アロマテラピーの世界を楽しもう!エッセンシャルオイル(精油)の歴史・使いかた・注意点(アロマテラピーライター)

●精油とアロマオイルの違いは、使用用途にある。
●アロマ(芳香)における最古の発見は、ネアンデルタール人の墓にあった花粉の跡。
●錬金術の研究のなかで、精油の蒸留法が確立された。
●フランスの化学者が精油の効果を偶然発見した。
●精油の主な使いかたは「芳香浴」「アロマバス」「吸引・吸入」の3つ。
●精油の多くには、ファンタジックなエピソードがある。
●精油を使う際は、用法用量に注意する。

植物が持つ芳香成分を利用して精神や肉体を健康にする自然療法、アロマテラピー。アロマは「芳香」、テラピーは「療法」を意味する言葉です。悩み多き現代人、特に女性たちに親しまれている療法であり、近年では認知症予防としても期待が高まっています。

そんなアロマテラピーですが、実はとても奥が深いものであることをご存じでしょうか?アロマの種類をはじめ、それぞれの特徴や歴史を知ることで、アロマをよりいっそう楽しめるようになるはずです。
こちらでは、日本アロマ環境協会アロマテラピーアドバイザーの資格を有する私が、知れば知るほどおもしろいアロマテラピーの世界についてご紹介します。

「アロマ」という言葉の本来の意味

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「精油」よりも「アロマ」という言葉のほうが身近になっている昨今。「香りのするもの=アロマ」という解釈が普及しており、少し紛らわしいことになっています。
エッセンシャルオイル(精油)もアロマオイルも香りを楽しむためのものですが、厳密に言えば別の意味を持つ言葉です。大きな違いとしては、香りを楽しむだけなのか、それとも香りの持つ力が人体に作用するか、という点があります。

エッセンシャルオイル(精油)

精油は、植物から抽出された100%天然の素材です。各植物特有の香りを持ち、人体に直接作用を及ぼします。

アロマオイル

人の手によって作り出された香りを発するオイル、合成香料全般を指す言葉です。上記の100%天然素材の精油も、アロマオイルのひとつとして解釈されます。

アロマテラピーの歴史を訪ねて

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古代 ーアロマの始まりー

ネアンデルタール人の墓に残されていた花粉の跡

アロマ(芳香)の歴史のなかで最も古い発見としては、ネアンデルタール人の墓に残されていた花粉の跡があります。この花粉はタチアオイなどを含む数種類の草花のものであり、「死者に花を捧げる」という習慣はこのころに始まったとされています。

「ミイラ」の語源は芳香物質にあり

当時はミイラが盛んに作られており、ミイラ作りの際にはいくつかの芳香物質が使用されていました。主な物質としては、”神の薬”といわれた乳香(フランキンセンス)と没薬(ミルラ)があります。この没薬を意味する「ミルラ」という名称が、「ミイラ」という言葉の語源であるとされています。

キリストの誕生にも関わった乳香と没薬

別のエピソードとしては、イエス・キリストの誕生を祝う際、東方の三賢者が「黄金・乳香・没薬」を捧げたという話が残されています。このころから、植物を様々な用途で使用していたのでしょう。乳香と没薬は、今でもアロマテラピーを楽しむ多くの人々に愛され続けています。

中世・近世 ー精製方法の発展ー

錬金術で生まれた精油の蒸留法

錬金術という技術のなかで精油の蒸留法が完成したことで、このころからアロマテラピーの歴史が大きく動き出します。17世紀末には、世界最古の香水「オールドミラブル(素晴らしい水)」が誕生。そして19世紀の終わりにには、合成香料が使われるようになります。

近現代 ーアロマテラピーの誕生ー

「アロマテラピー」という用語の出現

フランスのとある化学者が、実験中の事故によって火傷を負いました。治療の過程においてその化学者は、ラベンダーの精油を使用することに。このときに精油の治癒効果を実感し、彼は精油の研究に没頭することになります。
そして、研究の成果を『アロマテラピー』という名でまとめたことで、「アロマテラピー」という用語が誕生しました。
日本では、東邦大学名誉教授である鳥居鎮夫博士の研究が有名であり、アロマテラピーの学術研究における先駆者として高い評価を得ています。

精油が持つファンタジーなエピソード

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聖書に出てくるような話、古くからの言い伝え、ファンタジーの世界のような逸話など……。エッセンシャルオイル(精油)には多くのエピソードがあり、それを知ることのもアロマテラピーの楽しみかたのひとつです。お気に入りのエピソードが見つかれば、アロマテラピ―がよりいっそう楽しくなるでしょう。
一例として、こちらではローズマリーに関するエピソードを紹介します。

