「忙しい」以上に面白い!実体験から考察する介護・福祉分野の本当の魅力

●介護施設での勤務、就労移行支援事業所の利用の経験を元に、高齢者福祉介護(入所)と精神・発達障がい者福祉(通所)の概要と実体験をご紹介。
●高齢者介護(入所)はお食事の介助やレクリエーションなど、ご利用者の余生を豊かにすることが目的。
●大変だが、日々のコミュニケーションを通して人生の先輩から学べることも多く、楽しいこともたくさんある。
●精神・発達障がい福祉(通所)は職業訓練などを通して、ご利用者の未来を充実させ、自立できるようにすること目的。やりがいがある。
●ご利用者のメンタルケアは大変だけれど、その分信頼関係は深まる。

「介護・福祉分野ってこんなに楽しいのね!!」
「何だかみんなイキイキしている!!」

これは、私が初めて介護・福祉業界に飛び込んだときに感じたことです。

私は以前、介護施設で3年弱勤務していました。その後は精神保健福祉手帳(俗にいう精神の障がい者手帳のこと)を取得し、就労移行支援事業所という精神・発達障がい者福祉施設に通所し、障がい者枠で再就職。これらの経験のなかで、様々なことを学びました。

この記事では、その経験を活かし高齢者介護(入所型)と精神・発達障がい者向け福祉(通所型)についての概要・実体験をご紹介します。どちらの分野に進もうか悩んでいる人や、「正直関わりたくない……」という人も、ぜひ一度ご覧いただければ幸いです。

高齢者介護と精神・発達障がい者福祉の概要

まずは高齢者介護(入所型)と精神・発達障がい者福祉(通所型)について基本情報を整理します。これを踏まえて次に挙げる実体験を読んでいただければ、さらにイメージが膨らむと思います!

高齢者介護(入所型)

高齢者介護の一番の目的は「ご利用者の余生を満足のいくものにする」ということです。この実現のために、できる限り口からご飯を食べられるようにする、レクリエーションで楽しんでもらう、といった援助の項目が決められていきます。

しかしながら、ここから少し職員同士の内部事情をお話しします。人手不足が深刻なこともあり、業務のタイムスケジュールはかなりタイトです。例えば日中は体操・レクリエーションの時間以外は食事介助、離床介助、排泄介助が大半。夜勤は大勢のご利用者を1人で短くとも8時間以上見る必要があり、なかなかハードです。

そして、どれほど信頼関係を築いても、最後に待っているのは別れです。しかしながら、それまでのあいだには人生の先輩からたくさんのことを学べます。

精神・発達障がい者福祉(通所型)

続いては、精神・発達障がい者福祉です。高齢者介護に比べると20代~60代前後と利用者の年齢層が幅広く、また排泄介助を一切必要としない事業所も存在しています。
最近よく聞かれる通所型サービスの種類は就労移行支援、就労継続支援A型・B型、放課後デイサービスなどで、特に就労(または就学)に向けた訓練を行う、または就労の場そのものを提供することが主な目的です。

この他にも、本記事で実体験を記述する就労移行支援事業所では、イベントを企画したり、精神科や薬局、役所などに営業をかけたりすることもあります。また、週1回30分の面談、利用者の応募書類の添削や面接への同行も行います。

介護に比べれば走り回ることもなく、基本は静かに時間が流れている印象です。

高齢者介護エピソード2選。職員から見た現場の裏側

「美味しそうだね。」ご利用者の笑顔には勝てない!!

夜勤中「ようやく落ち着いた(※大体23時、0時前後に大半のご利用者が寝静まることが多い)」と軽食のチョコレートを口に入れた……ときに、カウンターのそばで退屈していたおじいさんと目が合ってしまいました。
おじいさんはその晩1人だけ眠れず、職員の向かい側に座って時間をつぶしていたんです。

『美味しそうだね』

声は出せない方でしたが、おじいさんはにっこり笑い、人差し指で「シー」とジェスチャーをして見せて……。

『内緒にするから、1つちょうだい?』

プレッシャーというか、可愛さに負けました。食事制限もない方だったので、介護職員はチョコレートを1粒プレゼントして。本当におじいさんはそのことを誰にも話さず、この晩のことは2人だけの秘密になりました。

エンゼルケアは本当の“最期”に関われる貴重な機会

ご利用者のおばあさんが亡くなり、看護師のエンゼルケア(※死後のケア。白装束への着替えなどを行う)を見学したときのこと。

「手を握ってもいいですか?」
「いいわよ、握って差し上げて」

そっと小さな右手を握ったことだけは覚えていますが、その感触がどうだったかはもうわかりません。

ただ、久しぶりに薄化粧されたお顔はとても穏やかできれいでした。

発達・精神障がい者福祉エピソード2選。利用者の目線から

※補足:これは就労移行支援の利用者視点の体験談です。実務に即した訓練の提供と就職活動のサポートをする施設で、就職=卒業というシステムになっています。

面談ではまれに大事件が!?職員が今日も奔走中

先ほど書いたように、就労移行支援事業所には週1回30分の職員と利用者の面談があります。普段は利用者も落ち着いていて、訓練の進捗状況や就職活動の方向性を話し合うのですが、まれに以下のような相談が持ち込まれることもあります。

「死にたいんです、○○市にぴったりのスポットがあるって……。今までありがとうございました」
「いやいや、ちょっと待って。というか、死に場所が○○市って嫌じゃない?せめてもうちょっと派手な所にしましょうよ」

ただ職員も場数を踏んだプロフェッショナルなので、大概のことはメンタルケアをして持ち直させてくれます。

ちなみに今のところ、職員が利用者に暴力を振るわれたケースは聞いたことがありません。

就職=感動の別れ?いえ、まだまだ長い付き合いになります

上記のようなことを時々挟みながらも、利用者は訓練を続け、無事採用になり、入社の前日に就労移行支援事業所を退所することになりました。担当職員と利用者は挨拶を交わし、握手をする人もおり……少なくとも利用者側からは感動的な別れです。
しかし、就労移行支援事業所との関わりはそれで終わりではありませんでした。
就職後も1か月に1度、仕事での困りごとなどを解決するために「定着支援」の面談があったのです。

「……あの別れの挨拶は何だったんでしょうか」
「だから言ったでしょう。”大丈夫。嫌でも会うことになりますから”と」

担当職員は場数を踏んでいるので、またすぐ再会することをわかっていたのでした。正直、利用者にはやや気まずい、という思いもありました。ただ、すぐに落ち着ける程度の信頼関係は利用中に築いていたので、現在も相談窓口の第一選択は就労移行支援事業所になっています。

介護・福祉分野ではみんな輝いている!!

今回ご紹介した4つの実体験を見て、想像よりもずっと面白くてイキイキしてると感じた方も多いのではないでしょうか。介護では悲しい別れもありますが、それもこれから生きる上で自分の糧になります。
介護・福祉分野は”3K”以上に、人間的な成長を得られる機会がたくさんある仕事なのだと伝え、ネガティブイメージを吹き飛ばせたなら嬉しいです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

この記事を書いた人

「忙しい」以上に面白い!実体験から考察する介護・福祉分野の本当の魅力

純。

ライター

埼玉県出身・在住。障がい者雇用にて一般就労しつつ、ライター活動を行っています。

元介護職で精神保健福祉手帳所持者という二重苦を乗り越えてキーパンチャーとして再就職し、今は何とか生活が安定しました。精神・発達障がい、および介護・福祉業界について理解してもらうため、これまでの自身の経験を、少しでも多くの方に知ってもらうことが当面の目標です。

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