私は小学校の教員として、17年間学校教育に携わってきました。結婚を機に退職し、現在は「新しい時代の自由な働き方」「自分らしい暮らしと家族」などをテーマに、フリーライターとして活動しています。
1年生から6年生すべての学年の担任として、その発達段階に応じた家庭学習指導をしてきました。毎日提出されるノートを1冊1冊見てコメントを書いてきた中で感じた、続けられる子・続けられない子の特徴や、継続させるために担任が意識して取り組んできたことについてまとめました。
当記事では、お家の方の悩みを解決できるよう、実践してきたことを元に、家庭学習の習慣を身に付けるための秘訣をご紹介します。ぜひチャレンジしてみてください!
続けられる子と続けられない子は何が違うのか
やる気?根気?学力?
親が関心を持ち、子どものノートを熱心に見て励ましていた家庭は、学習の取り組みがほぼ100%継続します。つまり「子どもの取り組みへの関心度」が大きく関わってくるのです。子どもは、自分が取り組んだノートを見てほしいという欲求を持っています。担任が毎日コメントを書くなどして励ましているケースもありますが、ノートが見られていない、関心が向いていないと感じた子は、家庭学習にやり甲斐を感じることができません。
家庭学習の目的が「叱られたくないから」になっていませんか?
続けられない子は、宿題として課されたから、叱られたくないから嫌々取り組んでいることが多く、目的意識が弱いことが特徴です。家庭学習に取り組んでも取り組まなくても変わらない、取り組んでも褒められないと思っています。こういった場合は目標がはっきりしていないため、粘り強く継続させることがとても難しくなります。
つまり、続けられる子に共通した特徴は、家庭学習に取り組んで褒められ、嬉しい体験をしたことがある子です。取り組んだノートを見てくれた人の反応が、その子のやる気・根気・エネルギーになります。
また、続けられる子は、すでに家庭学習習慣が身に付いており、“家庭学習をやる・やらない”で迷うことはありません。取り組むことが「当たり前」になっています。
それでは、具体的にどうすれば継続できるのか、楽しく無理なく続けられる秘訣について説明していきましょう!
楽しく家庭学習を続けさせる3つの秘訣
【秘訣1】「時間」「場所」「内容」を決めて、習慣付けを意識する
取り組む時間や場所、内容が決まっていれば、下校後すぐにでも取り掛かれます。しかし、決まっていない子は「今日は何にしようかな」と内容を考えることに時間を費やしてしまい、ついにはゲームや遊びの誘いといった誘惑に襲われてしまいます。そうなると、取り組む時間を逃し、やらずじまいという結果に……。
例えば「習い事に行く前に漢字の書き取りを1ページ練習する」ことがすでに決まっている子は、ノートを広げてすぐに取り掛かれます。さらに「昨日は漢字を学習したから今日は計算」など、ある程度内容も決めておくと効果的。習い事がある日は教科書の音読をするなど、短時間でも何かやることを決めて「やらなくてもいい日」を作らないことも大切なポイントです。
私の学級では、家庭学習を食事に例えて、時間がある日は「フルコース」、時間がない日は「お茶漬けコース」と軽重を付けてよいとすることで、無理なく楽しみながら取り組める子が多くいました。
【秘訣2】取り組みを褒めて、子どものやる気・モチベーションを上げる
続けられる子の特徴に挙げたように、取り組むメリットを用意します。言葉以外にも、スタンプやシールは子どもが喜びます。「頑張ったらおやつを食べようね」などの一言も効果的です。テストで百点を取ったらお金を渡す、動物園に行く約束をするという家庭もあります。
しかし「お金は……」という家庭もありますよね。ご褒美の内容は、各家庭、子どもの実態に合わせたものにしましょう。とにかく、ポイントは子どものモチベーションが上がるようなメリットを用意してあげることです。お家では、大げさなほどに頑張りを褒めてあげ、「また明日もノートを見せてね」と関心を見せたり、頑張りを承認したりしてあげましょう。
【秘訣3】始めはハードルを下げて、簡単な内容を楽しく取り組めるようにする
家庭学習習慣は、楽しいと感じられるまでが勝負です。始めは隣に座って、親子で楽しく取り組んでみましょう。「そうそう」「いいね」「できたね」と声をかけられると、子どもはどんどん進められます。やり方がわからない状態だと不安だったり、進まなかったりするものです。
初めのうちは親が問題を出し、子どもが答えを出すというクイズやドリル感覚がおすすめです。もし上手にできなくても、褒めてあげましょう。子どもがやろうと決めたことを否定すると、やる気は下がります。アドバイスは、続けられるようになってからでも遅くはありません。
発達段階別ワンポイントアドバイス
(低学年)お手本ノートを提示して具体的なイメージを持たせましょう
漢字練習の方法や計算の書き方など、始めはお手本どおりに取り組むことをおすすめします。具体的なイメージを持つことで、難易度は下がります。取り組めた達成感を味わうこともできるため、大変効果的です。
(中学年)興味関心が広がる時期だからこそ、自由に選びながら楽しく取り組ませましょう
低学年の頃からの継続で、少し飽きてくる頃です。中学年になると、理科や社会などの教科も増えます。そのような中学年におすすめなのは、新鮮な気持ちで取り組める理科や社会です。その日の授業で習ったノートを書き写すだけでも、楽しく取り組めます。
また、興味関心がはっきりしてくる頃ですので、ことわざや昆虫が好きな子はそれらに関する“調べ学習”や、日記を書くのもおすすめです。
(高学年)復習・予習を取り入れて授業と関連付けることで、家庭学習の効果を実感させましょう
習慣が身に付いてきた子は、成績アップを目指した内容に移行させていきます。もうすぐ漢字のテストがあるから漢字練習、明日算数のテストがあるから復習するなど、授業の進度に合わせたものが最適です。
この時期に、中学年のような好きなものだけを行う取り組みから抜けられない子は、テストの成績が思うように伸びません。家庭学習を授業内容に沿わせることが、成績アップのポイントです。家庭学習の効果を実感することにつながります。
「学びの姿勢」を身に付ける家庭学習習慣へ
最後に、習慣付けで大切にしたいのは、子どもの意志を尊重し、自己決定を促すことです。取り組む時間や内容をアドバイスしつつも、子ども自身に決めさせることが重要になります。“親に勝手に決められた――”は、子どものやる気を阻害します。自分で決めたことに楽しい気持ちで取り組めるよう、手厚くサポートしてあげましょう。
継続は自信につながります。学力はもとより「学びの姿勢」を身に付けさせることが大切です。家庭学習習慣の定着は、学年が上がるほど難しくなりますので、小学校に入学したらすぐに始めるのがベストです。今からでも遅くはありません。親子でコミュニケーションを取りながら、習慣が身に付くまで根気強く取り組みましょう!