「聞き流し」は大人には不向き?独学の英会話学習で知っておきたい3つのポイント

●語学の習得において、学習能力は年齢によって変わる。大人は「概念学習」優位の脳であるため、文法などの理論的な勉強をしたほうが、効果が出やすい。
●日本語と英語では文法や文章の構造がまったく異なり、その違いを知らないと文が組み立てられない。語順を間違えると、何が言いたいのかを理解してもらうのは難しい。
●自分で文を1から組み立てられるようになるには、大人向けの「やり直し英文法」のテキストがおすすめ。
●「声に出す練習」は、発話力やリスニング力をつけるためにも必須。スクリプトや訳を確認しながら練習しよう。
●上記の学習をしながら、実践的な練習も取り入れていくとよい。英語でのフリートークやディスカッションをするサークルへの参加、ランゲージエクスチェンジなどにもチャレンジを。

独学で英会話を学ぶための教材は、無料のものから高額なものまで膨大な商品が出回っています。その中から「自分に合ったもの」を選ぶのは至難の業。CMや売れ筋ランキングにつられて、教材を選んでいませんか?いざ買ってみても、使いこなせずに挫折してしまったことはありませんか?

英語力がアップするかどうかは「教材の良し悪し」や「教材が自分に合っているか」よりも「教材の使い方」次第です。英語初心者がやりがちなミスや、効果の出にくい学習法には特徴があります。筆者は英会話講師をしていますが、留学せずに独学と英会話学校で英語力をつけました。その自身の経験をもとに、大人の英語初心者が独学で英語を勉強する際に押さえておきたいことや、効果的な学習法を紹介します。

その1:大人の“学習脳”に合った学び方をしよう

世間では「聞き流すだけで話せるようになる」とうたっている語学教材が人気ですが、筆者をはじめ多くの英会話講師は、聞き流すだけの勉強法はあまりおすすめしません。大人の脳の働きからみると、聞き流すだけでは身に付きにくいのです。

というのも、人の学習能力は年齢によって働き方が異なるからです。語学を身に付けていくための学習能力には「条件学習」と「概念学習」の2パターンがあります。「条件学習」は、日常生活の中で周りの人が使っている言葉を聞き、真似したりして身に付けていく方法。「概念学習」は、文法などのルールや理論を理解することで身に付けていく方法です。2つの学習能力のどちらが優位に働くかは年齢によって変わり、子どもの頃は「条件学習」が優位ですが、10歳頃から「概念学習」優位に逆転していきます。

英語研修Navi「英語学習教材の不都合な真実」より引用

「条件学習」優位の脳である幼稚園くらいの子どもは、日常生活の中で日本語を覚えていくように、英語をたくさん聞けば聞くほど自然に英会話力がついていきます。一方「概念学習」優位になった中学生頃から英語の授業で文法を学んでいくのは、理にかなった学習法ではあるのです。

英会話を学んでいる多くの人が、できるだけ楽に勉強したいと思っていることでしょう。しかし大人がただ聞き流して英語漬けの日々を送っていても、英会話力は伸びにくいのです。結局のところ、文法の勉強もやったほうが、理解が早く効率的です。

その2:日本語と英語の文法の違いや文章構造の違いを知っておく

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我流の勉強をしている初心者がいきなり英語で話そうとしても、文章を正しく組み立てることはできません。筆者が主宰しているフリートーク英会話のサークルでも、英会話初心者の方は「文の始めは主語、その次に動詞」という英語の大前提を無視して、日本語で話すのと同じような語順で話そうとしてしまいます。多少文法が違っていても、言いたいことは何となく伝わります。しかし、語順が違っていては、何が言いたいのか理解してもらうのは難しいでしょう。

日本語と英語の構造はまったく違います。日本語は主語、述語、目的語などの語順が入れ替わっても文章として成り立ちますが、英語は原則的に必ず主語から始まります。これを理解していない独学者が意外と多いのです。

「文法重視」だった昔の学校英語に対するアレルギーか、文法を軽視する、または文法の勉強を避けて会話力をつけようと考えている日本人は多いように思います。しかし、先述したように、大人は文法を理解していたほうが効率的に英語力を伸ばせるのです。

