ISO感度の最大値は102,400!?変態的一眼レフ「PENTAX」の知られざる魅力

●一般的に評判の良くないPENTAX。しかし、PENTAXには使えば使うほどハマってしまう変態的な中毒性がある。
●PENTAX “K-70“(以下“ K-70”)を愛用する筆者が、その変態性を紹介。
●PENTAX の環境想定はサバイバル並みの過酷さ。
●どのような暗さでも映し出せるISO感度。
●ハードな天候でも壊れることのない頼もしさ。
●不可能を可能にする、独自開発の超技術“SRII”。
●ロマンたっぷりのPENTAX。あなたが虜になる日も近いかもしれない。

近年、カメラブームにより使用者が急増している一眼レフカメラ。筆者も父親から譲ってもらった一眼レフカメラで、日々さまざまな写真を撮り歩いています。

筆者の愛用しているカメラは「PENTAX“K-70”(以下“K-70”)」。フィルムカメラで一世を風靡したカメラメーカーです。しかし、時代はデジタル一眼レフカメラへと移行。デジタル一眼レフカメラ業界では少々出遅れており、現代では使っているだけで「なんでPENTAX?」と仲間から疑問をぶつけられるほどの、イロモノカメラとなっています。

その理由はズバリ、“動作物が苦手”だからです。特にオートフォーカス(以下AF)が遅く、動作音もひどいため、これらはかばいようのない欠点といえるでしょう。筆者も、欠点についてはうっすらと理解しています。「なんだか他社ユーザーと同じコンディションで撮っているのに、すごくうるさい」「AFが合わなくて、ずっとカメラを構えている」など、そういう場面が確かにあるのです。
しかし、PENTAXのカメラには知れば知るほど、使えば使うほど、離れられなくなる中毒性が欠点と同時に秘められています。

「なんでそこまでやりすぎたの!?」と突っ込みたくなる、ロマンしかないぶっ飛んだ変態性。本記事では、PENTAXを愛用している筆者が感じた、愛着を通り越して依存性すら湧いてくる恐ろしい変態性について、愛機“K-70”をベースに紹介していきます。

レンズの製造から始まったPENTAXの歴史

PENTAXは、1919年に設立された旭光学合資会社を前進とし、初期は眼鏡用のレンズを製造。時が経つにつれ、レンズの研磨・コーティング性能を生かして初の映写用国産レンズを生産する。その後、1952年には国産初の一眼レフカメラを発売。2013年、社名を「リコーイメージング株式会社」に社名を変更し、株式会社リコーのグループ会社となりました。

PENTAX“K-1”は「フィールドカメラ」の最高峰

PENTAXの一眼レフカメラの特徴は、野外のどのような環境でも実用的であること。さすがは、眼鏡レンズなどの実用品製造からスタートした会社です。代表的な機種PENTAX“K-1”の紹介ページでは、「フィールドカメラ」という呼称が用いられるほどで、想定している撮影環境が変態的なまでにハード。一般的なカメラマンならまず赴かないであろう環境でも、PENTAXの一眼レフカメラなら楽々と撮影できてしまいます。

どのような環境でも撮影できる。それがPENTAXの一眼レフカメラの変態性であり、真髄なのです。

ありすぎて使えない!圧倒的な「ISO感度」

「ISO感度」とは、暗い場所、主に夜間に撮影する場合に用いる機能です。数値が高くなればなるほど暗所を写すことができ、結果的に手振れも防止します。また、他社の同クラスモデルは最大値が25600周辺なのに対し、“K-70”では102400まで設定が可能となっています。この数値は、例えばドキュメンタリー番組や生物図鑑などでフクロウを撮影する際に使われるほどの驚異的な数値であり、まさにPENTAXが変態と呼ばれる由縁なのです。
最大まで設定すれば、夜景どころかアウトドアで普段は見られない大自然の夜も写し出せます。しかし、ISO感度は上げれば上げるほど画質が低下する諸刃の剣です。正直に言えば、高めに設定しないほうが無難でしょう。どうしようもない場面で25600程度の出番があるかもしれませんが、それ以上はノイズが発生がひどくて使い物になりません。ぶっ飛びすぎて、ネタともいえる数値です。技術はすごいのですが……。

(ISO感度1600で撮影した写真)

防塵・防滴・耐寒――想定する撮影環境がハードすぎる

ハードなアウトドアでの使用を想定し、100部位にシーリング加工を施すことで、「防塵・防滴機能」を搭載しています。レンズも対応のPENTAX製を用いれば、雨天や砂嵐での撮影や、汚れの付着などを気にせずに撮影することが可能です。精密機器の常識を打ち破る、雨にも塵にも強いカメラ。雨天のど真ん中や、砂嵐の内側からの撮影など、考えるだけでもドキドキしませんか?

