今、巷には香りづけされたアロマ商品があふれている。洗剤や化粧品はもとより、文具やトイレットペーパーにいたるまで、ありとあらゆる生活雑貨に「香り付き」が存在する。では、商品棚にずらりと並ぶアロマ商品の中から、人々はなにを基準して商品を選んでいるのか。無意識に選んだと思っていても、そこには自分でも気づかない「意図」が含まれている。
AEAJ認定アロマセラピストである筆者は、これまで多くの女性クライアントにオリジナルアロマをブレンドしてきた。好みをヒアリングしながら香りを仕上げるうち、ある傾向に気がついた。もちろん個人差はあるのだが、職業や性格的な志向による人との付き合い方が似ていると、香りの好みも似ていることが多い。
考えられるのは、周囲から求められる役割や自分像を、無意識のうちに感じ取り、それに見合った香りを選んでいるということ。女性にとってアロマ商品の香りは、自分の内面を表現するためというより、社会生活に順応するため身にまとう制服のようなもの、という要素が大きいのかもしれない。
古今東西、人間関係で悩む人は多い。人との付き合い方や距離の取り方で悩んだとき、それらを解決する糸口として、戦略的にアロマ商品を選んでみてはどうだろうか。香りを身にまとい、それに見合った自分になりきってみる。次第に内面にも変化があらわれることだろう。
自分が変われば周りも変わる。人間関係は鏡のようなものだから。戦略的に香りを選び、まずは自分から変わってみよう。悩みのもとに自ら変化を起こしてみよう。
どの香りを選ぶか?人との付き合い方による3つのタイプ分け
【1】人と接する機会が多い「コミュニケーター」タイプ
こちらは、根本的に人が好きなタイプである。人と話すことで気分が明るくなったり、問題が解決したりする人はこのタイプに当てはまる。逆に、人と接する機会が少なく、久しぶりに人と話すと緊張してしまう、という人もこちらのタイプを参考にしてほしい。
医師や美容師、ネイリスト、サロン経営者など「コミュニケーター」タイプのクライアントが好むのは、花や果物などの甘さのある華やかな香り。魅力的な人柄と抜群の存在感を持ちつつ、親しみやすさを求められる人たちである。
花は植物にとって顔。「コミュニケーター」にとって最も重要なのは、ひと目でその人と認識される「顔」ということか。
★「コミュニケーター」タイプのアロマ戦略
〔キーワード〕
フローラル、フルーティ、ハピネス、ブロッサム、ブーケ、シトラス、リュクス、イノセント、ロマンティック、エレガント
〔モチーフ〕
ジャスミンやローズなど花のモチーフ、パール感、キラキラ
〔カラー〕
ピンクやオレンジなど明るいカラー
〔モデルアイコン〕
フェミニンでゴージャス、女性らしい
【2】自然と場の中心になる「パフォーマー」タイプ
いつの間にか自分が話題の中心になっていたり、自分発の集まりが多かったりする人は、こちらのタイプに当てはまる。華やかさがあるので、自然体でいても注目を集めやすく、知らず知らずのうちに周囲へ影響を与えている。爽やかな印象を持つ人が多く、少し近寄りがたい雰囲気もある。噂話に巻き込まれるのが嫌な人は、こちらのタイプを参考にしてほしい。
ヨガ講師やダンサー、歌手、セミナー講師など「パフォーマー」タイプのクライアントが好むのが、ウッディ系やハーブ系など爽やかさのある中性的な香り。人々の視線と好奇心を惹きつける個性的な存在感と、体を使った表現力に長けたタイプだ。
ウッディ系、ハーブ系の香りのもととなる樹木や葉は、植物にとって骨格や心肺機能に当たる。「パフォーマー」タイプにとって重要なのは、ただ立っているだけで存在感を示す、体幹の強さとしなやかさなのだろう。
★「パフォーマー」タイプのアロマ戦略
〔キーワード〕
ハーバル、ウッディ、グリーン、ボタニカル、シプレ、アンバー、バルサム、ライム、ビャクダン、エキゾチック、アロマ、ブリーズ
〔モチーフ〕
森林やリーフなどナチュラルなモチーフ、風、流線形、ユニセックス感
〔カラー〕
ブルーグリーンやラベンダーなどナチュラルなカラー
〔モデルアイコン〕
中性的でニュートラル、性別を超越した存在感
【3】感性とインスピレーションで生きる「アーティスト」タイプ
みんなとワイワイ騒ぐのは好きだが、一人の時間がないとストレスを感じるという人はこちらのタイプだ。なにかに所属することを窮屈に感じたり、時間通りやマニュアル通りに行動することが苦手と感じたりする人も、こちらのタイプに当てはまる。忙しくて一人の時間がなかなか取れないときは、このタイプの香りを選んで使ってみよう。ストレスが軽くなり、少し優しい気持ちになれるかもしれない。
デザイナー、アクセサリー作家、スタイリストなど「アーティスト」タイプのクライアントが好むのは、樹脂やスパイス、果実などのやや複雑な香り。集中力やインスピレーション、イメージを形にする繊細な感性が求められる人たちである。
彼女たちにとっては、人と違っている個性こそが重要。人付き合いは不器用なくらいでも許されたり、むしろそこが魅力になっていたりする。
★「アーティスト」タイプのアロマ戦略
〔キーワード〕
オリエンタル、スパイシー、パウダリー、ホット、きらめき、センシュアル、バルサミック、ラグジュアリー、シークレット
〔モチーフ〕
なんだかよくわからない神秘的なモチーフ、太陽や宇宙など天体系のモチーフ、スピリチュアルな雰囲気、とにかく凄そうな雰囲気
〔カラー〕
オレンジやイエロー、ゴールドなど温かみのあるカラー
〔モデルアイコン〕
個性的なカリスマ
香りの好みを人間関係に役立てよう
香りの印象は強弱によっても大きく変わるので、使い過ぎには注意したい。どんなにいい香りでも、強すぎる香りは一律に嫌われるし、苦手な香りでも少量ならいい香りと感じることも多い。
逆の発想で、その時々の香りの好みから自分自身のコンディションをより深く知ることもできる。例えば、花の香りをいい香りと感じるときは、人間関係が広がったり深まったりしていることが多い。ウッディ系の香りを好むのは、注目されたいという気持ちの表れだったりする。
私たちは、無意識のうちに必要な香りを求めている。求める香りに出会ったとき「いい香り」と感じるのだ。
進学、就職、昇進、結婚、出産などのライフステージや、年齢、体調によっても香りの好みは変わる。一見するといつも通りに見える人も、内面では人にはなかなか話せない悩みを抱えていることもある。
お互いの香りの好みを知ることで、自分のことも相手のことも、より深く知ることができるだろう。ふとした変化を察知し気遣う思いやりの心が、温かい関係を作っていく。香りの世界に触れることで、身近な人を思いやれる優しい自分になれたなら、きっと世界もまたあなたに優しくなることだろう。