在宅勤務は“主婦の味方”となり得るか?3年間のテレワークを通して感じたこと

●在宅勤務はテレワークのひとつで、オフィスではなく家で働くこと
●最大のメリットは何といっても「時間の有効活用ができること」
●課題は「プライベートと仕事の区切り方」と「孤独感との戦い」
●子育てしながらの在宅勤務は環境面の配慮が必要
●在宅勤務で正社員としてバリバリ働くにはスキルを必要とされる場合が多い
●自分をコントロールできる人には在宅勤務は向いている

昨今、コロナウイルスの感染拡大によりリモートワーク勤務が普及し始めていますが、実際にご自身が在宅勤務をしている姿を具体的に想像できる人は少ないのではないでしょうか。筆者が在宅勤務をしている件について、特に子育て中の友人たちに「家で働けるのは羨ましい」とたびたび言われますが、おそらくあまり実態が広まっていないのではないかと感じます。

本記事では、筆者の3年目に突入した在宅勤務の経験と会社勤め時代の経験を比較し、“在宅勤務は本当に子育て中の主婦たちに魅力的か”を考察してみようと思います。

「ダラダラできる」などの自由なイメージが先行しがち

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在宅勤務は厳密にいうと、会社を離れて仕事をする「テレワーク」の勤務形態のひとつです。テレワークには、所属している会社以外のシェアスペースなどで働く「サテライトオフィス勤務」、電車や飛行機など移動時間に働く「モバイル勤務」、家で働く「在宅勤務」などがあります。筆者が在宅勤務をしているという話を友人などに話すと、「ずっと家にいて楽そう」などと言われます。おそらく「好きなときに寝られる」 といった時間の自由さを想像しているのだと思います。

オフィス勤め時代よりも時間を有効に使えている

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実際に在宅勤務を続けていて感じる最大のメリットは、何といっても「時間の有効活用ができる」点です。

例えば、洗濯機を回しながら仕事ができます。炊飯器をセットしておけば、昼食に炊きたてのご飯が食べられます。腹痛のときは周りの目を気にせずトイレにこもり、頭が痛ければ隙を見てソファで15分仮眠……といったことも可能です。外出しない日は化粧せずにいられることも、自分には大きなメリットです。

また、「集中できる」という点もメリットのひとつ。家に一人でいれば、誰かに話しかけられて作業が中断することもありません。文章を書くときは、そのありがたみをひしひしと感じます。

「いつ働くか」「いつ休むか」を自分で決められるかどうかが鍵

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もちろん、在宅勤務は良い面ばかりではありません。デメリットとして、まず「プライベートと仕事の切り分けが難しい」という点が挙げられます。これは「時間の自由が利く」ことの裏返しでもあるのかもしれません。
在宅勤務の場合、家にいながら仕事モードをオンにする必要があります。オフィス勤務時代にはあまり深く考えていませんでしたが、「会社に到着する」ことが「労働開始の合図」と無意識の内に自分の中で設定されていたのだと思い知りました。どうしても仕事をする気にならない日があっても、オフィス勤務の場合は会社にいれば周りが仕事をしているため、何となく仕事をしなければならない気持ちが作られてきたりするものですが、在宅勤務の場合は周りには誰もいないので自分で仕事をする気持ちを作らなければなりません。ちなみに自分の場合は、「パジャマを脱いで机に座ったら仕事」という暗示を自分にかけました。

また、職種にもよりますが、在宅勤務は労働時間よりも業務単位で請け負うケースが多いと思います。「労働時間が決められていない」ということは、「どの時間を労働にあてるのか、いつ休むのか」を自分で決めなければならないということです。これが自分の中で定められないと、メールやSNSで繰り広げられる仕事の話で終日気持ちが休まりません。

仕事における仲間づくりはやや難しい

在宅勤務は、孤独感との戦いでもあります。 一人で作業をしていると集中しやすい反面、何か少し相談をしたいときに気軽に話しかけられる相手が近くにいません。相手がどのような状況かが見えないため、話しかけるに値する話題がないと声をかけにくいというのが正直なところです。

