洋服の販売職についた経験から、「自分のファッションセンスに自信がない」「日々のコーディネートに悩んでいる」といった“ファッションアレルギー”を発症したアラサー男子をたくさん目にしてきた。悩める彼らに声を大にして伝えたいこと。それは「オシャレにセンスや感性は必要ない」という事実だ。日常生活で楽しむオシャレは、誰にでも体現できる。この記事では、悩めるアラサー男子に向けて洋服に存在するオシャレメソッドを解説した。少しでも日々のコーディネートの指針にしていただけたらありがたい。
「実年齢」と「洋服年齢」を意識しよう
販売員時代に最も印象深かったのは、洋服を購入する際に洋服年齢を意識していないお客の多さだ。洋服年齢とは「そのアイテムを着るための最適年齢」のこと。洋服年齢はアイテムによってさまざまで、洋服年齢が低いアイテムは若者向け、高いアイテムは大人向けという特徴がある。
では、なぜ洋服年齢が大事なのか?
それは、人間は歳をとるからだ。加齢と共に顔や声、体格、本人の雰囲気は変わっていく。身にまとう洋服も、その変化に合わせて変えていく必要がある。
洋服年齢が高いアイテムは、広い年齢層をカバーできる。逆に、洋服年齢が低いアイテムは年齢の守備範囲が狭い(似合わなくなるという意味において)。そして、日本人男性は洋服年齢が低いアイテムを好んで選びがちという特徴がある。実年齢と洋服年齢にギャップがない若い時期はいいが、一定の年齢を超えると違和感が生まれ始める。オシャレに見えない根本原因がこれだ。
「実年齢と洋服年齢のギャップ」。ファッションに悩むほとんどの男性は、このギャップに気づいていない。
では、どうすればいいか? 話は簡単で、実年齢と洋服年齢のギャップを埋めてあげればいい。
洋服年齢が高い服の代表例は「スーツ」
具体的な施策の前に、洋服年齢についてもう少し掘り下げておきたい。洋服年齢には高低があることは説明したが、どのように見極めればいいのか。この章では、簡単なポイントをご紹介する。
まずは「サラリーマン」を想像してみてほしい。新卒1年目の新人は、スーツが似合わないもの。その理由は、実年齢が洋服年齢に追いついていないからだ。そして、実年齢が上がるにつれて洋服年齢とのギャップがなくなり、スーツを着こなせるようになっていく。つまり、スーツは洋服年齢が高いアイテムといえる。それならば⋯⋯
スーツに使われているようなアイテムを日常着に使ってしまえば、洋服年齢を高く保てるというわけだ。
例えば、テーラードジャケットやスラックス、襟付きのシャツや革靴。これらは、洋服年齢が高く、実年齢を重ねても長く使用できるアイテムの代表格だ。
そして、洋服年齢が低い洋服は上述の逆の発想になる。休日に少しコンビニに行くときの、だらしない格好を思い浮かべていただければOK。
“3つのメソッド”を守れば年齢ギャップは埋められる
これで、スーツを基準にアイテムを選べばいいことがわかった。ここからは、具体的な方法論に言及したい。実年齢と洋服年齢のギャップを埋めるには、3つのメソッドがある。
【1】洋服年齢の高いアイテムを増やす
最も重要で効果がある方法。アラサー男子であれば、スーツコーデをベースに数点プライベートコーデを取り入れるイメージだ(例:ジャケットにカットソーを合わせる。スラックスにスニーカーを合わせるなど)。
【2】ジャストサイズのアイテムを選ぶ
ウエストに余裕を持たせた腰パンやピタピタのスキニーパンツ、サイズオーバーのスウェットなどは言語道断。アラサー男子は、自分自身の体型にフィットしたジャストサイズアイテムを選択することが鉄則。
【3】無駄な色味や柄は避ける
一般的に、色の鮮やかさである「彩度」が高い色(赤や黄色など)のアイテムほど洋服年齢が低い。洋服年齢の高いアイテムをベースにするためには、無彩色(黒・白・灰)を使ったコーディネートを組もう。配色にハズレがなく、色合わせのミスを防ぐことができる。また、派手なプリントや模様、柄も、洋服年齢が低いアイテムにみられる要素となるため避けたほうがベターだ。
洋服は数や値段ではなく汎用性が大事
ファッションアレルギー発症者の典型的な症状に、アイテムの「数」や「値段」に対する依存が挙げられる。コーディネートの法則や理論を知らないため、個々のアイテムのクオリティーや、数に頼ってオシャレを体現しようとするパターンだ。販売員時代にも、選択肢を増やしたいがあまり、“大人買い”と称して散財するお客をたくさん目にしてきた(お店にとっては良客です)。
販売員ではない読者の皆さんは売り上げを気にする必要はないのだから、無闇にお金を使って洋服の数を増やすのはやめていただきたい。断言しておくが、オシャレには洋服の数も値段も関係ない。必要最低限のファストファッションのみでも、オシャレは成立する。
アイテム選びにおいて最も重要なことは「汎用性」だ。
誤解を恐れずに言うなら、没個性的なアイテムを選ぶこと。個性的なアイテムは他のアイテムとのバランスが取りづらく、コーディネートの難易度を上げてしまう。一方、癖がないアイテムはさまざまなコーディネートに使いやすい。いわゆる、着回しがしやすいというやつだ。以下に、代表的な汎用性の高いアイテムを書き出してみた。カラーはお好みで。
【具体的なアイテム】
・襟付きコート(黒・紺・灰・ベージュ)
・インナーダウン(黒・紺)
・ジャケットとスラックスのセットアップ(黒・紺・灰)
・ホワイトシャツ
・カットソー(白・黒)
・カーディガン(黒・紺)
・ブラックパンツ
・グレースラックス
・オールブラックorホワイトスニーカー
・革靴(黒・茶)
上述のアイテムだけでも、年間のワードローブ(衣装の組み合わせ)は十分成立する。アイテム総数も大したことはないだろう。これだけのアイテムだけで、オシャレは問題なく楽しめるのだ。ファストファッションを中心にそろえれば、コスパもいいはず。背伸びしてハイブランドに手を出す必要もない。洋服は、しょせん自己満足だ。どのようなブランドを着ているかなど、販売員にもわからないから安心しよう。
オシャレは難しくない
ファッションに悩んでいるあなたが目指すのは、普通のオシャレ。完璧を求めるのは専門家に任せておこう。この記事の内容通りにコーディネートを組めば、一般的なオシャレは問題なく体現できる。
最後になるが、大事なことなのでもう1度。世の中にはオシャレな人が山ほどいて、それぞれのファッションを楽しんでいる。しかし、オシャレに見える人ほど、理論やメソッドを理解してコーディネートを組んでいることを知っておいてほしい。
オシャレにセンスや感性は必要ない。少しの知識とお金があればいいのだ。