「がんばる」を諦めない!双極性障害でも人生を充実させる7つの方法・4つの戦略

●双極性障害の人は、症状の波を穏やかに抑えるために「がんばってはだめ」と言われる。しかし「がんばる」ことが大好きな私にはとてもつらい言葉だった。
●双極性障害でも、毎日を充実して過ごす方法や大きなチャレンジを実行する方法があるはずだと思い、試行錯誤してその方法を編み出した。
●毎日の小さな「やった!」を増やす7つの方法と「今日もがんばった」と思って寝るために効果的なことを発見。
●大きなチャレンジをするためには「躁状態の私」と「うつ状態の私」で協力体制を組むことが有効である。
●双極性障害でも何ひとつ諦めずに生きることはできるはず!

双極性障害という病気を知っていますか?双極性障害は、疲労感や無力感が強く生きる力さえ失いがちな「うつ状態」と、自信過剰になりやすく限界を超えて活動しがちな「躁状態」を繰り返す精神疾患。
私はこの病気の症状が出始めてから20年、治療を開始してから10年になる双極性障害の患者です。「昨日できたことが今日はできない」「不安定すぎて明日の予定も立てられない」という毎日を過ごしています。症状に振り回される日々のなかで、それでも私は「価値のある人生を送りたい、充実した生活をしたい」と切望しました。

双極性障害はよく「がんばってはだめ」と言われますが、私は「がんばることを諦めたら人生に何の価値があるのだろう」と思いました。どうにかして「がんばる」ことを諦めない人生を取り戻したい。その試行錯誤の成果を記事にまとめました。私が編み出した実行法とコツを、「毎日を充実して過ごす方法」と「大きなチャレンジを実現する方法」の2つに分けてご紹介します。

「がんばらないで」と言われる双極性障害

症状の波を抑えるために

双極性障害は、特に危険でつらいうつ状態を緩和するために、躁状態を抑制する治療が行われます。がんばることが困難になってしまう「うつ状態」。周囲からも当然「がんばってはだめ」と言われますが、うつ状態だけではなく、躁状態のときにがんばりすぎるのも危険です。

「自分は今躁状態だから」といってがんばってしまうと、反動でうつ状態が強くなります。「がんばってはだめ」な理由は、この状態を避けるための予防策です。そのため、どちらの状態であっても、常に「がんばってはだめ」と言われてしまいます。

「がんばらないで」はイヤだ

私は「がんばってはだめ」という言葉を聞くと、逆に死にたくなっていました。もともとがんばることが大好きで、がんばることこそが生きがいの私。「がんばってはだめ」と言われるたびに、絶望的になっていたのです。病気であっても、価値ある人生と充実した毎日を送りたい。時には少し大きなチャレンジもしてみたい。そう切望して行ってきた試行錯誤の成果を書いていきたいと思います。

Photo by pixabay

毎日の小さな「やった!」を増やす7つの方法

一日の終わりに「今日はがんばった!」と思えると、毎日充実した気持ちで過ごせるようになります。そのために編み出したのが以下の7つの方法です。

【1】起きられる時間に起きる

贅沢な話ではありますが、疲れをしっかり取って、起きられる時間に起きるようにします。一日のスタートを元気に切るためには、起きる時間にあまりこだわらないほうが良いようです。

【2】やることはすべてメモしてから行う

これは、その日やることの優先順位を付けるためと、実行後にチェックを入れて「がんばったな」と思うきっかけにするためでもあります。顔を洗う、歯磨きをするなど、小さなことでもメモしてから行うようにしてください。

【3】自分にしかできないことから始める

書き出したメモに優先順位を付けます。体力と気力が限られるこの病気に、無駄遣いできる時間はありません。自分にとって大事なことと、自分にしかできないことから始めるのがポイントです。

【4】自分でなくてもできることは周囲の人に頼む

「自分にしかできないこと」の優先順位を高くすると「自分でなくてもできること」が後回しになり、手が回らないことが増えていきます。私は自己嫌悪に陥る前に、早めに周囲の助けを借りるよう心がけています。依頼したい内容を具体的にすると、周囲も助けやすくなるようです。

Photo by pixabay

【5】「ありがとう」をたくさん言う

人に頼みごとをしたら、お礼を言うのは当たり前のことです。多くの言葉は使う回数と共に力を失っていきますが、「ありがとう」だけは使うごとに力を増していく不思議な言葉だと思います。

