その肩こり、ただの疲れではないかも?「触れる」ことでわかる体の不調(看護ライター)

●熱もなく、体も熱くないのに顔だけが熱いという状態が長く続く場合は、何らかの体の変調サイン。
●首や肩が慢性的にこっている方は多い。だんだんと酷くなるような場合はただのこりではなく、重大な疾患が潜んでいることもある。
●手に力が入りにくい場合は、脳梗塞の前兆かもしれない。
●乳がんは自覚症状がなく、ごく初期のしこりを見つけるためには、胸を触ってくまなく丁寧に探すことが大切。しかし、しこりがあっても悪性とは限らない。
●お腹の右側か左側を指で触って固い感じがあったり、痛みがあったりしたら、それは宿便が原因の可能性がある。宿便がたまりすぎると激痛が生じる場合も。

普段皆さんは、自分の体に直接「触れる」機会はどのくらいありますか?

毎日なにげなく触れていると思いますが、意識的に触れる機会は少ないかもしれません。体に触れることで得られる情報は実に多く、体調に関するたくさんの変化に気づくことができます。病気の早期発見につながるケースもあるかもしれません。

当記事では、看護師として意識的に患者さんに触れる機会が多い著者の実体験を通して、触れることでわかる体の変調についてご紹介します。「体に触れる」ことの大切さを感じていただけましたら幸いです。

顔に触れてわかる体の不調

「今日は顔が赤いぞ。お熱さんかな?」子供のころ、母親はおでことおでこをくっつけて私の熱を感じ取っていました。ある程度高熱が出ると顔が赤らみ、触ると熱さを体感するのでわかりやすい症状と言えるでしょう。
しかし、熱もなく、体も熱くないのに顔だけが熱いという場合があります。一時的でなく、その状態が長く続く場合は、何らかの体の変調を示していると考えられます。のぼせたり、くらくらしたり、顔が痛かったりするような状態が続く場合は、ホルモンバランスの乱れや甲状腺の機能異常などの可能性がありますので、一度医療機関に相談してみることをおすすめします。
反対に、体は温かいのに顔だけがヒヤッとして冷たいという状態が見られることもあります。冷房が効きすぎているところに長くいると直接かかる顔の温度が急激に冷え、そのうち内臓にまで冷えが回ってしまい、体のあちこちの不調につながってしまうことがあります。顔だけが冷えるという状態も体によい影響を与えないので、注意しましょう。

首や肩に触れてわかる体の不調

首はリンパ節の宝庫と言われています。首を温めると冷えが解消されるという話を聞いたことがある方も多いことでしょう。首には色々なシグナルが隠されています。
首のリンパ節の腫れは、触ると「ゴツゴツした感じ」などで分かる場合があります。そのゴツゴツも、触ると痛みがあるかどうか、柔らかいものか硬いものか、という情報が大事になります。
また、触ると首が異様に硬い方がいらっしゃいます。患者さんの中にも首や肩が慢性的にこっている方は多く、「あん摩やマッサージに通っているんだけど、全然治らなくて……」と言われたりします。何回通っても治らない、だんだん酷くなる、などといった場合はただのこりではないかもしれません。ヘルニアなど首特有の病気である可能性もあります。
また、こりだけではなくしびれなどの症状が伴う場合は、脳神経系に異常がある場合もあります。これはまれなケースですが、治らないこりの原因を調べてみると、がんの転移によるものだったこともありました。湿布やマッサージなどでは全くよくならないという方は一度医療機関に相談してみてください。

手に触れてわかる体の不調

当記事のテーマである「触れる」という行為は、手があって初めて成り立つものです。手は身近な存在で、人の手に触れる機会は他のところに触れる機会より断然多いと思います。
普段から手が温かい人が異様に冷たかったりした場合は、何か原因があると考えられます。ただ寒いところにいて冷えているだけなら、温めると治ります。温めてみても変わらない場合は病的な可能性があります。
併せて、手の色にも注意してください。普段より白いですか?爪の色は変化していませんか?手が冷たい以外の症状はありませんか?貧血などを起こしていると、手が冷たく真っ白になったり、爪の色が紫色になったりします。これは手を温めるだけでは治りません。動脈硬化の進行により手が冷たくなる症状が現れることもあります。

