ポイントは「全身で聴く」こと。“承認できる場”を生むコーチングの魅力

●コーチングの基本「聴く」「伝える」「質問する」の3つのスキルを3ヶ月かけて実践
●コーチングの基本のスキルは簡単にチャレンジできることばかり
●特に大切なのは「聴く」こと。ひと月実践できると、意外な相手の姿や自分の本音も見えてくる。
●コーチングで「伝えたい」のは、指示ではなく「信じているよ」「認めているよ」という“承認”。
●「答えはその人自身が持っている」ということを信じて根気よくチャレンジする。
●「自分はどうしたい?」「どんな方法ならできる?」と自分に質問するセルフコーチングの体験は、その人の本音を引き出すきっかけになる。
●「聴く」ことに注力しているうちに、「分かってもらえない」という前提が薄れていく。
●積極的に「聴く」だけで、相手との距離が近くなり“承認”しあえる関係になる。
●“承認”が“信頼関係”に発展し、思いがけない心の開放をもたらすこともある。

11年前にコーチングプロ講座を受講した私。現在はそんな私がナビゲーターになり「コーチングCafé」というものを実施しています。自身も参加者と共に体験する形式にし、コーチングの基本である「聴く」「伝える」「質問する」の3つのスキルを、参加者と共有しながら体験してきました。フラットな関係から気づきや学びがたくさん生まれ、互いを“承認”しあえる場となっています。
当記事では、これらの体験から感じたコーチングの魅力について、実践した内容を紹介しながらお伝えします。ぜひ皆さんもチャレンジしてみてください。

「コーチングCafé」の実践で感じたコーチングの魅力

馬車を意味する「Coach」が語源と言われるコーチング。馬車が乗客を目的地に連れていくことと同じように、コーチはクライアントを目標や目的に導く役割をします。コーチングの魅力は「クライアント自身が、自分の中にある答えを自分で言葉にし、自分で気づいていく姿を目の当たりにできる」ということだと私は感じています。この姿に出会えたとき、コーチも大きな喜びを感じられます。

「コーチングCafé」の実施期間は3ヶ月。月1回のカフェでの会合に加えて、SNSでグループを作り、ナビゲーターの私を含め参加者の皆がそれぞれ家庭や職場などで宿題を実践して感じたことや成果をシェアしあいながら進めました。コーチングの基本スキルは簡単にチャレンジできることばかりで、参加者の立場やステージが違っていても、皆の素直な感想が全員にとって参考になることも魅力でした。
「答えを求められて辛い」「関係性が良くならない」など、コーチングはネガティブなイメージも多いようですが、本当の方法や魅力を知って実践すると、想像以上の気づきやコミュニケーションの深まりを実感できます。これは癒しになると言っても良いくらい、素敵なものだと感じました。

1ヶ月目のテーマ:聴く

「聴く」は聞き流すことではなく、積極的に「全身で聴く」ことを意味します。クライアントの話をひたすら「聴く」ことがコーチの仕事。クライアントは自分で考えたことを話し、自分で話した言葉を自分で聞き、自分で気づいていきます。主役はクライアントであることを意識し、コーチが話すのは2割くらいに留めます。

ここでは、「聴く」ときに使える方法を紹介しながらロープレをしました。

【1】うなずく
【2】あいづち
【3】オウム返し

あいづちは、「なるほど、そうかぁ」などと共感したり、「ほんとに?」と驚いてみたり、「それから?」と先をうながしたりします。オウム返しは、相手の話をうまく拾って、「頭にきたね」「難しいんだ」など、クライアントが話してくれた言葉をそのままリピートします。
実はこの「聴く」が本当に難しいのです。相手の言葉を待てずについアドバイスしてしまい「やってしまった……」の繰り返し。皆ここで大苦戦しました。ポイントは「あなたを信じているよ」という気持ちで「聴く」ことです。ひと月のあいだ「聴く」に徹することができると、意外な相手の姿や自分の本音も見えてきました。