【6】後悔をしない

できなかったことがあると「できたかもしれない」と考えて後悔してしまいがちです。積み上げるべきは「できたこと」であり「できなかった後悔」ではありません。

【7】寝る前に「できたこと」を5つ挙げる

その日できたことを5つ挙げて、自分をほめてから寝ます。例えば、朝きちんと起きられた、メモしたことを実行できたなど、どんな小さなことでも構いません。

Photo by pixabay

時々大きなチャレンジをするための4つの戦略

毎日を充実して過ごせるようになると、時には少し大きなことにもチャレンジしてみたくなりました。しかし、ここに問題があるのです。先に述べたように、双極性障害には波があります。躁状態のときに思い描いたチャレンジは、躁状態であるがゆえの自信過剰から生じているかもしれません。

躁状態のまま過大なチャレンジを実行し、活動限界を超えてうつ状態になって大失敗をしてしまう。チャレンジしようと思った気持ちは幻だったと言う。そんなことを繰り返し、周囲を困惑させてしまうのも双極性障害の困難のひとつです。この状態を避けるために、思い描いたチャレンジが本当にやりたいことなのかを見極める必要があります。そこで編み出したのが「うつ状態の自分の活用法」です。

【1】躁状態とうつ状態を「別々の自分」だと考える

2つの異なる状態を行き来する双極性障害は、自分の立ち位置や性格の一貫性が見えなくなって混乱し、疲弊してしまいます。私の場合は、「躁状態の私」と「うつ状態の私」がまったく違う人間だと考えることで楽になりました。

世界にはいろいろな人がいて、互いに問題や衝突があってもどうにかうまくやっていっています。できればお互いの良さを認め合い、助け合えたらうれしいもの。私は、それを自分の中でやってみようと試みました。

その結果、双極性障害になると欠けてしまう「性格の一貫性」を探し求めてつらくなることがなくなりました。冷静に互いの状態を観察できるようになると、得意分野も見えてきます。この行動から、躁状態は実行力、うつ状態は検証力が自分の長所だということがわかりました。

Photo by pixabay

【2】思いついたアイデアはすべてメモ

躁状態のときは、いろいろなアイデアがどんどん浮かぶもの。私は逃したらもったいないと考え、大きなチャレンジも小さな生活の工夫も、片端からすべてメモしています。

【3】夢を叶えるためにうつ状態を活用する

メモしたチャレンジは“そのまま実行しないこと”がルール。なぜなら、躁状態が切れてうつ状態になってしまったときに、対応できなくなってしまうからです。また、一番大事でもあり、困難でもある「躁状態による過大なチャレンジ」かどうかの見極めもできません。

見極める際には、「うつ状態の私」が検証役として活躍します。「うつ状態の私」は極端に冷静です。もう1人の「躁状態の私」を客観的に見られますし、思いついたチャレンジが実行可能であるかどうか、実行後の生活の維持なども含め、冷静に思い浮かべることができます。検証を経てチャレンジを実行するかどうかを決め、同時に達成計画も組んで、その検証も行います。

【4】実行は必ず“うつ状態を経たあとの躁状態”を狙う

【3】を踏まえ、チャレンジは必ず一度うつ状態を潜り抜けてから行うようにします。計画を実行に移すのは、気力と体力にあふれた躁状態のとき。無理をすると、予想よりも早くうつ状態に突入するなどの支障が出ます。

そうならないためにも「一日の作業量を少なめに見積もる」「欲張らない」「予備日を多めに設ける」などの事前対策を取ります。実行を進めたら「休憩を意識して多めにとる」「疲れる前に休む」なども大切です。

Photo by pixabay

双極性障害でも何ひとつ諦めないで過ごしたい

私は双極性障害だからと、何かを諦めて生きていきたくないと思っています。だからこそ、「躁状態の私」と「うつ状態の私」の互いの得意分野を生かし、協力体制を積み上げて、どちらの自分の願いも叶えたいと行動してきました。
そのために大切にしていることが、以下の3つです。

・躁状態の私だけでなく、うつ状態の私にも感謝する
・うまくいかなくてもがんばった自分をきちんとほめる
・薬をしっかり飲む

双極性障害という病気は簡単ではありません。しかし工夫をして、価値ある人生、充実した毎日を築き上げていきたいと考えています。

この記事を書いた人

「がんばる」を諦めない!双極性障害でも人生を充実させる7つの方法・4つの戦略

麓 加誉子(ふもと かよこ)

ライター

東京生まれ茨城育ちの千葉っ子。
フリーライター。市民活動団体の広報もやっています。夫と小中学生の子ども3人、保護猫7匹と暮らしています。子どもたちは揃って不登校。毎日「がはは!」と生活中。興味は広報、PR、社会課題(特にジェンダーや教育問題)、NPOなど幅広く、できることから挑戦中。趣味は服作り、家具作り、家庭菜園、ランニングなど。

このライターに記事の執筆を相談したい

関連記事