工事現場から昔の人骨が出土…どうすべき?実例と共に探る正しい対処法

●工事の際、過去の時代の遺跡や遺物が出土することがあるが、そうした中で人骨が出土することもある。
●人骨は人間の遺体であるため、まずは警察と外部機関により事件性がないか鑑定される。
●鑑定の結果事件性なしとされた場合は、まずその人骨が発見された自治体の福祉課に一任される。教育委員会の関与はそれ以降になる。
●近年大規模な自然災害により死者や行方不明者が多く出た地域で人骨が出土した場合は、その犠牲者である可能性があるため慎重な鑑定が行われる。
●警察は「いつの時代の人骨か」でなく「事件性があるか否か」で関与を続けるかどうかを決めている。

個人や企業などが家や事務所などを建てたり、あるいは自治体などの公共事業の一環としての工事をしたりする際、過去の時代の遺跡や遺物が出土することがあります。こうしたケースへの対応については、いくつかの情報サイトでも言及した記事があるなど、それなりに世間一般でも関心を集めています。
筆者は17歳頃から「葬儀や埋葬・死者供養の歴史と文化」に強い関心を持ち続けています。そのため、過去の時代の人骨が例えば工事の際に偶然出土したらどうなるか、ということは大いに気になる点です。当記事では、2017年にこのようなケースに遭遇したという宮城県亘理町の教育委員会の方にインタビューしたうえで、過去の人骨が出土した場合の対応についてまとめます。

人骨出土!そのときの関係者の対応は

まずは警察への連絡を

そもそも人骨は「人間の遺体」であるわけですから、何らかの形で人骨が発見された場合は、まず警察に連絡する必要があります。警察での初期手続きの後に、外部機関でのこの遺骨の主がいつ頃どんな死因により亡くなったかなど、事件性がないかどうかの鑑定に移ります。
副葬品(あるいは所持品)が見つからなかったり、甕棺(かめかん)や骨壺のような遺体・遺骨を納めるものが見つからなかったりした場合などは特に、現代の事故や事件の被害者の可能性もあるため鑑定は慎重に行われます。加えて、一度墓にきちんと埋葬された遺体(遺骨)が地滑りや崩落、洪水や津波などで墓でない場所に流された可能性も否定できないため、発見時の状況や発見された場所の地層なども鑑定の重要な資料となります。

なお、歴史的に見れば近世に突入する前の墓、特に身分が低いと思われる人物の墓が見つかった場合には、単に死者を棺などに入れず土に埋めただけのタイプが多いということも、補足として述べておきます。とはいえ、実際にはそもそも近世に入る前の時代の庶民や下級武家・下級公家の墓が発見されること自体が少ないですが……。
また、亘理町のように大規模な災害が近年にあり行方不明者も出ている地域の場合も、その行方不明者の遺骨である可能性があるので、鑑定は十分に注意して行われなければなりません。そうして出た鑑定結果をもとに、以後の措置が決められます。

法的な扱いは「行旅死亡人」になる

今回は「事件性のない過去の人骨・特に前近代の人骨」が出土したケースにおける記事ですので、事件性がある場合の対応については割愛させていただきます。

さて、鑑定の結果特に事件性がなく、かつかなり前の時代の人骨であることが判明した場合は、その人骨はまず発見された自治体の福祉課に一任されます。なぜなら、法律的な手続き上身元不明の遺体は、たとえ前近代などといった過去の時代の人骨であっても「行旅死亡人」の扱いになるからです。この「過去の時代の人骨は法律上『行旅死亡人』とされる」というのは、トリビアとしても興味深いことですので知っていて損はないでしょう。

教育委員会の関与:宮城県亘理町の事例

「遺跡」とされていなかった区域から人骨が出土した

2017年に宮城県亘理町で室町期の人骨が出土した事例に話を戻しますと、実はこの人骨の出土地点はいわゆる「遺跡」とはされていません。
亘理町内には古代〜中世頃の史跡が複数現存しています。近世には仙台藩主伊達家の親戚であり重要な家臣でもあった亘理伊達家によって治められていたため、遺跡(法律用語では「埋蔵文化財包蔵地」といいます)と都道府県・政令指定都市・中核市の教育委員会によって認められた地区(以下、遺跡)が複数あるのです。
しかし2017年出土の人骨は、そうした「遺跡」から発見されたのではありません。太陽光発電のためのソーラーパネルを建設する工事が行われた際、この人骨は出土しました。

東日本大震災の被災地であることの影響

また亘理町は、2011年の東日本大震災の被災地でもあり、かつ人骨が発見された場所は津波が到来した地点にも該当します。そのため、出土した時点では行方不明者の遺骨である可能性を否定できませんでした。
当該の遺骨が出土したのは2017年5月、そしてこの人骨が室町期の人骨であると判明したのがその年の12月の終わりです。このタイムラグの理由は、そうした背景によって鑑定がより慎重に行われたことにあります。

2018年5月現在、この人骨は国立科学博物館筑波研究施設に寄託(所有者は亘理町としつつ、管理は国立科学博物館筑波研究施設で行うこと)されています。

比較的新しい時代の人骨が出土した場合の警察の関与

日本国内で偶然出土する(可能性のある)往時の人骨には、太平洋戦争で犠牲になった人々や明治〜戦後すぐの自然災害による犠牲者のものである可能性もあります。「過去の時代」とはいえ比較的新しい時代に死亡した人骨の場合、一体いつの時代の人骨にまで警察が関与するのでしょうか。
結論をいうと、いつの時代の人骨にまで警察が関与するかという明確な規定は存在しません。筆者が仙台中央警察署の方に問い合わせしてお答えいただいた限りでは、警察はあくまで「出土した人骨に事件性があるかないか」を判断するので、それにより関与を続けるかそうでないかは異なるとのことです。

予想の出来事でも冷静な対応を

身近な場所から人骨が出土するというこの状況。予想もしたことがなく、できれば考えたくもないという方のほうが多いことでしょう。しかしながら、人骨出土も含めて予想もしないことが起こるのもまた世の常ですから、そうした状況について実例を挙げて書いた記事も、まったく役に立たないということはないはずです。

【参考文献】
津波被災地で発見の白骨遺体、室町時代の女性だった 放射性炭素年代測定で判明 | 河北新報オンラインニュース

勝田至編『日本葬制史』吉川弘文館、2012

水藤真『中世の葬送・墓制 石塔を造立すること』吉川弘文館、2009

この記事を書いた人

工事現場から昔の人骨が出土…どうすべき?実例と共に探る正しい対処法

せっぱつまりこ

ライター/終活ライフケアプランナー

出身地は埼玉県の県境に近い茨城県。現住所は宮城県仙台市。
ティーンエイジャー期から既に葬儀・埋葬文化とその歴史に強い関心がございます。そのため、日本や海外の歴史や文芸の中の葬儀・埋葬文化についての記事をよく書いております。

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