みなさんは、「自己肯定感」という言葉を聞いたことはありますか?鬱病を患いながら、障害のある子どもたちと関わる仕事をしてきた筆者が、豊かな人間性と心の健康のために最も重要なものとして辿り着いたのが、自己肯定感という要素です。筆者自身、自己肯定感が低いがゆえに、いじめや鬱病、仕事が長続きしない……など様々な問題を抱えて生きてきました。
当記事では、筆者が心理療法や認知行動療法を受けながら、通信制大学や独学で学んだ心理学・精神医学の知識をもとに、自己肯定感を高めるための育児のコツについてご紹介します。
自己肯定感=ありのままの自分を認める気持ち
自己肯定感とは、文字通り「自分を肯定できる感情」のこと。一言で言うと「ありのままの自分を”これでよい”と思える気持ち」です。決して「優れた自分」を誇りに思うことではなく、様々なことの優劣に関わらず、あくまで「今、ここにいる自分」を受け入れ認め、どんな自分でも好きになるという、生きていく上でとても重要な感情なのです。
日本の子どもは自己肯定感が低い
文部科学省が平成27年に高校1年生から3年生を対象に実施した調査によると、日本の子どもの自己肯定感はアメリカや中国などの諸外国に比べ低い傾向にあり、全体の約70%が「自分はダメな人間だと思うことがある」と回答しています。また、「自分自身に満足している」と答えたのは約46%で、これは諸外国に比べて非常に低い結果となっています。
自己肯定感は学力にも関係する
さらに、小学校6年生と中学校3年生を対象にした、学力と自己肯定感の関係を調べる調査では、各教科の正答率が低い子どもほど、「自分にはよいところがある」と回答した割合が低いことがわかっています。また、「自分にはよいところがある」「自分が好きだ」と回答した子どもほど、物事に達成感を得たり失敗を恐れず挑戦したりする気持ち、自分には自分らしさがあるという気持ちが非常に高いことがわかっています。
自己肯定感が低いと生きづらさを感じてしまう
自己肯定感が低いと、「自分は他人より価値が低い」と思ってしまいます。その結果、他人に嫌われたり自分の評価が下がったりすることが怖くて、「ありのままの自分」をむき出しにすることができません。自分を信じることができないため他人も信じることができなくなり、「どうせ自分なんか」といつも投げやりで、辛いことがあっても立ち向かう力がなく、すぐ投げ出してしまいます。
反対に、他人の評価を気にするあまり頑張りすぎてしまう傾向にもあります。自分の気持ちを正直に伝えることも苦手なため親しい人間関係も築きにくく、結果、生きづらさを感じるようになってしまうのです。
自己肯定感が高いとチャレンジ精神旺盛になる
自己肯定感が高い場合は、自分を信じることができ、色々なことにチャレンジしようという気持ちがうまれます。また、自己肯定感が高い人は子どもの頃から無条件に肯定されるということを多く経験しているので、成功しても失敗しても、どんな自分でも「ありのままの自分」として受け入れることができるのです。褒められれば素直に喜び相手に感謝することができますし、誰かから怒られたときも必要以上に落ち込まず、より自分を伸ばすためのアドバイスとして受け入れることができます。
自己肯定感を高める言葉がけのコツ
【1】頑張っている過程を褒める
たとえ失敗しても、諦めずに頑張ったことを褒め、子どものモチベーションを上げましょう。
例)
「頑張っているね」
「失敗したけど一生懸命頑張ったんだね」
「難しいのに、頑張っているね」
「頑張っている過程を褒める」の反対は「できた成果を褒める」です。もちろんできたことは褒めてあげて問題ないのですが、できたときしか褒めてもらえないと、「できない自分には価値がない」と思うようになってしまいます。できたときもできなかったときも、その頑張った姿勢を褒めてあげてください。
【2】個人の成長を褒める
その子個人の成長を認め、褒めてあげましょう。
例)
「この前より上手になったね」
「〇〇ちゃんのペースで頑張っているんだよね」
「個人の成長を褒める」の反対は「他者との比較を評価する」です。「〇〇ちゃんよりできてたね」「〇〇くんより下手だったね」と他者との比較ばかりされていると、「自分個人の本当の価値」がわからなくなってしまいます。
【3】子どもの存在を認める
もっとも大切なことは、子どもの存在そのものを認める声かけです。無条件で子どもを肯定する言葉かけが、なによりも自己肯定感を高めてくれます。
例)
「〇〇ちゃん、大好き!」
「おいしそうに食べてくれてママ嬉しいな」
「〇〇ちゃんと遊んでいると楽しいな」
叱るときは子どもに伝わりやすい言葉で
具体的な言葉で伝える
「ほら、ちゃんとして!」「騒がない!」など……。普段、思わずこんな言葉で叱っていませんか?ついつい言ってしまいがちな言葉ですが、これでは子どもにどうしてほしいかが伝わりません。「座っててね」「静かにしててね」と、具体的に、してほしいことを伝えましょう。
「Iメッセージ」を使う
「Iメッセージ」とは、「私」を主語にした言葉のことです。
例)
「ママはそれ、やめてほしいな」
「パパは、それはやっちゃいけないことだと思うよ」
「Iメッセージ」の反対は「YOUメッセージ」です。「〇〇ちゃん、やめなさい!」「〇〇くんのしていることは悪いことだよ」と子どもを主語にしてしまうと、子どもを否定することになってしまいます。
親は子どもの「心の安全基地」
子どもにとって親とは、「どんなことがあってもこの人は自分の味方をしてくれる」といういわゆる「心の安全基地」です。この安全基地が、自己肯定感を高める基盤となります。子どもが心から「自分は愛されている」と感じられるように、無条件の愛情をいっぱい与えてください。そして、わが子のありのままの成長を認めてあげてください。
最後に、何より大切なのは、親であるお父さんお母さんが自分自身のありのままを認めてあげることです。仕事、家事、育児と大変なことがいっぱいな毎日ですが、「今、ここにいる自分」を受け入れましょう。そんなお父さんお母さんの姿を見て、子ども自身も自己肯定感を育んでいくことができるはずです。