中古住宅の購入には、トラブルがつきものです。筆者である私自身も、中古物件購入の際にトラブルに見舞われたことがありました。当時の私は、すべての判断を不動産会社に任せてしまったことにより、欠陥のある建物を購入してしまったのです。
その後、宅建の資格を取得してハウスメーカーに転職した私は、不動産の仕事や勉強を通じて、法律に違反していたり、利己的であったりする不動産業者が存在することを知りました。すべての業者が悪徳なわけではありませんが、やはり「業者に任せっきり」は危険であると痛感しています。
当記事では、筆者自らの経験をもとに、不動産業者選びのコツや契約に関する注意点、建物のチェック方法などを解説します。
不動産業者選びは最重要ポイント
物件選びのパートナーである不動産業者は、信頼できる存在でなければなりません。中古住宅の購入に限らず、不動産取引において必ずといっていいほどお世話になる不動産業者。多くの人は、この不動産業者に任せっきりになっていることと思います。この不動産業者が、自分たちの利益ばかりを追求していたら、私たちの大切な不動産はいったいどうなってしまうのでしょうか。
不動産の関するトラブルは、裁判に発展するケースもあります。しかしながら、裁判に費やす時間や費用のことを考えれば、やはりトラブルは未然に防ぐべきであると言えるでしょう。残念ながら、世のなかには悪徳な不動産業者が少なからず存在します。法律で定められている金額以上の仲介手数料を請求したり、専任の宅建士がいなかったり……。なかには脅迫まがいの勧誘をする業者まであるようです。
また、物件に関する告知や説明の義務違反や物件の調査を怠ったために消費者が損害を被ってしまう場合もあります。このような業務怠慢の業者にも注意が必要です。
信頼できる不動産業者選びのコツ
とはいえ、初対面で業者の正体を見抜くのは難しいものです。そこでまずは、担当者の身だしなみや口調、接客態度などをチェックしてみましょう。併せて、その業者が行政処分を受けていないかどうかを役所などで調べるという方法も効果的です。
理想は、「お客さんの立場に立ち、希望に沿った物件を親身になって探してくれる」そんな業者ですね。しつこい勧誘がないか、こちらの話をきちんと聞いてくれるか、物件の悪い点もきちんと説明してくれるか……など。売り込み色が強い業者は避けたほうが良いでしょう。
私が以前勤めていた会社では、ノルマがとても厳しく、アポの一件でも取れなければ帰宅できない雰囲気でした。常に罵声や怒号が飛び交い、全体会議では一人ずつ吊し上げられ、刃物でも突き付けられて仕事をいるような緊迫感が常にあったのです。このような環境ですと、やはりお客さんのことを考える余裕などは到底ありません。
また、営業のため不動産業者に訪問した際には、法律違反をしている業者やいい加減な業者を目の当たりにしたことがあります。専任の宅建士(当時は宅建主任者)がいない業者には驚きましたが、もっと驚いたのは、その業者の社長さんが宅建士の設置義務についてなにも知らなかったことです。また、存在しない物件や契約済みの物件を広告に出してお客さんを誘い、別の物件を勧める「おとり広告」も平然とおこなわれていました。
契約時に確認しておきたいポイント
契約成立のタイミングを知っておこう
一般的に売買契約が成立するタイミングは、契約書に捺印した瞬間ではなく、「買い主の申し込みと売り主の承諾」という口頭での約束が成立した瞬間です。一方で、不動産のように高額なものの場合はそうもいきません。不動産の場合は、宅建士による重要事項の説明を受け、売買契約書に捺印した段階で契約成立となります。ただし、不動産販売における実際の取引においては、売り主と買い主による口頭での約束を機に、両者が不動産の引き渡しに向けてアクションを起こす、という流れが一般的です。
この段階で、契約は成立していないからといって「申し込みを撤回します」などと言えば、大きなトラブルになってしまいます。あらかじめローン特約(ローンが不成立だったら、契約を白紙に戻すといった特約)なども考慮して、不動産業者としっかり話し合う必要があるでしょう。
契約内容の確認は「必ず・早めに」が肝心
中古住宅購入の際は、購入の意思がある程度固まったら、正式に購入の申し込みをする前に、こちらから積極的に契約内容の確認をするようにしましょう。先述したとおり、実際の不動産取引では、両者が口頭で約束を交わし、その数週間後に書面での正式な売買契約がおこなわれます。ここで初めて契約書を目にすることになります。契約当日、専門用語だらけの契約書を見せられ、「軽く説明を受けて捺印しておしまい」では大変危険です。
私が中古住宅を購入した際のケースで言えば、引き渡しから間もなく雨漏りが発覚しました。不動産業者や売り主に問いただしてみても、「雨漏りはなかった」との一点張り。もしかしたら雨漏りは本当になかったかもしれませんが、どちらにせよ後の祭りです。
不動産業者の話によると、「契約時には以下の特約があった」とのことです。
・現況有姿の引き渡し
・売り主は瑕疵担保責任を負わない
これはつまり、「特に手を加えずそのままの姿で引き渡し、たとえ建物に欠陥があっても、売り主に責任はない」ということです。不動産業者や売り主に対する怒りというより、自分が無知であったことに対する腹立たしさがありました。早い段階で契約書を確認し、このような特約は可能であれば見直すよう交渉すべきでしょう。
ここがポイント!中古住宅の選び方
中古住宅は新築と違い、建物の老朽化が進んでいるケースも多くあります。後悔しないためにも、以下の点をチェックしておきましょう。
1)外壁の亀裂はないか
2)床の異音はひどくないか
3)ドアや窓の開閉はスムーズか
4)天井のシミ、カビはないか
5)日当たり、風通しは良好か
また、近所の住民に周囲の環境を聞いてみるのもひとつの手です。思わぬ事実(シロアリ被害など)を聞くことができる場合があるからです。その際は、近所にどのような人が住んでいるかも確認できるので、まさに一石二鳥です。
不動産知識は自らも持つべし!
アパート経営などといった不動産投資の分野においても、経営者と不動産業者との間でトラブルが多発しています。しかし、ほとんどのケースが法的になんら問題はなく、不動産業者の説明不足と経営者の勉強不足が原因となっています。不動産投資に限らず、中古住宅購入の場合にも、トラブルを防止すべく多少なりとも勉強が必要です。
ほんの一部ではありますが、悪徳で利己的な不動産業者が存在することは事実です。だからこそ、購入の流れや不動産業界の現状などについての勉強が必要なのです。中古住宅とはいえ、決して安い買い物ではありません。「知識を身に付け、良い不動産業者と出会う」ことが、理想の中古住宅に巡り会うための最強の武器と言えるでしょう。