ローズマリーの基礎知識

清涼感のある香りが特徴的エッセンシャルオイル、ローズマリー。アロマテラピーにおいては、ラベンダー、ティートゥリー等に次いで頻繁に使われるエッセンシャルオイル(精油)のです。よく似た香りとしては、ユーカリが挙げられます。
ローズマリーのスーっとした刺激のある香りは、気持ちを鋭敏にさせてくれるため、勉強部屋や仕事場の香りとして最もおすすめです。

【エピソード】年老いた老婆に恋をした隣国の若き王子

70歳を過ぎたハンガリーの王妃は、手足の痛みと老いに悩まされていました。そんな王妃を想い、僧侶が痛み止めとしてローズマリーを原料として作った「チンキ(ハーブをアルコールで抽出したもの)」を献上。すると王妃の手足の痛みは次第に消え、肌はみるみる若返り、若さを取り戻した王妃は隣国ポーランドの若き王子に求婚されたのでした。
ローズマリーを原料としたチンキは「若返りの水」「ハンガリアンウォーター(ハンガリー王妃の水)」として後世に伝えられ、今では化粧水として多くの女性に愛されています。

エッセンシャルオイル(精油)の楽しみかた

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【1】芳香浴

空気中に拡散させた精油の香り楽しむ方法で、最も広く知られている楽しみかたです。アロマ1滴から5滴が目安で、ディフューザーやアロマランプ、アロマストーンなどと併用することが多いです。
初めて使用する場合や狭い部屋で使用する場合は、少量からはじめることをおすすめします。

【2】アロマバス

精油を浴槽に垂らし、暖かい湯気と一緒に広がる香りを楽しむ方法です。半身浴の場合は1~3滴、全身浴の場合は1~5滴が目安となっています。アロマバスが、1日の疲れをゆっくりといやしてくれるでしょう。

【3】吸入・吸引法

ハンカチやティッシュに精油を1滴垂らし、香りを持ち歩きながら楽しみます。また、花粉症が辛い時期にはマスクに精油を1滴垂らしてもよいでしょう。根本的な原因を取り除くことはできませんが、精油の効果で症状が緩和される場合がありあす。

知っておきたい精油の注意点

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【1】直接皮膚に塗らない

直接皮膚へ塗ることができる精油は、ラベンダーとティートゥリーのみです。ニキビや傷痕に綿棒で塗る程度ですが、肌の弱い人は注意が必要です。

【2】体が弱い人には量を少なめに

近年では、認知症にアロマテラピーが注目されています。ただし、香りに対して敏感に反応する場合があるので、初めのうちは基準の半分以下の量で試すことが大切です。
同様にして、小さな子ども、妊婦、お年寄りの場合にも量に注意して取り扱いましょう。

【3】光毒性のある精油は紫外線に注意

皮膚に精油を塗った状態で強い紫外線が当たると、色素沈着や炎症を起こすことがあります。「光毒性」と呼ばれる特徴であり、ベルガモット、レモン、グレープフルーツといった柑橘系の精油に含まれる成分が原因であるとされています。

香りで人生は豊かになる

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精油は、長い歴史のなかで人類を支えてきた植物の恵みであると言えるでしょう。時代は変われど、その香りは人々をいやし、日々の生活に潤いを与えてくれているのです。

忙しい朝に。疲れが溜まった一日の終わりに――。植物の持つ力を借りて、香りのある素敵な生活をはじめてみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

アロマテラピーの世界を楽しもう!エッセンシャルオイル(精油)の歴史・使いかた・注意点(アロマテラピーライター)

井口 信之輔(いぐち しんのすけ)

音楽家/ライター

千葉県出身。市川西高等学校、洗足学園音楽大学卒業。卒業後、フリーランスのコントラバス奏者として活動をはじめる。
吹奏楽指導者としての一面も併せ持ち、関東圏内にある多くの中学・高校の吹奏楽部で講師を担当。その他、アマチュアオーケストラのトレーナー、音楽教室の講師なども務めている。
現・昭和音楽大学合奏研究員、ブラス・エクシード・トウキョウ所属。

コンサートでMC草案を担当したことをきっかけに、ライター活動をスタート。枠にとらわれない活動をしている。
得意ジャンルは釣り、車、アロマテラピー、音楽。

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