「精神科デイケア」ってどんな場所?元利用者から見たメリットとデメリット

●「精神科デイケア」とは、精神疾患のある人がさまざまなプログラムを通し、社会復帰を目指す通院治療施設である。
●時間は朝9時~午後3時ごろまでで、その間はプログラムに参加したり、雑談をしたりして過ごす。
●プログラムはスポーツ系、手工芸などの文化系、勉強会、就労訓練などさまざま。
●デイケアに通うメリットは「日中の居場所ができる」「生活リズムが整う」「プログラムで知識が増える」「専門家に相談しやすい」など。
●デメリットは「人間関係のトラブルから病状が悪化しやすい」「就労訓練としては物足りない」「逆に社会復帰が遠ざかってしまう場合もある」など。
●メリット・デメリットを把握し、目的意識を持って「活用」していくことが大事。

「デイケア」という言葉から、皆さんはどのような施設・サービスを思い浮かべますか?おそらくは、お年寄り向けのデイサービスのようなものを思い浮かべるものと思います。それも間違いではありませんが、他にも「精神科デイケア」というものがあるのをご存知でしょうか?

私は20代のときに、2年ほど精神科デイケアに通っていましが、私自身も病院から紹介されるまで存在を知りませんでした。友人に「デイケアに通っている」と話しても「デイケアって何?」という反応で、改めて世間の認知度の低さを感じることも……。その経験から、精神科デイケアについて少しでも多くの人に知ってもらいたいと思い、この記事を書きました。

実際に利用してみるとさまざまなメリット・デメリットがありましたが、あまり情報が知られていないように感じます。通所当時は「もっと最初にこういうことを知っていたら良かったのにな」と思うことも多かったので、現在デイケアに通っている方や、利用を検討している方にも参考にしていただければと思います。

「精神科デイケア」の概要

「病院を退院したが働く自信がない」「家にいても規則的な生活ができない」「人付き合いがうまくいかない」などの悩みを持つ精神疾患のある人が、社会復帰・社会参加を目指してさまざまな活動をする場所です。週の決まった曜日に通い、料理や運動、カラオケ、創作活動などのプログラムを行っています。

精神科デイケアの定義と費用

厚生労働省によると「社会復帰を促進するための治療プログラム」とされていて、参加するには主治医との相談が必要です。デイケアは通院治療であるため、保険診療が適用されます。また、自立支援医療費制度を利用すれば1割負担で利用できます。利用期間やプログラム参加必須など、施設によってルールが異なるので、自分に合ったデイケアを探してみると良いでしょう。

利用者の年齢層

40歳~65歳の割合が半数以上で、20歳~40歳は3割ほどというデータがあります。私が利用していたデイケアは、比較的大規模で利用者は30人以上いましたが、同年代である20代は少なく、2、3人程しかいませんでした。少し寂しかったですが、幅広い年代と交流できるので、歳は違っても気の合う友人ができました。

プログラムと1日のタイムスケジュール

朝の9時から始まり、午後3時ごろに終わる施設が多いようです。プログラムは施設によってさまざま。体力を付けるプログラム(ヨガ、卓球など)、興味や関心を広げる文化系プログラム(手工芸、絵画、調理)、病気についての勉強会、就労やコミュニケーションの訓練系プログラムなどがあります。基本的にプログラムは自由参加が多いですが、施設によっては全員必ず参加という場合もあります。

精神科デイケアのメリット・デメリット

デイケアは治療施設ですので、病院のホームページなどではメリットが多く書かれています。しかし、実際に通ってみるとメリットとともにデメリットも見えてきました。

【メリット1】日中の居場所ができる・引きこもりにならない

自宅療養をしている場合、外出の機会が少なくなってしまうものの「通う場所がある」というだけで外出のきっかけを作れます。また、学校や仕事に行っていないと社会とのつながりが少なくなり、孤立感が強くなってしまいます。「自分のいていい場所」があるという意味で安心感を得られました。

【メリット2】生活リズムに気を付けられる

家にいて何もやることがないと、昼夜逆転してしまう場合が多いもの。「通所」という目的があると「朝に起きよう」と思えるので、規則正しい生活リズムを身に付けられました。