手に力が入りにくい場合

手を触れることでわかる変化は、温度だけではありません。以前、入院中に「手に力が入らなくなった」と訴えた患者さんがいました。急いで手に触れてみると、片方は普通に力強く握り返せるのに、もう片方はかなり弱い力しかないのです。すぐに頭部CTを依頼すると、ごく初期の脳梗塞を起こしていたことがわかりました。手は身近な存在であり、手の異常から異変に気付くことも多いです。

胸に触れてわかる体の不調

2017年6月、小林麻央さんが34歳という若さで乳がんを患い、亡くなりました。乳がんという病気の恐ろしさを感じた人も多かったと思います。乳がんは自覚症状がなく、定期的に乳がん検診を受けたり、胸を触ってしこりを確認したりしないと早期発見が難しい病気です。
ごく初期のしこりを見つけるためには、くまなく丁寧に探すことが大切といわれています。乳がんの患者さんの中には、しこりを見つけても、怖さが先だって病院に行くのを躊躇している間に大きくなってしまったという方もいます。
しかし、しこりのすべてが悪性とは限りません。良性の場合もありますので、必要以上に怖がらず見つけたらすぐに診察を受けることをおすすめします。

胸を押して痛みがある場合

胸に触れてわかる異変はしこり以外にもあります。普段は特に何も感じないけれど、胸を押すと痛みを感じるという場合があります。原因は数多く、危険度を把握しにくいことも胸痛の特徴です。
肺炎で胸が痛くなることもありますし、左の胸だけが痛い場合は心臓系の病気が隠れている可能性もあります。なんとなく体がだるい、と言っていた患者さんの胸に触ってみることで、痛みを知覚し、心筋梗塞が見つかって緊急手術になった症例もありました。「痛み」を放置しないことが重要です。

お腹に触れてわかる体の不調

子供のころに読んだ『地球少女エリカ 世界一周ヨットの旅』に出てくるエピソードの中で、少女エリカがヨットの旅の途中でお腹に激痛が走り、母親に訴える場面が出てきます。母親はエリカのお腹を触り、ポンッとたたいて「トイレに行ってきなさい」と言います。そして、エリカはトイレに駆け込んで用を足し、痛みは治まったという内容でした。お母さんはエリカのお腹に触れることで、すぐにその正体を見抜いたのです。
便はため続けると、時に激痛を伴います。激痛により救急車で運ばれ、CTを撮ってみたら便の塊が映し出された、というケースは珍しくありません。便秘が原因で腸閉塞を起こす場合もあり、命に関わる危険な事態に陥ることもあります。「最近便が出ていないな」と感じたら、一度お腹に触れてみてください。お腹の右側か左側を指で触って固い感じがあったり、痛みがあったりしたら、それは宿便である可能性があります。

他にも腹痛の原因は多々あります。お腹といっても、お腹の上の方が痛いのか、下の方が痛いのかなど、場所によって病気の種類も変わってきます。触って離したときに強い痛みが走る場合や、お腹がカチカチで少し触るだけで激痛が走る場合など、痛みの程度によって緊急手術が必要になる場合もあります。

エリカは軽い便秘が原因でしたが、お腹の激痛を自己判断だけで対処することは危険です。まずは診察を受けることをおすすめします。

じっくり体に触れてみよう

今回は、体の部位別に「触る」ことでわかる体の不調についてお伝えしました。体の上半身部分に限定していますが、もちろん下半身部分にも「触る」ことでわかる体の不調もあります。それについては、またの機会にお伝えできればと思っています。
体に触れることは、自分自身を知るよい機会になるかもしれません。皆さんも是非一度じっくり体の各部位に触れてみてくださいね。

この記事を書いた人

その肩こり、ただの疲れではないかも?「触れる」ことでわかる体の不調(看護ライター)

まさ

ライター

滋賀県出身。滋賀在住。琵琶湖をぼーっと眺めることに幸せを感じる滋賀愛全開のアラフォー。
得意ジャンルは、ナース経験を生かした看護・医療分野。他、高齢者問題、エンタメ、旅への関心が高い。
趣味は旅、温泉三昧、ドラマのまとめ見(特に医療ドラマ)、映画鑑賞など。

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