元美術館嫌いな絵画好きが教える!美術鑑賞がもっと楽しくなる4つのヒント

●美術館の楽しみ方はただ絵を眺めるだけではない。
●どのようなことでもいいので、鑑賞目的を決めると美術鑑賞はグッと楽しくなる。
●絵を楽しむためには、自分の感情を受け止め自問自答してみるとよい。
●作品との距離を変えてみると思わぬ発見をすることもある。
●絵を細部まで楽しみたい場合は単眼鏡や双眼鏡を持参するとよい。
●音声ガイドを借りると絵の背景を詳しく知ることができ、興味を持つきっかけになる。
●気軽に楽しみたい人はワークショップやツアーガイドへの参加がおすすめ。
●美術鑑賞に答えはないため、自由に考え想像することが重要。

突然ですが、美術館に行くのは好きですか?私は美術鑑賞が趣味なのですが、今まで美術館に行くのが好きと話すと「美術館って何が楽しいの?」「変わった趣味だね」と言われてしまうことも……。その理由は、美術館に対して「何となくレベルが高そう」「面白さがよく分からない」などのイメージがあるからではと思います。

実は、私も以前は美術館に行くのが苦手でした。美術館の楽しみ方は、ただ単に絵を眺めるだけではありません。この記事では、美術史を学んだことにより美術鑑賞がとても好きになった経験を持つ筆者が、美術館を楽しめるようになる4つのヒントをご紹介します。

【ヒント1】鑑賞目的を決めよう

by pixabay

最初に試してほしいのは、鑑賞目的を決めることです。鑑賞目的とはその名の通り、「美術館に行って何をしたいのか」を決めること。とても簡単ですが、美術館をより楽しむためには欠かせない重要なポイントです。

目的といっても難しく考える必要はなく、どのようなものでもOKです。例えば、美術館にあまり行ったことがない初心者さんでも「好きな作品を一つ見つける」といったことなら、簡単に取り組めます。上級者さんは「時代ごとの画家の作風の違いに注目してみる」などがいいかもしれません。他にも「もし自分の家に飾るならどの絵がいいか」を考えてみるのも楽しいです。

目的は美術鑑賞を楽しくすることであり、ここに決まりや答えはありません。目的を決める最大のメリットは、視点が広がることです。目的がないとただぼんやりと眺めるだけで終わってしまいがちですが、目的を持つと視点が広がって思わぬ出会いがあるかもしれません

あなたの「特別な一枚」を探してみてください。

【ヒント2】あえて事前情報を入れずに自分の感覚を大事にしよう

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目的が決まったら、鑑賞方法を見ていきましょう。絵を楽しむためには、とにかく自分の感覚を研ぎ澄ますことが重要です。絵画鑑賞をする上で、絵と出会った際の第一印象はとても貴重なものです。

その際に気を付けたいのが、感想を否定せず受け止めること。これも目的と同じく答えはありませんので、何を考えても自由です。極端に言えば「変な絵だな」でもいいし、「何でこんな端っこに果物を書こうと思ったのだろう」でも構いません。自分の率直な感想を重要視し、否定しないことが大切なのです。

そして、思い付いた感想を忘れないうちに「どうしてそう思ったのか」を考えてみましょう。これも難しく考えず、思い付くままに答えを出し、自問自答を続けていくことがポイントです。繰り返していくうちに、今まで気がつかなかった興味や関心に出会い、段々と美術鑑賞が楽しくなってきます。

個人的なおすすめは、事前に展示会の内容をチェックせず感覚だけで作品を楽しむ方法です。もちろん背景が分かったほうが楽しさは増しますが、私は自分と静かに向き合いたいときはあえて情報を入れずに絵との対話を楽しむようにしています。画家や時代にとらわれず、純粋に「絵画」を楽しみたいときには特に効果的です。

展示会では作品と作者が書かれた一覧表をもらうことができるので、鑑賞の際は気になった作品に印を付けておくといいでしょう。もう一度戻って鑑賞するも良し、家に帰ってその作品について詳しく調べてみるのも良しです。あなたが選んだその一枚は、新しい画家に興味を持つきっかけを与えてくれるかもしれません。