【メリット3】プログラムを通して知識や経験が増える

文化系プログラムには、普段の生活ではなかなか経験できない「陶芸」や「革工芸」などのプログラムもあります。他にも、コミュニケーションの訓練プログラム=SST(ソーシャルスキルトレーニング)では、精神保健福祉士などの専門家スタッフが教えてくれるので、非常に勉強になりました。

【メリット4】看護師・精神保健福祉士などにすぐ相談できる

デイケアには複数の分野の専門家が常駐しているので、困ったときにはすぐに頼ることができます。日中デイケアにいれば、「いろいろ考えて不安になってきた」などと話を聞いてもらえました。

【デメリット1】人間関係のトラブルから病状が悪化する場合も

デイケアにいる人は皆つらい病気を抱えています。そのため、ちょっとしたすれ違いで大きなトラブルになることも。最悪のケースでは病状が悪化し、デイケアからまた入院してしまう人も何人かいました。

【デメリット2】ダラダラ過ごすことにより社会復帰への意欲が低下する場合も

私が利用していたデイケアでは、プログラムは自由参加だったのですが、不参加の人達は食堂や談話室で雑談をしたり、漫画を読んだり、ゲームをしたりしていました。気持ちはわからなくもないですが、同じようにダラダラ過ごす仲間がいると、社会復帰への意欲が低下してしまうように感じました。

【デメリット3】緩い雰囲気に馴染めず数ヶ月で辞めてしまう場合も

もともと20代の利用者は少ないですが、まれに入ってきても、やはり刺激が少ないためか数ヶ月で辞めてしまうことが多かったです。また、デイケアは「就労訓練」のさらに前段階にあたる「社会参加」の訓練なのですが、それを知らずに就労訓練が目的の人が来てしまうこともしばしば。

【デメリット4】デイケアに通う生活から抜け出せなくなってしまう場合も

私が利用していたデイケアは利用期限がなく、10年以上デイケアを利用している人もいました。話を聞くと「その点は悩んではいるが、この生活が長く続いてしまったので抜け出すことが難しくなってしまった」と言っていました。デイケアに通うことが悪い訳ではありませんが、長期利用にはそういったデメリットがあることも知っておいた方が良いと思います。

目的を持って「活用」することが大切

私はデイケアに通い始めたとき「就労に向けてコミュニケーション能力を向上させる」という目的と、期限(1年)を決めていました。その目的のために、SSTなどの訓練系プログラムには必ず参加しました。また、病気になる以前から人に話しかけることが苦手だったので、他の利用者に積極的に声をかけることで「コミュニケーションの訓練の場」として活用していました。SSTで学んだ会話術の“実践場”としていたのです。他にも、担当の精神保健福祉士と頻繁に面談を行い、体調管理に努めたことも、早い段階の社会復帰につながったと思います。

そしてデイケア「卒業」へ

通所から1年後にはアルバイトができるようになり、さらに1年後にはフルタイム勤務に就き、デイケアは「卒業」することとなりました。この経験から、メリット・デメリットを把握すること、目的意識を持ってデイケアを「良い訓練場所」として活用することが社会復帰への大切なポイントだと考えています。

うれしいことに、私が「卒業」したことに刺激を受けて、10年間デイケアに通うのみの生活だった友人が、就労移行支援事業所へステップアップしたと聞きました。確かに、人間関係で病状が悪化することもありますが、似た症状を経験し苦楽を共にした友人は、デイケアという当事者の集まりだからこそ得られたと思います。

この記事を書いた人

「精神科デイケア」ってどんな場所?元利用者から見たメリットとデメリット

朝野 かけ

ライター

神奈川出身、青森在住。
毒親育ち、精神科経験あり。理系。
精神保健福祉関係では、一時期、自治体の当事者活動に参加していました。
趣味はマンガ、アニメ、動画作成、読書、歌詞・詩・小説の執筆。
好きなものは、自然科学と一人で過すこと。
体験談やレビュー・感想系記事を得意としています。

このライターに記事の執筆を相談したい

関連記事