中古住宅の売主必見!販促写真のクオリティを上げるためのテクニック

●中古住宅の室内写真はアイキャッチとしてとても重要。しかし特に居住中の物件の写真は、物件の印象が悪くなってしまうようなものも少なくない。
●通常は業者に物件を預けたら販促は営業マン任せになるが、物件写真の充実に関しては売主からアプローチできることもいくつかある。
●良い物件写真を撮影してもらうためには事前の片付けなどの準備が大切。
●写真の下手な営業マンに当たったら他の営業マンに撮影してもらうよう誘導する。
●室内撮影のポイントについて知識がないのなら、自力撮影はNG!
●どうしても自分で撮るしかないのなら、撮影のポイントを厳守して撮ること。
●少しでも早く高く売りたいなら紹介した写真対策をしっかり実践することをおすすめする。

一般的に、不動産売買で最も大切なのは仲介業者選びと言われる。もちろんこれは大当たりだ。自分の物件がどれだけ希望に近い額で売れるか、どれだけ早く売却できるか――。商品=物件は交換できない以上、売り方=仲介業者(担当営業マン)の手腕が頼りになる。

では、業者を決めて物件を預けてからは?何もかも営業担当者におまかせでいいのだろうか?

実は業者に物件を預けたあとにも、売主にはまだできることがある。それが物件写真対策だ。担当営業マンが撮影する外観・リビング・水回りなどの写真は、物件探し中の人々に物件の魅力を伝え、彼らの購入意欲を刺激する。写真の出来栄えは、物件の注目度を左右する重要なポイントだ。特に居住中の物件においては、売主のフォローが写真の出来に与える影響は大きい。

さて、良い写真を撮影するために一体売主には何ができるのか?
当記事では、大手不動産仲介会社で販促物の制作に携わり、賃貸物件の写真撮影経験もある著者が、物件写真のクオリティアップに重要なポイントと具体的なテクニックを紹介する。

その写真で大丈夫?マイナスになりかねない中古住宅の物件写真

物件写真は、Web上やチラシにおいて仲介業者へのコンタクトを促すアイキャッチの役割を担っている。ところが中古住宅の物件写真においては、消費者の購入意欲を減退させてしまうような、本来の役割を果たせてない写真も少なくない。

担当営業マンに物件を預けたら、Web上やチラシに掲載される写真を自分の目でしっかりチェックしてみて欲しい。

「実物より狭く見える」
「日当たりは良いのに部屋の中が暗い」
「撮影前に片付けたのに散らかって見える」

こんなマイナスの印象を与える写真になっていないだろうか?

中古住宅の購入を検討している人々は、新築同然とまでは期待していないものの、やはりなるべく綺麗に使用されていて条件のいい物件に住みたいと思っているもの。他にも選べる物件があるのに、見るからに狭く、暗く、使用感たっぷりで傷んでいそうな部屋を内見したいと思うだろうか?よほど他の条件が突出して良くない限り、わざわざ仲介業者へ問い合わせるのは少数派だろう。

他の条件を確認する前に選択肢から外され、内見もされずいつまでも売れ残ってしまう。物件写真がマイナスの印象を与えると、そんなことが起こりうるのだ。

写真撮影の前に売主ができること

物件写真のマイナス要素、それは「狭さ」「暗さ」「生活感」だ。この3つをどれだけ写真から排除できるかがポイントになる。

悪い物件写真の例

外観

・戸建の玄関、門の前に自転車や植木鉢などが置かれている。

室内

・テーブルの上の布巾などが写り込んでいる。
・窓付近に遮蔽物がある。
・部屋の中に家具や荷物が多く圧迫感がある。

水回り

・設備に水滴が残っている。
・小物が無造作に置かれている。

写真撮影の対策

外観

戸建の門の前や玄関前に物が無造作に置かれていると「住んでいる感」が出過ぎてしまう。見えないところに片付けるか、お洒落に見えるようにレイアウトしよう。
撮影範囲にバルコニーが入るようなら、布団や洗濯物も取り込んでおくこと。

リビングダイニング

床に物を置かない。テーブルもインテリア目的の花など以外は置かないようにしよう。ソファなどに掛けられたファブリックは、写真では野暮ったく見えてしまう。外しておいたほうが無難だ。
窓付近の日差しを遮る遮蔽物は移動しておくこと。

リビング以外の居室

室内に家具が多いと圧迫感を与える。改善方法は壁の見える面積を増やすこと。移動できるものは外に出してから撮影するのが望ましい。それが難しければ、収納棚の中に少し余裕を作ったり、家具の上に置いている物をどかしたりと、少しでもすっきり見えるようにしよう。

水回り

水滴が写真に写り込むと印象最悪!拭き取っておこう。
小物はなるべく整然と見えるように置くこと。キッチンの生活感を隠すのは大変だが、ここは頑張って欲しい。食器類は全て食器棚へ、冷蔵庫のメモなどは全て剥がしておく。
忘れがちだが、フックなどに掛けられたタオルも必ず隠そう。シンクにスポンジと洗剤のみがある状態にまでできれば上出来だ。