今の中学1年で習う文法を駆使すれば、シンプルな形ながら言いたいことを伝えられる文は組み立てられます。日常会話なら、中学3年間で習う文法で微妙なニュアンスの違いも表現できます。最近は、中学英文法を学び直すための大人向けテキストもたくさん出ているので、まずは1冊やってみてください。

その3:どんな教材、勉強法も「声に出して練習」が必須

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今は書店で売っているテキストも、ほとんどがCD付き。スマホの英語学習アプリやインターネットの学習サイトでも、英文や単語の音声が聞けるようになっています。これらを聞きながら、必ず自分でも声を出して同じように言ってみましょう。音声教材を真似て言ってみることで、英語らしい発音や強弱の付け方、滑らかさが身に付くと同時に、リスニング力も鍛えられます。

日本語と英語は文法構造も違いますが、発音の仕方もまったく異なります。[f][v][r][l][th]などの日本語にない音は、実際に発話して口の動かし方のトレーニングをしていくことでしか、滑らかに発音できるようにはなりません。“身体で覚える”のが大事なのです。

声に出して行う練習には「リピート」や「シャドウイング」などがあります。どちらも、事前にスクリプトや意味、文法的な説明などを確認しておくか、テキストを見ながら練習するところから始めましょう。これは「概念学習」優位の“大人の学習脳”的におすすめの方法ということもありますが、リスニング力をつけるためにも有効です。

俗に言う「英語耳」を養うには1,000時間のリスニング学習が必要で、この1,000時間は何を言っているか分かる英語を聞かないと効果は上がりにくいとも言われます。何を言っているのか分からない英語は、耳にとっては単なる“雑音”。そのため、最初は聞き取れずに、リピートやシャドウイングもスピードについていくのが難しいのです。

しかし、意味や英文をテキストで理解しておいて、何度も繰り返し聞いて声にも出していれば、だんだん耳も口も慣れ、スピードや英語独特の話し方についていけるようになります。筆者も最初は、独学で最低限の日常会話ができるレベルの英語力をつけました。いろいろな教材を使いましたが、声に出して発音や強弱の付け方を真似することは欠かしませんでした。

今でも語彙力や発話力を鍛えるために、音声教材を聞きながら声を出してリピートやシャドウイングをします。おかげで、外国人と英語で話すときに「発音がきれいで分かりやすい」と言ってもらえることが多いです。大人になってからも、声に出す練習をすることで、きれいな発音を身に付けることはできるのです。

独学だけでなく、実践的なアウトプットもしていこう

テキストの音読や音声教材のリピート、シャドウイングの練習で発話に慣れてきたら、実際に英語で話す機会を持ってみましょう。学んだ語彙や表現を使って自分で言いたいことをどう英語で組み立てるか、度胸をつけることも含め、やってみないことには本当の会話に活かすのは難しいものです。

今は英語でフリートークやディスカッションなどをするサークルや、イベントが各地にあります。オンライン上で活動しているグループは、地方在住者にも便利です。日本人同士だけでなく、ランゲージエクスチェンジとして、外国人とお互いの言葉を教え合いながら会話力をつけるのもおすすめです。インターネットで検索すれば、自分に合った形のアウトプットの場が見つかると思うので、積極的に利用してみましょう。
※グループや相手を選ぶのは自己責任でお願いします

英会話の上達に楽な道はないかもしれません。耳と口を鍛える。それはピアノの練習やスポーツの練習と同じようなもので、コツコツと身体で覚えていくだけです。しかし、あなたにとって身に付きやすい、効果が出やすい学習法はあります。効果を感じればやりがいも出てきて、勉強を続けやすくなります。効果的な学習法で、楽しく英語を身に付けてください。

この記事を書いた人

「聞き流し」は大人には不向き?独学の英会話学習で知っておきたい3つのポイント

佐藤 文香

ライター

愛知県出身 愛知県在住。
新聞記者、タウン誌編集者を経てフリーになり、雑誌を中心に活動していました。しばらく開店休業状態でしたが、最近復活。英会話講師、自己啓発系セミナー講師もしているので、教育、自己啓発、スピリチュアルなどが得意です。

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