また、寒冷地での使用も想定しているため、マイナス10℃における耐寒実験もクリアしています。機構や回路の動作も安定しているため、例えばスキーやスノーボードをしにゲレンデに赴いた際、頂上の景色を確実に撮影することが可能です。ここまでの機能と合わせることで、ゲレンデの不安定な気候にも対応できることになります。筆者はゲレンデに年に5回も行かないので、耐寒機能を生かしきれておりません……残念。

さらに、グリップ部にも工夫が加えられていて、他社製品より深くつくり上げられているのも特徴のひとつ。これにより、しっかりと力を込めることができ、落下の心配も低減します。珍しく、一般の人にもうれしい機能です。

この深いグリップは、PENTAXのこだわりの部位のようです。グレードが1つ上のPENTAX“KP”では、付け替えグリップ機能が追加されており、S/M/Lサイズから選択可能という驚きの変態機能に進化しています。

虎の子変態機能「ボディ内手振れ補正SRII」

PENTAXの一眼レフカメラ全般にいえる最大の変態機能として、「ボディ内手振れ補正機構 SRII(以下SRII)」 を搭載している点が挙げられます。ボディ内に補正装置があるため、システムメニューからボタン1つで設定可能なのが特徴的です。他社製のレンズやフィルムカメラ時代のオールドレンズも、手振れ補正ありで使用できます。

(オールドレンズや第三者製のレンズでも手振れ補正機能の恩恵を受けられる)

しかし、SRIIの機能は手振れ補正にとどまりません。むしろ、ここからが本番ともいえます。

まずは、「リアル・レゾリューション・システム」です。SRIIを応用し、撮影の際に画素を1画素ずつ動かして4枚の写真を撮影。それらを合成することで一時的に画素数を向上させるという、とんでもシステムです。「画素」とは、画像の最小単位を指します。ピクセルとも呼ばれ、写真は画素が集まることによって構成されており、“K-70”の写真は2434万画素となっています。それら2434万の1mmにも満たない非常に小さな粒を少しずつずらして、ハイクオリティな写真をつくり上げる――書いているだけでもロマンがあふれる、超精密技術を用いた機能なのです。

(「リアル・レゾリュ—ション・システム」を用いて撮影した画像)
(同画像。かなり拡大しても違和感がないことがわかる)

次に、別売りのGPSユニットが必要ですが、天体、つまり星を簡単に撮影するSRIIを用いた「アストロトレーサー」という機能も搭載されています。通常天体を撮影する場合は、天体の動きと同じく1時間に15°ずつのスピードでカメラを動かす「赤道儀」と呼ばれる機材が必要です。天体は絶えず動いており、ただ撮影するだけではブレてしまいます。また、天体は遥か彼方に位置しており、長時間シャッターを開けておかなければ写真にできる程の十分な光を得られません。そこで、天体と同じスピードでカメラを動かす赤道儀が必要になります。

このように、通常通りの撮影で天体をきれいに撮るのは困難でしたが、PENTAXはSRIIを赤道儀の役割に転用したのです。天体の動きにセンサーを同期させ、赤道儀なしの天体撮影を可能にしました。天体に合わせて5分間に約4°、センサーのみを動かす技術はロマンたっぷりの機能です。しかも、赤道儀は3万円周辺が多いのに対し、別売りのGPSユニットは半額の約1万5,000円で購入でき、お財布に優しいのも高ポイントといえます。

天体撮影は空気の澄んだ高所が推奨されているため、気温が低く、ヒーターを使うなど、カメラのコンディションにも気を付けなければなりません。しかし、“K-70”をはじめとしたPENTAXの一眼レフは前述の耐寒テストをクリアしているため、低温による動作不良も心配なく、安心して撮影できます。旅行先で寒い中、荷物を減らしつつ星を撮りたい……。そういった万が一の状況にも、しっかりと対応できるのがPENTAXの一眼レフカメラなのです。

PENTAXはどのような環境でも撮影できる頼もしい一眼レフカメラ

PENTAXの一眼レフカメラは、確かに他社製品と比較すると劣ってしまう面もあります。しかし、追求し続けた狂気ともいえる変態性は、カメラさえあれば、どのような環境でも撮影ができるレベルにまで到達しているのです。旅行先、突然の雨天、夜間の記念撮影などさまざまな環境に耐え、逃すことなく瞬間を切り取ってくれる、頼もしい一眼レフカメラ。きっとこれからも、その変態性は進化し続けることでしょう。ここまで読んでいただいたあなたもご一緒に「PENTAX沼」、いかがでしょうか?

この記事を書いた人

ISO感度の最大値は102,400!?変態的一眼レフ「PENTAX」の知られざる魅力

タカハシコウキ

ライター・カメラマン

東京都在住、千葉県生まれ。現在はライター・カメラマンとして活動しています。活動全般を通しての軸は「表にでないストーリー届ける」こと。得意な記事はインタビュー記事。そのほかにもコラム・商品紹介、エッセイなど執筆可能。ストーリーを伝えることで、秘められた価値を生み出していきたい。

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