そして、最近気がかりになってきたのは「人間関係の輪が広がりづらいこと」です。例えば、営業担当をしていれば営業先とつながりができたり、思わぬ交友関係が広がったりすることもありますが、在宅勤務で作業をしている場合はほぼありません。何かをする際にはコネクションが必要なケースもしばしばありますので、このまま交友関係を広げずにいてよいものか、現状を悩ましく感じています。

子育てをするには「環境面の配慮」や「仕事スキル」が必要

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在宅勤務をするにあたり、PCがあり、Wi-Fiなどのインターネット環境が整っていることはマストの条件といっていいでしょう。あとは、どのような職種を選択するかです。

例えば、子育て中の方は子どもが突然発熱したなど予期せぬ事態が起きた場合に、自分が子どもを病院に連れて行ける状況にしておきたいと思うでしょう。そのためには、自分の仕事のスケジュールが急に後ろにずれても問題ない環境を作っておく必要があります。締め切りの緩い仕事や、いつでも誰かに代われる仕事であればよいですが、自分一人で担当している仕事をたくさん抱えていると、なかなか仕事から離れられない状況となり得ます。

特に子育てママの場合は、例えばスキルを売買するようなサイトで、自分の特技を生かしてスキマ時間で稼ぐといった働き方が向いているのではないでしょうか。実際に売買されているスキルを見てみると、写真撮影・似顔絵作成・ロゴ作成など多種多様です。締め切りなども自分で設定できるので、家族に合わせた働き方もしやすいと思います。

ただ、これらは自分がこなした数だけ報酬がもらえる仕組みです。そのため、生計を立てられるほどの収入を目指すとなるとかなりの量をこなす必要が出てくるかと思いますし、キャリアアップなどを考える人にはおすすめしづらい選択肢ではあります。

正社員としてバリバリ働きたい、将来的なキャリアアップも視野に入れていきたい方は、完全在宅勤務で正社員採用が可能な職種は限られます。最初から在宅勤務可能な企業に勤めていて、子育てや介護など必要な時期に在宅勤務を選択するというのが、現実的な道かもしれません。

ただし、自分でスキルを持っていると話は変わってきます。転職サイトを見ていると、システムエンジニアやWebデザインなどではフル在宅勤務でも正社員を募集しているところが多くみつかります。これらの技術がある方は、在宅勤務という条件下での仕事探しにおいては非常に有利だと感じます。

単に職場が「オフィスから家へ変わるだけ」ではない

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結局、在宅勤務をする場合に求められるのは「仕事をする自分を自分でコントロールできる能力」ではないでしょうか。どの時間に、どのくらいの量を自分がこなすことができるのか。それを自分で判断できなければ、基本的に厳しい働き方だと自分は思います。

自分で自分をコントロールするのが得意な方は在宅勤務というスタイルにメリットを多く感じると思いますが、与えられた仕事をこなしてるほうが楽な方には在宅勤務という状況はつらいのではないかと思います。「単に職場がオフィスから家に変わる」というだけの捉え方だと、うまくいかないでしょう。

在宅勤務は、地方創生や少子高齢化社会による人材不足を解消する糸口として大いに期待されていますが、全員が全員に向いている勤務スタイルとはいえません。しかし、働き方の選択肢が増えることは、生き方の選択肢が増えることです。在宅勤務という選択肢をどう活用するかを考える企業や人が増えたら、とても面白い社会になるのではないかとわくわくします。

この記事を書いた人

在宅勤務は“主婦の味方”となり得るか?3年間のテレワークを通して感じたこと

どめ

ライター

生まれも育ちも北海道。診療放射線技師として約9年勤務したのち、転職。旅行会社経験等を経て、現在は情報配信系の仕事に落ち着く。
趣味は旅行(登山含)、グルメ、音楽、読書。得意分野は医療、経済、旅。基本的に考えることが好き。座右の銘は「虎穴に入らずんば虎子を得ず」。

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