疲れた大人女子にオススメ!アニメ「忍たま乱太郎」の癒しの効能と楽しみ方

●「忍たま乱太郎」は、ストレスの多い大人女子の心を癒す作品だ。
●そもそも物語には人の心を癒す効能がある。加えて子ども向けアニメ作品は大人にとっては読み解きやすく、余計なストレスを与えられることがない。
●忍たまは声優陣のキャリアが長く、どこかで聞いたことのある声ばかりなので、親しみを持って楽しむことができる。
●毎日観ることでハマりやすくなる。また、毎日であっても10分間と短いため大人女子の負担とならない。
●礼儀正しい忍たまの言葉遣いは自分を大切にする大人女子に好まれる。
●より深く忍たまの世界にハマりたい大人女子は、原作やメディアミックス作品、聖地巡礼など、お金と時間を使って楽しんでいる。

「忍たま乱太郎」が好きだという大人女子が増えています。あんな子どもばかり出てくるアニメがどうして?と思われる方もいるかもしれません。ここ10年ほどの間に先輩キャラクターが増え、いわゆる「腐女子」向けの演出も見られるようになりましたが、基本的には可愛らしい忍者のたまごたちが忍術学園で学園生活を送っているだけのほのぼのとしたアニメです。「黒子のバスケ」のような過去の確執を土台としたドラマもなければ、「TIGER & BUNNY」のようにバディの関係を巡る話が展開されるわけでもありません。ではなぜ忍たまがこれほどの人気を得ているのでしょうか。

実は、忍たまには、大人女子の心を癒す要素がたくさん詰まっているのです。腐女子だからではなく、現代の荒波に揉まれる大人女子だからこそ、忍たまにハマってしまいます。
当記事では、忍たまの持つ癒しの効能について考察していきます。「もう忍たまなんて見てないよ」という方はこれを機にぜひ見直していただき、すでに忍たまを楽しんでいらっしゃる方は「なるほど自分が忍たまを好きなのはこういう理由もあるのかな」と思いながらお付き合いいただけると幸いです。

疲れているときこそ「子ども向け向けアニメ」が必要だ

物語には癒しの効能がある

2009年、イギリスの新聞『The Telegraph』にて、英国サセックス大学の研究グループが、読書が音楽鑑賞や散歩よりもストレス軽減に有効であるという研究結果を発表した旨が掲載されています。

【参考】Reading ‘can help reduce stress’ – Telegraph

本の内容に没頭することで、仕事や家庭など、現実世界の悩みを一時的に忘れることができるためです。これは心理学で言うところの「解離」という心の防衛機能が働いている状態です。解離の機能がうまくいかないと「解離性障害」などの症状が現れることになります。
読書は想像力で情景を補うものですので、映像作品とは心への働きも異なります。しかし、物語の世界に浸るという点からすると、アニメでも十分に心の休息を得ることができます。

子ども向けアニメのキャラは大人には読み解きやすい

子ども向けアニメでは、キャラクターが非常に表層的に描かれます。例えば、カレーパンマンは熱血で好戦的ですが、大人はカレーが辛いものであり、時に辛さが攻撃的な一面をはらむことを知っています。よって、大人はカレーパンマンのキャラクターを、見た目だけである程度読み解くことができます。
カレーパンマンは極端な例ですが、忍たまでも、まん丸い体型でニコニコ笑いながらよだれや鼻水を垂らすしんべえや、「小銭」の言葉一つで目が銭になるきり丸から、なんとなくキャラクターを想像することができます。子ども向けにデフォルメされたアニメのキャラクターは、大人には非常にわかりやすく、この点でストレスを感じることがないのです。

他のどんなアニメより「忍たま」が大人女子におすすめなワケ

忍たまの基本情報

ここで、忍たまの基本情報を抑えておきましょう。
「忍たま乱太郎」は、NHK Eテレ(旧教育テレビ)で、1993年から放映されているアニメ番組です。主人公の乱太郎が一流の忍者を目指して忍術学園で忍者の修行をするという設定のもと、忍たまたちが悩んだり揉めたりする姿が描かれています。実写映画やミュージカルなど、様々なメディアミックスが展開されている人気作品で、ファンの多くは女性であると言われています。
それでは、大人女子にとっての、黒バスでもなくタイバニでもない、忍たまならではの魅力を探っていきましょう。

「聞いたことのある声」がハードルを下げる

放映25年の歴史は、すなわち声優陣のキャリアです。「名探偵コナン」江戸川コナン役でおなじみの高山みなみさんをはじめ、「新世紀エヴァンゲリオン」渚カヲル役の石田彰さん、「地獄先生ぬ~べ~」鵺野鳴介役の置鮎龍太郎さんなど、人気アニメで主役を演じられた方が多数出演されています。比較的若い方だと「進撃の巨人」のエレン・イェーガー役の梶裕貴さんが出ていらっしゃいますが、梶さんもデビューして10年以上が経過しています。つまり、キャラクターの声の多くが、どこかで聞いたことのある声なのです。

脳科学でおなじみの茂木健一郎さんは、著書『茂木健一郎の脳がときめく言葉の魔法』の中で以下のように述べています。

脳は新しいものに対して警戒心を抱く性質があるので、これまでなかったものに対して、最初はどうしても拒否反応がでてしまう

知らないキャラクターはすぐには受け入れがたいものですが、聞いたことのある声が聞こえてくると、それだけで心の壁が取り払われやすくなります。久しぶりに忍たまを観た大人女子は、昔の顔なじみと再会するような親しみを覚え、そこから忍たまにハマっていくのです。