これはNG!売主の間違った努力

ここまで読んでみて、「営業マンが撮影に来る日に合わせて片付けるのは大変だ。自分で撮影しよう」と考えた人もいることだろう。だが、もしいたらそれは思い留まって欲しい。

大手不動産会社で販促物を制作していた筆者は、売主自身の撮影写真をWeb上やチラシに掲載したことが何度かあった。正直なところ、スマートフォンや普通のコンパクトデジカメで撮影されていたり、撮影アングルに問題があったりするクオリティの低い写真がほとんどで、販促物に掲載することに抵抗を覚えたものだ。
住宅の写真撮影には相応しいカメラが必要で、上手く撮影するには押さえておかなければならないポイントがいくつもある。必要な機材や撮影テクニックについて知らないなら、止めておいたほうが賢明だ。

営業マンは写真のプロではない。売主が撮影した写真のクオリティが低いと思っていても、天秤にかければ売主との関係を良好に保つ気遣いが勝ってしまう。強引に頼まれたわけでなくても、売主に写真を提供されれば使用するしかないのだ。

何かの理由で「自宅に他人を入れたくない」という人もいるかもしれないが、物件を売りたいならひとまずは我慢して撮影に応じたほうが良い。

撮影下手・写真軽視、そんな営業マンに当たってしまったら

撮影下手・写真軽視の営業マンの対処法

写真に不満が生じたら、「もし上手い人がいたらその人に撮影に来て欲しい」と再撮影を頼んでみよう。誰でも入れる状態の空家、空室の場合、撮影に行くのは担当営業マンに限らない。近くに用のある他の営業マンに頼むこともある。ということは売主さえOKすれば、居住中の物件でも担当営業マン以外に撮影してもらうことが可能なはずだ。

「失礼になりそうで頼みにくい」と思うかもれないが、大丈夫。実は写真の下手な営業マンには大抵の場合自覚がある。掲載写真を見た上司などから何度も注意されているからだ。
指摘され慣れている上に、写真撮影は自分のメインの仕事でないこともわかっている。多少はっきり伝えたところでそれほどのダメージは受けないだろう。他の人に撮影に来てもらえるよう上手に誘導しよう。

<撮影下手・写真軽視の例>
・スマートフォンやiPadで撮影している。
・広さのある画を撮影するためにポジショニングを工夫していない。
・直立姿勢の目の高さにカメラを構えて撮影し、見下ろすようなアングルになっている。
・撮影の邪魔になりそうなものを置いたまま撮影している。

代理撮影を頼めない場合の対処法

もし代理撮影を頼めなければ、残る手段は2つ。自分でプロやセミプロレベルのカメラマンに撮影依頼をするか、自力撮影するかだ。前述したとおり、自力撮影はできればおすすめしたくない。しかし他に手段がいのであれば仕方ないので、下記のポイントを厳守して撮影しよう。

<物件写真撮影のポイント>
カメラ選び
・広角レンズ(焦点距離:35mmフィルム換算24mm以下)のものを用意する。
・ISO感度400、ホワイトバランスはオートに設定。
・手ブレ機能ON、グリッド線ON、フラッシュはOFF。

●撮影方法
・できれば午前中に行う。遅くとも午後3時頃までには撮影終了する。
・室内の明暗差が大きい場合は露出補正をマイナス値に動かす(暗めの写真になるが、暗い分には後から修正が可能)。
・室内撮影の際はカメラをお腹辺りの高さ(ソファに座ったときの目線の位置)に構える。※水回りのように狭い場所は除く。
・建物の外観や室内の縦横のラインがグリッド線と平行になるように撮影する。
・室内は部屋の四隅全てから撮影する。

少しでも早く高く売るために!室内写真のクオリティは重要ポイント

物件写真は購入の決め手となるものではない。しかしクオリティが低いと物件を見てもらうことさえ難しくなる。筆者の経験で言えば、良い写真がない物件ほど長く残り、何度もチラシを作るはめになっていた。写真が下手な営業マンでも営業成績が悪いとは限らなかったが、写真に力を入れて充実させる営業マンは安定して結果を出している人が多かったのも確かだ。

持ち家を買い換えようという人の中には、自宅の売却が決定してから住み替え先を購入する方法を選ぶ人も多いだろう。そういう人にとっては特に居住中の物件写真は力の入れどころになる。少しでも高く早く売れるよう、売主からできるアプローチをぜひ実践して欲しい。

この記事を書いた人

中古住宅の売主必見!販促写真のクオリティを上げるためのテクニック

猫野 千秋

ライター

千葉県出身、神奈川県在住。
スポーツメディアの雑誌編集、映像制作等を経てライター業を開始。ライター業と兼業しながら不動産会社で販促物の制作に携わり、2017年秋より専業ライターに。
得意分野は住宅、インテリア、スピリチュアル、観光。趣味は海外ドラマイッキ見、香港・中国のアクション映画鑑賞、神社めぐり、猫。

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