2ヶ月目のテーマ:伝える

「伝える」と似た言葉で「指示する」という言葉があります。「指示」には「思い通りになって欲しい」という自己中心的な気持ちが隠れています。コーチングで伝えたいのは「指示」ではなく、「信じているよ」「認めているよ」という“承認”です。

ここでは、「承認していることを伝える」ための方法を紹介しながらロープレをしました

【1】事実を伝える
【2】I(アイ)メッセージで伝える
【3】共感する

「できたんだね」「嬉しかったんだね」とクライアントの成果をそのまま言葉にする“オウム返し”は、事実を伝えるのに役立ちます。「責任感があるね」というような評価は受け入れにくい人も多いですが、自分が感じたことを伝えるIメッセージなら「責任感を感じたよ」と伝えることができ相手も抵抗なく受け止められます。「良かったね」「嬉しいね」などの共感も「認めてもらえた」と感じ、“承認”していることを伝えやすいです。
「承認していることを伝える」のはなかなかハードルが高かったですが、「答えはその人自身が持っている」ということを信じて根気よくチャレンジすると、心のあり方が変化してくることを体験できました。

3ヶ月目のテーマ:質問する

2ヶ月目の宿題で“承認していることを伝えながら聴く”ことと、自分に質問する“セルフコーチング”にチャレンジして3ヶ月目を迎えました。
困難にぶつかったときに、「自分はどうしたい?」「どんな方法ならできる?」と自分に質問するセルフコーチングの体験は、その人の本音を引き出すきっかけになります。自分の本当の気持ちに気づくことができた参加者もいて、別の参加者がそのシェアを聴いて自分の気づきにたどり着いたりもしました。
改めて「質問」のコツを伝え、ペアになった参加者の「なりたい自分になるために何が必要か」について「質問」しながらリストアップ。多くの参加者が課題の設定までたどり着くことができました。

【1】オウム返し
【2】解決志向の質問
【3】時間軸を変える
【4】制限を全てなくす

ナビゲーターとして嬉しかったことは、「3年後はどうなっていたいですか」「何でもできると言われたら何をしたいですか」など、時間軸や制限を変えるワクワクする質問もたくさん出たことです。最後のシェアでは「本音が言えた」「未来がイメージできた」という感想もあり、理想的なセッションができた参加者もいたことは、想像を超えた成果でした。
自分が学んだコーチングをはじめて活かせた「コーチングCafé」。様々な悩みがあった自分にとっても、本当に貴重な時間を過ごすことができました。

今回大変助けになったのは『コーチングがよーくわかる本』(谷口祥子・著/協和システム・発行)という本です。とても分かりやすく、引用などに使わせていただきました。

ジレンマの本性とコミュニケーションの本質

「コミュニケーションがうまくできない」というジレンマの本性、それは「分かってもらえないという気持ちのぶつかりあい」ではないでしょうか。参加者が「聴く」ことに注力しているうちに「分かってもらえない」という前提が薄れていくことを感じ、少しずつ“承認”しあうようになっていく様子を見てそう思いました。
この変化はきっとコミュニケーションの本質だろうと思います。

積極的に「聴く」だけで、相手との距離が近くなり“承認”しあえる関係になる。コーチングにはそのプロセスがちゃんと含まれていて、“承認”が“信頼関係”に発展し、思いがけない心の開放をもたらすこともある――。

コーチングってすごい、と改めて感じました。この素晴らしい体験を、さらに多くの人たちと共有していきたいです。

この記事を書いた人

ポイントは「全身で聴く」こと。“承認できる場”を生むコーチングの魅力

扇かおり

ライター、エディター、シェアスペース運営

仙台市在住。ライター、エディターとして10年、美容と健康の仕事を10年、子育てをしながら2つの仕事を経て、再びライター業に復帰しました。子育て、介護、健康、地域、ダイバシティ―など、社会的な課題をテーマに、様々な活動をしています。http://toto-writing.com/

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