う。

この記事は、公務員志望の方が就職前にその実態とのギャップを埋め、就職のミスマッチを減らすことを目標としている。そのため、

・公務員を目指すべきか悩んでいる就活生
・民間企業と市役所との実態の違いを知りたい転職希望者

こういった方は特に、以下の記事を読んでいただくことをおすすめする。

公務員の仕事は決して楽ではない

「仕事が楽そう」というイメージの強い公務員だが、楽な仕事はほんの一部である。月100時間を超える残業が珍しくない部署もあるほどだ。例えば、皆さんが「市役所の職員」と聞いてイメージするのは、一階の総合窓口の職員ではないだろうか。

私のいた自治体では、窓口課の職員はかなり忙しく、定時までは窓口業務に追われ、定時後は受け付けた情報の処理に追われていた。繁忙期は毎日24時退社だったりする。「9時~17時で受付が終われば終わり」ではないのだ。そもそも市役所の定時も「9時~17時」ではなく、「8時半~17時15分」である。

実際、私も月100時間以上残業する部署にいた時期があるが、イベント系の部署であったために毎日の残業に加え土日も毎週出勤があり、毎日朝から疲れていた。

なお、残業量はもとより土日出勤も普通にあり、その頻度は部署によって大きく変わる。観光系の部署は、市内のお祭りにブースを出展・PRするため土日出勤が多い。そして市の広報誌を作成する広報系の部署は、市内のお祭りやイベントの写真撮影や取材が主な仕事のひとつであるため、土日出勤は常識だ。一方、市役所内の伝票審査等を担当する経理系の部署は、決算期以外の残業や土日の出勤はほぼない。

このように、部署によって残業や土日出勤の程度はかなり異なるが、総じて土日出勤がない部署の方が珍しい。ただし、代休や超勤手当はしっかりつく。

また、公務員の仕事は、「税金を扱っている」という職業柄、間違いが許されない点が特徴的だ。財源が税金である以上無駄遣いはできず、職務上の手順は全て条例等で法定されており、間違いは許されない。
そのため、民間企業のような「間違いを他の業績を上げてカバーする」という考え自体が成り立たないので、うっかりしがちな人には特にきつい仕事である。

公務員はルーティン作業をあまりしない

「公務員はルーティン作業ばかりなんでしょ?」という声もよく聞くが、ルーティン作業は実はあまりない。もちろん、手順が法定されている以上、仕事でアクションを起こす前には必ず「~してよろしいでしょうか」という決裁をあげ、係長・課長補佐・課長にハンコをもらわなければならない、という決まりはある。

しかし、具体的な仕事内容については市民の要望や社会情勢に合わせて日々改善が求められており、「昨年と同じだから今年もこうします」といった理屈は通らない。胃がんになった有名人が出れば市の胃がん検診の受診可能枠を増やし、人気漫画の舞台になれば「町おこし」の一環としてイベントを企画し、大いに盛り上げる。法律に基づいた手順は踏む必要があるが、根拠のない定型仕事は認められないのが現状だ。

なお、日々の作業だけでなく、在籍部署についても変化が多い。「特定の企業・個人との癒着を防ぐ」という公務員ならではの理由もあり、大体3~5年で部署異動を繰り返すのが基本だ。
これは若い世代に限った話ではなく、60歳の定年を迎えるまでずっと続く。50代になっても新しい分野の新しい仕事を覚え、人間関係を1から構築し直す必要があるのだ。

市役所には税関係の部署だけでなく、スポーツ系・子育て系・土木系など多種多様な部署があるため、スポーツ系の部署からいきなり納税系の部署へ異動することもざらだ。みんなそういった異動を経験するので持ちつ持たれつでやっていけるが、特定のスキルを決まった人間関係の中でひたすら伸ばしていきたいタイプの人には、合わないかもしれない。

公務員にはいろいろなタイプの人がいる

公務員は「地味」「おとなしい」「真面目」といったイメージが強いが、実態はその通りの職員もいれば、今時の若者を絵に描いたような職員もいる。

私が入庁(市役所の場合、入社ではなく入庁と言う)したときは、同期にスポーツ好きの明るい人や「週末は友達とBBQ三昧です!」といういわゆる「リア充」のような人も割といた。同期でスノーボードやお花見に行くなど、イメージよりも仲良く楽しく過ごした記憶がある。

また、部活動や社内サークルも盛んだ。野球部・サッカー部・テニス部など、メジャーなスポーツは一通り部活があり、週に1日程度、終業後に市内の運動施設で活動している部が多い。文化部もあり、将棋部・俳句部など幅広い年齢層の職員が楽しく活動していた。
社内サークルとしては職員バンドがあり、登録メンバーは自由にバンドを組んでいた。メンバーは年に1回の発表会に向けて終業後に練習を重ね、衣装も手配しロック・合唱・弾き語りなど、様々なジャンルの演奏を行っていた。

こうして見ていくと、逆に公務員はアクティブな人しかいないように思えるが、全体的には保守的な堅実派が多かったように思う。同期にも「公務員に転職できたので(転職組)、結婚する」と20代前半で結婚する人が出るなど、特に男性職員の結婚が早かったのが記憶に残っている。

「自分に合っている」と思える人はぜひ公務員に!

役所はかなり特殊な業界であるものの、法律に基づいた仕事の進め方をする以外は、民間企業とそう大きく変わらない。残業・土日出勤もあるが手当はしっかりとつくし、改善を常に求められるのはどこへ行っても同じこと。職員数が多ければ、いろんな人がいるので、むしろ自分と気の合う職員と仲良くなったり、一緒に働けたりする可能性も高い。

公務員はその特性上、確実な仕事をする人・柔軟性の高い人が向いている。このご時世に珍しく福利厚生のしっかりした職種なので、合っている人にはぜひ、市役所への就職をおすすめしたい。

この記事を書いた人

イメージと違う!?公務員の実態~5年勤めた元公務員ライターが語る~

新美 友那(にいみ ともな)

元公務員ライター・講師

1988年生まれ。法政大学社会学部卒業後、都内某役所で5年間勤務。田舎フリーランス養成講座を受講後独立し、フリーライターに。独立初月に17万円分の受注を達成、2か月目にFMラジオ「たくまのkokoroここからだ!」出演。3か月目に田舎フリーランス養成講座講師を務める。note「元公務員ライターが教える、未経験から初月17万円稼ぐ17の方法」(https://note.mu/niimi/n/nc930fcad0463)発売中。
得意ジャンルは転職、公務員、貯金、漫画・アニメ、料理。
趣味はマラソン、漫画・アニメ、料理、お酒。黒霧島が好きです。

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