直すのではなく育てる!食育実践プランナーが語る「子どもの好き嫌い」解消法(食育ライター)

●子どもの好き嫌いは「五感」と「味の記憶」で決まる。
●楽しく食事をすることで、子どもはそれを「楽しい記憶」として蓄積していく。
●無理やり食べさせられた経験は、「嫌な記憶」となって好き嫌いにあらわれる。
●「孤食」が食事をつまらないものとし、好き嫌いを生じさせる。
●親がおいしそうに食事をすれば、子どもは安心する。
●好き嫌いは「直す」のではなく「育てる」ものである。

保育士という職業柄、子どもの偏食に悩むお母さんの話を聞く機会が多くあります。試行錯誤して作った料理を食べてもらえなかったときのショック、「食べなさい」と怒ってしまったときの後悔など……。お子さんを傷つけてしまい、そして悩み、どんどん自分を追い詰めてしまう、といった悪循環にはまってしまった方もいました。

今では悩みを聞く側にいる私ではありますが、子どもの好き嫌いに悩まされていた時期ももちろんあります。「食べないと大きくなれないよ」と怒ってしまったことも一度ではありません。好き嫌いは、すべてのお母さんがぶつかる大きな壁であると言えるでしょう。

食べる力、そして生きる力を養うこと――。これこそが「食育」です。この経験によって食育の大切さを実感した私は、食育実践プランナー資格を取得しつつ、食についての学びをスタートさせました。
当記事では、食育実践プランナーとして得た知識をもとに、子どもの好き嫌いを克服する方法についてご紹介したいと思います。

好き嫌いは「五感」と「記憶」で決まる

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「五感」がおいしさを認識する

好き嫌いを決める要因のひとつは、「五感」です。なんとなく分かっているとは思いますが、食べものの好き嫌いは視覚・臭覚・聴覚・触覚・味覚によって判断されています。これらの感覚をもとに、人は「安全に食べられるか」「以前食べたことがあるか」を確認するのです。

白くて艶のあるご飯はおいしそうに感じるが、黄ばんだご飯はお腹が痛くなりそうな気がする……これは「視覚」による判断です。いい香りのするうなぎの蒲焼きは食べたくなるが、焦げ臭いお肉は食べたいと思わない……これは「臭覚」によって判断されています。同様にして、魚が焼かれる音は「聴覚」、野菜の舌触りは「触覚(食感)」で捉え、この情報をもとに食物の安全性を確認してます。そして、好き嫌いに大きく影響するのは「触覚・味覚」、安全確認的要素が強いのは「視覚・臭覚・聴覚」であるとされています。

感情とリンクして「味の記憶」に

好き嫌いを決めるもうひとつの要因に、「味の記憶」というものがあります。以下の2つのケースを見てみましょう。

【A君のケース】
おかずのなかにあったシイタケを避けていたら、お母さんがとても怖い顔で怒り始めた。僕は泣きながらシイタケを食べた。

【B君のケース】
お母さんがシイタケをとてもおいしそうに食べているので、僕も食べてみたくなった。すると、意外にもシイタケはおいしかった。

両者共に「シイタケを食べる」という行為は同じではありますが、植え付けられた印象が異なっています。A君のように「無理やり食べさせられた」という嫌な体験をすると、その食べものの味を「不快な体験」と結びつけて脳に記憶していきます。そして次にシイタケが出てきたときには、その不快な体験が呼び起こされ、「食べたくないもの」になってしまうのです。

一方で、B君の場合はどうでしょうか。次にシイタケが出てきた際には「心地よい経験」がよみがえり、また食べたいという気持ちになります。
このようにして、人は食べものの味を感情と共に記憶していきます。これが「味を記憶する」ということです。

「孤食」が好き嫌いを生み出す

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お手本がいない食事はNG

みなさんは「孤食」という言葉をご存じでしょうか。孤食の「孤」は、孤独を意味しています。つまり孤食は、ひとりで食べることを意味する言葉です。孤食の場合、そこに人との交流はなく、同時に見本となる人もいません。

幼少期は、様々なものを見てマネをして上手になっていく「見よう見まね」の時期でもあります。そのような時期にひとり淋しく食事をし、お手本がいないままに箸を進めていたとしましょう。
ひとりぼっちで食べるため、当然食事は楽しくありません。「楽しくないから食べたくない」、または、「好きなものだけを好きなように食べてよい」という気持ちが芽生えていくでしょう。お手本になる人物もいないので、その考えを正すこともできません。

