子育てに正解はない、という言葉こそあるものの、次から次へと話題になるのが子育て論。「甘えさせ育児」も近年話題になった子育て論のひとつです。子どもは幼少期からしっかりと甘えさせて育てた方が、将来はちゃんと自立するというもの。こうした子育て論はある程度の根拠こそ説明されていますが、気になるのは結果です。実際に甘えさせて育てた子どもがどんな成長を遂げるのか。親として知りたいのはそこではないでしょうか。
この記事では、私が「甘えさせ育児」で7年間息子を育てている現状をありのままに書いていきます。「成功か失敗か」ではなく、ひとつの可能性として読んでいただければ幸いです。
たまたま辿り着いたのが「甘えさせ育児」だった
私の甘えさせ育児は「とにかく泣かないでくれ」という思いから始まりました。息子はなんと産まれたその日から夜泣きがスタート。寝ても起きても母親の私が抱っこしていないとギャン泣きが止まらない赤ちゃんでした。おっぱいを飲んだら寝てくれるとばかり思い込んでいた私は、完璧に面食らいました。
そして私にとって、この泣き声こそがとてつもなくストレスだったのです。私が抱っこをしていれば、息子はよく寝てくれます。息子が望むままに抱っこをすることで、私はギャン泣きによる育児ストレスを軽減させることにしました。
そう、もともとは自分のために始めたことなのです。
育児環境が決め手になっていく
息子が私以外の抱っこでは泣いてしまうことと、夫が育児にノータッチだったこと、そして、お互いの実家には頼れなかったことから、私のワンオペ育児がすっかり定着します。
さらに、私は息子が2歳になってすぐに離婚をしました。シングルマザーが理由で息子に寂しい思いはさせたくなかったので、私は息子の育児には自分が徹底して関わることを心に決めます。
息子の「ママ、〇〇して」にはとにかく応える
子どもの甘え方はいろいろです。抱っこしてほしい。おんぶしてほしい。ママの膝の上に座ってごはんが食べたい。服を着替えさせてほしい。同じ布団で寝てほしい。ぐずぐずする。機嫌が悪くなる……。レパートリーは無限です。
そしてほぼ必ず「どうして今?」というタイミングでやってきます。心が折れそうになったことは数知れず。それでも、可能な限りその要望は断らないようにと自分に言い聞かせました。大人にとっては煩わしいタイミングでも、子どもにとってはその一瞬が大事だったりもします。
「甘やかし」には注意を払う
同じ「抱っこして」のリクエストでも、がまんが必要な状況もあります。例えば、それが「甘え」ではなく「わがまま」である場合や、母親の私にではなく周囲に迷惑をかけてしまっている場合などです。甘えと甘やかしの見極めは今でも難しいですが、甘やかすことで将来苦労するのは息子本人です。
着替えなどを「手伝ってほしい」と求められても「ここは自分でがんばらないと意味がない」という状況では心を鬼にするようにしていました。
甘えさせ育児の是非は親の解釈次第
甘えさせ育児に対して、否定的な言葉もそれなりに浴びました。「抱き癖がつくよ」「あまえんぼうに育つよ」「育てにくい子になるよ」などなど。否定というよりは心配しているような感じでした。
大変な部分もたしかにある
実際、私の息子はしっかりと抱き癖がついた「抱っこ星人」でした。たしかに抱き癖のついた赤ちゃんは大変です。家事は進まないし手が離せなくてイライラすることがひっきりなしでやってきます。
ただ、ここで育児ノイローゼになってしまっては本末転倒です。私の場合は、もうあきらめました。息子の気が済むまで抱っこをする、と腹を括ることに。手がまわらないのに家事も育児も完璧にこなそうとするよりは、その方がはるかに気が楽だったのです。
しまいには家のトイレにまでも息子を抱っこして入りました。片腕に息子を抱いたままトイレを済ませる。おすすめはできませんが、私にとってはこれもいい思い出です。
今だけだと思って乗り切る
抱っこが最優先ですので家事は溜まっていきますし、食事の献立は手抜きです。ただ、こんな毎日はこの数年だけ。抱き癖がついて大変だったとネガティブに考えるよりは、赤ちゃんのうちにめいっぱい抱っこできてよかった、そう思うことにしました。
子どもの「甘え」には、親がなるべく気持ちよく応えられることがとても大切です。私の場合はシングルマザーということもありひとりで受け止めていましたが、両親がいれば子どもの甘え先を分け合えたりもします。
親の負担が大きくなり過ぎて育児が苦痛になるのは避けたいところ。臨機応変に、他のことにはいったん適当になってみたりと、その場では都合のいい解釈をしてみてもいいのではないかと私は思っています。
甘えさせ育児でもわが家では問題なし
こうして「甘えさせ育児」で育てている息子も7歳になりました。
振り返ってみると、あれだけ大変だった抱っこ星人も記憶にあるのは1歳くらいまで。過ぎてしまえばあっという間です。大変だったあの時期をなんとか乗り越えたおかげで、母親としては少し自信がついたくらいです。育ててもらったのは私の方かもしれません。
すくすくと育ってくれた
「育てにくい子になるよ」とまで言われた甘えさせ育児も、今のところそんなこともありません。イヤイヤ期も予想外におだやかで、あまり記憶にないくらいです。手こずるかもしれないと心配していた保育園の慣らし保育でも、泣いて嫌がったのは最初の2~3日だけ。卒園までのあいだ、息子が登園を嫌がることはほぼありませんでした。
自分の居場所がつくれるようになった
ママがいる家庭の中と違って、保育園や学校には自分と同じ年ごろのお友達が集まります。ママのもとを離れて、外ではお友達との世界を楽しむ。息子はまったく別の居場所を持つことで、それぞれに楽しんでいるようです。これが自立の第一歩といえばそうなのかもしれません。
ここまでの成長が果たして甘えさせ育児の効果なのかは、正直なところ私にもわかりません。息子が生まれつき持っている性格もきっと影響しているはずだからです。ただひとつ自信を持って言えるのは、甘えさせ育児をしたからといって育てにくくなったことは一度もない、ということ。
正解をさがすよりもあたたかい育児を
甘えさせ育児には子どもを甘やかすイメージがついてまわりやすいので、否定されることも少なくないのかもしれません。
大人になっても甘えたいときはあります。そんなときに自分を受け入れてくれる人がいるというのは、大きな心の支えではないでしょうか。子どもにとってもそれはきっと同じで、子どもであれば甘えられる相手はやはり親なのだと思います。
ハーバード大学の研究では「人生で幸福度に一番影響を与えるのは、幼少期の両親との人間関係」という研究結果が出ています。
甘えさせ育児に限らず、子育てを「こうしなければいけない」とこだわるよりも、まずは「子どもとのあたたかな関係」にこだわってほしい。私は7年間の子育てを通じて、まずはそう強く感じています。