「毎日」「10分間」が大人女子にはちょうど良い

忍たまの放映時間は、若干の変動はありますが、基本的には平日の18時前後の10分間とされてきました。多くのアニメが週1回、約30分の枠を割り当てられていることを考えると、非常に特徴的です。

「ザイオンス効果」という心理学的な効果があります。これは、同じ人や物に接する回数が増えるほど、その対象に好印象を抱くようになるというものです。1回の接触時間は長い必要はありません。30分間じっくり視聴せずとも、たった10分間でも毎日視聴する方が、好感を抱きやすいのです。

毎日観るのって負担じゃない?と思われる方もいるかもしれません。しかし、だからこそ、10分間という短さが、忙しい大人女子には好都合なのです。化粧水を顔に叩き込んだり、むくんだ足をマッサージしたり、夜食を食べて少し休憩しながら観ればあっという間に終わってしまいます。10分間のアニメ鑑賞は、難なく生活習慣に取り入れることができます。

「丁寧な言葉遣い」は大人女子の生活を荒らさない

これは筆者の考えですが、大人女子は、自分を大切にすることの重要さを知っています。これは『暮しの手帖』が廃刊にならないことや、フランス風のライフスタイルが好まれる傾向などからわかります。精神的な充足を得るために、大人女子は身の回りを整え、振る舞いや言葉遣いに丁寧さを取り入れます。若者言葉を使う大人が白い目で見られるのは、年齢にそぐわない粗雑さを不快に感じるからです。

忍たまたちは大人顔負けの立派な敬語を使います。放映初期はいかにも男の子らしい乱暴な台詞も多々ありましたが、腐女子を意識した作風になってからは、基本的に丁寧な言葉遣いをするようになりました。「~していらっしゃるのですか」と、先輩や先生に敬意を持って接する忍たまたちの言動は、画面のこちらの生活空間を荒らされない安心感があります。
つまり、忍たまは、大人女子が物語の世界に引き込まれやすく、かつ負担になったり不快に感じたりするものがほとんどないため、疲れた心を休ませることができるのです。

楽しみ方は人の数だけ!原作、ミュージカル、聖地巡礼

最後に、アニメだけでは物足りない大人女子が、どのように忍たまの世界を楽しんでいるかをご紹介します。知識や教養、娯楽を知った大人女子は、お金と時間を贅沢に使って忍たまの世界を楽しみ、心身ともにリフレッシュして、また現実の世界で仕事や家事に励むのです。

【原作】丁寧な時代考証と細かく書き込まれたイラストは圧巻

忍たまの原作は「落第忍者乱太郎」という朝日小学生新聞で連載されている漫画です。連載開始は1986年と、なんと30年以上もの歴史があり、2017年12月現在62巻の単行本が出ています。アニメ化にあたりアレンジが加えられているため、原作では少し異なるストーリー展開を楽しむことができます。朝日新聞社及びNHKというカタいメディアに採用されただけあって、時代考証や忍者の武器、忍術など、イラストや解説は素晴らしい綿密さです。

【ミュージカル】画面から飛び出してきた忍たまたちに会える

2010年に初演が行われたミュージカルは、たちまち人気となって再演や新たな演目が重ねられ、多くのファンが足を運んでいます。アニメに想いを馳せて楽しむのもよし、今をときめく2.5次元俳優たちを愛でるのもよし。可愛らしい顔でアクロバティックに舞台中を駆け回るキャストたちは、まさしく忍者のたまごです。ただし上級生がメインとなるので、初めて観に行く際は、事前にキャラクターやストーリーを予習するのが良いでしょう。

【聖地巡礼】名前を見つけたときの嬉しさがたまらない

アニメの舞台やキャラクターにゆかりの地を訪ねることを、聖地巡礼と言います。忍たまには尼崎市周辺の地名を苗字に持つキャラクターが多く存在しており、数年前からこれらの地を回るファンが増えています。中には七松八幡神社のように、神職の方が忍たま談義に応じてくれるような場所もあり、地元でも歓迎されているようです。仕事に勤しむ大人女子は、有給などを活用して足を運んでいます。

より多くの人に愛されるアニメ作品へ

原作には新しいキャラクターが加わり、2018年の年明けからはミュージカル第9弾の上演が始まりました。四半世紀もの歴史の中で、多くのファンの心を掴んできたアニメ「忍たま」は、原作者、アニメ製作陣、その他多くの人の創意工夫によって、今後ますます人気を博していくことでしょう。
大人女子にオススメ、というスタンスで書かせていただきましたが、この記事をきっかけに、老若男女を問わず一人でも多くの方が、自分なりの忍たまの楽しみ方を見つけてくださることを願います。

この記事を書いた人

疲れた大人女子にオススメ!アニメ「忍たま乱太郎」の癒しの効能と楽しみ方

八田真梨子

ライター

福岡県出身、千葉県在住。読書好きで、大学では日本文化を専攻。現代文学と精神病理について学ぶ。大学卒業後、法律事務所事務員、翻訳会社事務員を経て編集者へ。消費関連や健康づくり、メンタルヘルスなどの記事の執筆・出版物の制作を行なっている。得意ジャンルは上記に加え、アニメ、漫画、旅行など。

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