一緒に食べることからはじめよう

一緒に食べること、これが好き嫌いをなくすための第一歩です。これにより、「食事はひとりぼっちの淋しい時間ではなく、家族と一緒に食べる楽しい時間である」ということを感じられるようになります。

そして、その楽しい時間のなかで子どもたちの本能をくすぐるのが「マネっこ」です。子どもは、一番身近な存在である「親」を見本として学習していきます。お父さんお母さんがおいしそうに食べる姿を見れば、「自分もそれを食べてみたい」「自分でも食べられるはず」という気持ちになっていくことでしょう。

一緒に食事をして、おいしそうに食べる姿を子どもに見せる――。これがマネっこ本能をくすぐる「見よう見まね」につながり、最初の一口がはじまるきっかけになるのです。

「ほめて伸ばす」は食育も同じ

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ほめられた記憶が好き嫌いをなくす

興味を示したら、手に取ったら、口に入れたら……その都度、必ずほめる!これが食育における重要なポイントです。ささいな進歩でも、見逃さずほめてあげましょう。

食べることができたならば「たくさん食べられたね。えらいね。」などと言葉をかけ、しっかりとほめてあげます。食べ終わったらギュっと抱きしめてあげるのもいいでしょう。頭を撫でてあげるだけでもOKです。

ほめられたことで「認められる喜び」を感じ、子どもたちはそれを自信へと変えていきます。これらがよい感情の記憶として残り、「また食べてみよう」という気持ちが芽生えるのです。

好き嫌いは「直す」のではなく「育てる」

ではここで、私の息子の「ナス焼きがおいしかった!」という日の出来事をご紹介します。
私の祖父が家庭菜園でナスを栽培しているため、夏になると我が家での食卓では毎日のようにナス焼きが並びます。土が良いのか、祖父の育て方が良いのか、できあがったナスは数こそ少ないものの、そのナスは毎年甘くておいしいものとなってました。

ただ、息子は小さいころからナスが嫌いで、口に入れることさえできません。ただ、息子以外は祖父の育てたナスが毎年楽しみで、ナス焼きも大好き。「うちのナスは本当においしい」と絶賛しながら、我先にと食べていました。
そんなおいしいナスなので「食べてみる?」と毎回息子を誘いますが、全く食べる気はなく「いらない」の一言。無理やり食べさせることもなく、その年の夏が終わっていくのでした。

ところがある年の夏、ふと息子が「食べてみようかな?」と言ったことがあったのです。「これはチャンス!」とばかりに、ナス焼きを息子のお皿に盛ってみました。すると、「あっ!おいしい!」と言ってパクパク食べはじめたのです。

苦節8年……。息子は大嫌いであったナスをついに克服することができました。これは、家族と過ごす楽しい食卓のなかで、毎年おいしそうに食べる親の姿を見続けたことで起こった食育の成功例であると言えるでしょう。このようにして、子どもの好き嫌いは「無理やり直す」のではなく「コツコツ育てる」ことが大切なのです。

好き嫌いの克服は小さな積み重ねから

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家族のありかたが多様化する昨今。共働きなどといった理由で、家族そろってゆっくり食事をすることが難しいご家庭も多いと思います。それでも、ほんの少しだけで構いませんので、ご家族で食卓を囲む時間を増やしてみることをおすすめします。
10分だけでもいいので顔を見ながら一緒に食事をする機会を作る、1分だけでもいいので一緒に食事をする時間を延ばす――。おいしさを共有できる時間を少しずつ積み重ねていければ、それが好き嫌い克服の近道になるはずです。

地道な子育ては、お子さんがお腹に宿ったときからすでにはじまっています。食育も同じで、これからも地道な努力が必要になるでしょう。好き嫌いは短期間で直すものではなく、長い時間をかけて育てるもの。親がおいしそうに食べる姿を見て覚えた食事への楽しさが、一口また一口と続いていくのです。

この記事を書いた人

直すのではなく育てる!食育実践プランナーが語る「子どもの好き嫌い」解消法(食育ライター)

yumiko

ライター

現役保育士&食育実践プランナー。
得意ジャンルは食育、子育て。
趣味はマンガ、映画鑑賞、スポーツ観戦で叫ぶこと!
シングルマザーで頑張り中!

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