【ヒント3】角度を変えて鑑賞してみよう

出典:The Art Institute of Chicago

次に試してほしいのが、少し角度を変えて鑑賞してみること。この「角度」とは、視野を広げて絵を鑑賞することを指します。一番簡単な方法は、鑑賞する距離を変えてみることです。少し離れたり、できるだけ近づいたりして作品との距離を変えてみることで、同じ作品でもまた違った表情を楽しむことができます。

この方法を特に試してほしいのが、点描画の作品です。すべてが点で描かれた点描画は、至近距離で観るとまったく異なった印象を受けることがあります。私は以前印象派の展示会に行った際にポール・シニャックの絵を観て「距離を変えただけで、こんなにも絵の印象が違うものか」と大変驚いたことが記憶に強く残っています。

絵をより細かく観たい方は、単眼鏡や双眼鏡を持っていくのがおすすめです。混雑している人気の展覧会でも、細部まではっきりと観ることができます。また、時間を置いてみるのも一つの方法です。歩き疲れたら、館内のベンチで一休みしてからまた絵の前に戻ってみてください。以前とは違った表情を味わえるかもしれません。

もちろん、音声ガイドを借りるのもよい手段です。音声ガイドの一番のメリットは、作品の魅力や絵の背景を詳しく解説してくれること。まったく興味がないものを面白いと感じるには、実は「背景を知ること」がとても重要なのです。初めは興味がなかった作品も背景を知ることで心が動き、さらなる興味につながる場合もあります。

私も以前は「普通に絵を眺めたい人には必要ないだろう」と思っていたのですが、一回試したところ、今まで借りなかったことを後悔しました。音声ガイドがあると誰でもじっくりと展示を楽しむことができるので、今まで使ったことがない人は特に試してみてほしいです。

【ヒント4】体験できるものに参加してみよう

by pixabay

展示会では大体、テーマに沿ったワークショップが開催されています。内容はテーマについての講演会や、手を動かして何かを作ってみるものまでさまざまです。ワークショップのほとんどは、展示会のチケットを持っていれば誰でも参加でき、初心者から上級者まで幅広く楽しめる内容となっています。参加した後にもう一度絵画を鑑賞すれば、また違った感想を得ることができるでしょう。

ワークショップの他にも、美術館を案内してくれるガイドツアーへの参加もおすすめです。
ガイドツアーとは、研究員やボランティアガイドが、所蔵している有名作品や美術館の建物についてじっくりと解説してくれるツアーのこと。私が以前ツアーに参加した際は、一つの絵に対する全員の感想と解説を聞くことができたのがとても勉強になりました。ツアーで紹介されるのは美術館の目玉になる作品が多いので、「自分の近所の美術館にそんなに有名画家の作品が!?」と驚くような発見ができるかもしれません。

他にも、体験といえば館内のレストランでコラボメニューを味わうのもいいですね。多くの美術館内のレストランでは、展示会のテーマや画家にちなんだメニューを期間限定で味わうことができます。メニューによっては、先ほど鑑賞した絵画に描かれていた料理を楽しめるかも……?味覚からも展示を感じてみてはいかがでしょうか。

鑑賞方法を工夫すれば美術館はもっと楽しくなる

この記事では、美術鑑賞をより楽しむことができる4つのヒントをご紹介しました。記事を偉そうに書いている私ですが、以前は「美術館にお金を払ってまで行く意味はあるのだろうか」と思っていました。美術に正解がないように、美術鑑賞にも正解はありません。
美術館は自分が感じたことを素直に受け止め、楽しむ場所だと思えば少しはハードルが下がるのではないかと思います。この記事をきっかけにして、より多くの人に美術鑑賞を楽しんでもらえれば嬉しいです。

この記事を書いた人

元美術館嫌いな絵画好きが教える!美術鑑賞がもっと楽しくなる4つのヒント

フヨウ アオイ

ライター

「猫と美術と観劇」をこよなく愛す福岡在住のライター。旅行から芸術・インターネットサービス・生活情報まで幅広いジャンルの記事執筆を手がける。
趣味は観劇と美術鑑賞、何かを作ること。劇評やアート映画の感想ブログを運営中。

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