同じ動きをしているはずなのにプロと決定的に何かが違う――。この感覚は、ある程度ドラムを叩けるようになった中級ドラマーの多くが直面するものです。そして、この原因のほとんどは「基礎力の精度の違い」であると言えます。
具体的なケースとしては、以下のようなものでしょうか。「練習パッドでは問題なくパラディドルができるし、スネアでも同じようにできるから、自分はパラディドルができる!でも実際の演奏で使う機会は少ない……。」
残念ながらそれは、本当の意味でパラディドルを習得できていないことを意味します。同じくドラマーである私自身がそれに気づけたきっかけは「ひたすらに精度を突き詰めた基礎練習」でした。
「なんだ、結局は基礎練習をやれということか」と思われたあなた。違います、ただがむしゃらに基礎連を積むのでは意味はありません。では、一体何をどうすれば良いのか。
当記事ではセミプロドラマーである私自身の視点から、ドラム演奏上達のためのコツを3ステップで解説します。読んでくださるドラマーの皆様の成長に一役買えれば幸いです。
【ステップ1】ダブルストロークで自分がどれだけ体をうまく使えているかを確かめる
ドラムの基本的な奏法のひとつ「ダブルストローク」。まずはこのダブルストロークを用いて、自分がどれだけ体をうまく使えているかを確認しましょう。目標は、BPM200で一つ一つのアタック音が一定で、かつタップ以上の音量が出せること。加えて理想は、音の粒立ちがそろっていることです。
まずは参考として以下の動画をご覧ください。
こちらの動画を踏まえ、目標達成のための動きを2つのポイントに分けて解説していきます。
(ポイント1)打面に向かってスティックを投げる感覚をつかむ
ダブルストロークである程度の音量を出すときに必要なテクニックは、まず「スティックコントロール」です。ただ単純に「一振りで2回音を鳴らす」のであればそこまで考える必要はありません。ただ、ステップ1で求められているものは「一定の音量」と「BPM200という速度」です。この両方を満たすための第一歩として必要なのが「打面に向かってスティックを投げる感覚」です。
動画内の0:30〜からもう一度見てください。指先の動きに注目していただくと分かりやすいでしょう。スティックが打面に当たる瞬間に指が開いています。極端な表現方法ではありますが、これは「スティックを打面に投げ、跳ね返ってきたのをキャッチ」しているだけなのです。その感覚が分かれば、まずはポイント1クリアです。
(ポイント2)音量を上げるための振り幅を稼ぐべく、素早くキャッチ&リリース
最初に解説した「スティックを投げる感覚」つまり「リリース」において、それ以上に腕の力を必要とするのが跳ね返りを「キャッチ」するという行為です。ここで注意したいのが、ただキャッチをするだけでは「打面に当たって跳ね返ってきたスティックの勢い」を消してしまうということ。ただキャッチするのではなく、次のショットに行くための予備動作として、スティックを振り上げるためのキャッチが求められます。
要するに……
スティックを打面に投げる → スティックが跳ね返る → スティックをつかむ → 跳ね返りの勢いをそのままにスティックをまた上げる
ということです。
「スティックの上げ方に意識を集中したほうが、音が綺麗でかつ大きく叩ける!」という感覚が得られればポイント2はクリアです。そして同時に、ステップ1のクリアおめでとうございます。
【ステップ2】代表的なルーディメンツ、パラディドルで同様のことができるかを確認する
ドラマーなら誰もが一度は叩くであろう「パラディドル(RLRRLRLL)」。ただ、意外と実際のライブで使っている方は少ないのではないかと思います。というのも、恐らく多くのドラマーは「使うタイミングが分からない」「基礎練習としてしかやらない」と考えているのではないかと。
実は、そんなことはありません。まずは以下の動画をご覧ください。
いかがでしょうか。これ、本当にパラディドルなのです。基礎練習として考えられがちなパラディドルも、練習と研鑽を重ねればこれほどまでに「必殺技感」あふれるフィルになるのです。
そして、ステップ1でご紹介した技術がここで活きてきます。基本的なポイントは同じですが、1つ注意しなくてはならないのが「シングルストローク」も交えているということ。ステップ1に比べると、若干複雑な動きが必要となります。
文章で伝えるのは難しいので、詳しくは以下の解説動画をご覧ください。
詳細は動画内で説明済みですが、ポイントをまとめると以下のようになります。
1)ダウンストローク・アップストローク・タップの使い分け
2)アクセントを付ける箇所
3)一連の流れが途切れることの無い様にスムーズに体を動かす
以上です。叩く箇所を変えれば、最初に見ていただいた動画のようなことができます。
おめでとうございます。ここまでくればステップ2はクリアです。そして次のステップが今回の最終目標です!
【ステップ3】「6ストローク」の習得
最後にご紹介したいのが「RLLRRL」のパターンである「6ストローク」です。ここまでお付き合いいただいた方であればお気づきかと思います。ここで身に着けていただきたいのは「パワフルかつスピーディーでテクニカルな技」としての「6ストローク」です。
ステップ2までをクリアした方であれば、きっとすぐに感覚をつかめると思います。もうひと踏ん張りです。
例のごとく、まずは以下の参考動画をご覧ください。
使っている動きの種類は、パラディドルと同じく「シングルストローク」と「ダブルストローク」です。要はその順番が違うだけ。よって、ポイントはパラディドルと同様です。
そして「6ストローク」をドラムセットで演奏している参考動画がこちら。
「この感じのフレーズ聞いたことある」と思った方もいるのではないかと。もうお分かりになっていただけたと思いますが「6ストローク」はこんなにも使いやすく、そしてこんなにもかっこいい「技」として使えるのです。
これにてステップ3クリアです。おめでとうございます。そしてお疲れさまでした。そしてここまでの技術、感覚を身に着けたあなたには既にある変化が訪れているはずです。
どこまで行ってもやはり「基礎」
ここまでのステップを経た方であれば「体の使い方を意識しつつ練習したことによって、ただの1打からも音から変わっている」ということに気づけたかと思います。
今回の記事を通して伝えたかった重要なこと、それは「体の使い方を変えるだけでドラムのプレイの何もかもに影響が出る」というものです。そして、それに気づくためには体の効率的な使い方を突き詰めて考え、精度の高い基礎力を身に着けるための練習が必要なのです。
最終的に紹介した「6ストローク」も、元をたどればシングルストロークがあり、アップストローク・ダウンストローク・タップ、ダブルストロークといった基礎から成り立っています。複雑に思えるプレイも、そもそもの基礎がしっかりとしていなくてはできません。そして、そのプレイがどれだけかっこよくなるかのカギもまた基礎にあるのです。
今回の記事を通して少しでもドラマーの悩みの解決、技術の向上に貢献できていれば幸いです。最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。これからも楽しみながら悩んで、考えて、練習して、底が見えないほどに深まっていくドラムの魅力にハマっていきましょう!